――『いいとも』から一度『スマスマ』に移ったんですよね。
2年くらい『いいとも』のADをやってたら、当時ディレクターだった亀高(美智子)さんが「あの子、『スマスマ』に入れたい」って言ってくれたみたいで、そこから松永と一緒です。『スマスマ』でディレクターになりました。
――毎日の生放送と、収録の総合バラエティという、また違ったシステムの番組へ。
『いいとも』のおかげでタレントさんと接するということはだいぶ練習させてもらったんですけど、『スマスマ』はもう来る人が豪華すぎて、まずそこに麻痺(まひ)するんですよ。視聴率も獲りまくって、そこにも麻痺する(笑)
でも、『スマスマ』のスタッフを経験した人は皆さんおっしゃってますが、もう二度とできないすごい番組だったというのは、まさにそうだと思います。自己プロデュース能力の高い5人が、毎週水・木にスタジオにやってきて、こっちはあのSMAPで台本を書いたり、構成を考えたり、画を撮ったり…当時はそれが幸せなことだというのを忘れてやってましたね。本当に良い経験で、フジテレビのAD生活は辞めたいと思ったことがないんです。眠たいのはしょっちゅうでしたけど(笑)
――それだけ夢中になってやっていたという感じなんですね。『いいとも』との作り方の一番の違いは、どんなところでしょうか?
『いいとも』は、太田さんが(妻の)太田光代さんのことを言われて恥ずかしがったらそれをすぐ来週のコーナーにしたり、DAIGOさんの最新ワードの解答が面白すぎてそれを歌にしてCDを出したり、そういう直近の流れを大事にして爆発させるということをやるんですけど、『スマスマ』の場合は夏にライブがあったらそこまでを加味した企画を作るとか、中居(正広)さんが『27時間テレビ』をやるときはそれに向けてやっていくとか、長いスパンで5人をどうするかというのを考えるんです。だから、それぞれにディレクターが付いて、なるべく寄り添って話ができるような環境になっていて、ファンの人たちにどれだけ5人の魅力や違う面を見せるかというのを、一番考えていましたね。
僕は木村(拓哉)さんに付いていたんですけど、木村さんは自身がクリエイターになってどんどん意見を言ってくれるんです。内容もそうですけど、画の取り方を含めて。「ホストマンブルース」というコントでは、(放送作家の)鈴木おさむさんとかと考えて提案するんですけど、「ここは俺より(稲垣)吾郎を立てた方がもっと面白いと思う」とか、全体を考えた意見をおっしゃってくれるんです。やはり『スマスマ』はSMAPを見るためにお客さんが来てるから、その人たちを裏切りたくないという気持ちが強かったんだと思います。
それから、女優さんとコントをやるとなると、前室からウェルカムな感じで迎えたり、僕以外にもカメラマンさんとかカメアシ(カメラマンアシスタント)さんとかと話してコミュニケーションを取ったりして、座長の意識があるんです。TMC(砧スタジオ)に本当に狭い美術さんのたまり場があったんですけど、ゲストがいないときは木村さんがいつもそこでしゃべってたんですよ。
――もうスタッフの一員という感じだったんですね。
中居さんも、すごいことが決まったときに豪華なお弁当をみんなに用意してくれたり、記念のグッズを自腹で作ってくれたり、“俺が引っ張っていくんだ”という感覚がすごくあって。そういう“団長力”が5人それぞれにあるので、みんなが5人のことを好きになって、「この人のために一生懸命考えよう」ってなるんですよね。
■企画が演者に合っているかをまず考える
――その経験が、今でも生かされているのはどんなことでしょうか?
これは僕の番組の作り方のベースになってるんですけど、例えば木村さんがやりづらいとか、ファンにニーズがないことはやめようと判断していたので、企画がこの人に合っているのかというのをまず考える癖が付きましたね。この企画は面白くて数字も獲りそうだけど、AさんよりもBさんのほうがフィットするんじゃないかと。もちろん営業さんがスポンサーを取ってきてくれるので視聴率が良いのが一番ですし、今の演者さんは無理なお願いをしても「分かりました」とやってくれる人が多いと思うんですけど、その人に信頼してもらうために、その人のファンが喜んでくれるためにというのを考えないといけないと、自分では思うんです。
だから、「自分はこう思います」「こういうことが好きなんです」というのをタレントさんに話して、分かってもらってから作るようにしています。そうして、座長と“心中”するような作り方がすごく好きなんです。今一緒に『脱力タイムズ』をやらせていただいている有田(哲平)さんとは、ひとまず有田さんが60歳になるまで一緒に作っていって、今回はどうやっていこうかというのを一番考えるディレクターでありたい。フジテレビって、目立つディレクターがいっぱいいるので、自分が目立って違いを出すためにも、そこを突き詰めようと思いましたね。