――ん~…解答者席が2段になっていますよね…。
そうですそうです。なぜ2段にしていると思いますか?
――うーん……あっ! 舞台に立っているような感覚にするためですか!?
正解です! 段をつけることによって、お客さんがいて、舞台があって、自分が板に立って演じているのと、同じ心境になるんです。そしてお客さんとの距離も近くしています。この距離は、『笑っていいとも!』をやっていたアルタと同じような近さなんですよ。
――なるほど!
そういう舞台を作っておくと、演者のみなさんが生き生きして、その場で予定してなかったことが起きるんです。最近、予定調和な番組が多いじゃないですか。そこをいかに"予定不調和"に崩すかというのが内村さんはうまいし、ハマったなという感じです。内村さんも言ってました。「紀伊国屋ホールのような感じでした。俺、紀伊国屋ホール出たことないけど」って(笑)
――(笑) 最近内村さんの番組がまた増えてきましたけど、何か物足りないなと感じていたのは、これだったんですね。
昔やってらっしゃった『内村プロデュース』(テレビ朝日)とかも、結構動きのあるやり取りをしてたじゃないですか。『スカッとジャパン』で1つ"静"の内村さんをやっているので、今度は"動"の内村さんのものをやってみたいという狙いもあったんです。
――内村さんがすごく生き生きしている印象です。
そうですよね。だから僕もスタジオのフロアにいるんです。こうなるともう戦いですよね。内村さんの目を見ながら、こちらは次にどう動いていくか。
――内村さんが解答を見ていく順番は、どのように選んでいるんですか?
あれはフロアの僕から提案と、内村さんの意思との「あうんの呼吸」です。
――ある日の放送では、ほとんどの問題で、だいたい不正解の人が指名される最初の順番で、佐藤栞里さんのところに行ってました(笑)
流れができていたので、これは1番・佐藤栞里しかないな、と。こういう流れのきっかけを内村さんが作ってくれるので、それを見てフロアもこうしようかなと考えたりして、フロアとMCの掛け合いですよね。これって実はフジテレビらしい作り方だと思っているんです。『ヨルタモリ』(※3)もその場で「さぁこう来ましたよ。どうする?」というような掛け合いでやってたんです。あの番組は、台本がありながらもほとんど意味無いんで(笑)
(※3)『ヨルタモリ』
『笑っていいとも!』終了後初めてのタモリのフジテレビレギュラー番組。2014年10月~2015年9月に放送され、宮沢りえ演じるママが仕切る東京・湯島のバー「WHITE RAINBOW」に、タモリが架空の人物にふんして客として来店し、ゲストや常連客とトークを繰り広げる。途中、タモリが出演するショートコントも流れる。
――そういえば、ますだおかだの岡田圭右さんが、スタッフから「解答でくだらんボケはやめてください」と注意されたと放送で言ってましたが、これはほかの出演者のみなさんにも言っているのですか?
芸人さんには言ってますね。
――その狙いは?
これも"予定不調和"を狙っています。芸人であっても、真剣にやさしい気持ちになって考えた結果、それが外れている方が面白いのであって、そこにボケようボケようという予定調和はいらないんですよ、とお伝えしているんです。
――天然系の解答が多い平愛梨さんや佐藤栞里さん、蛭子能収さんには、何か言っているんですか?
その方々には何も言ってないです(笑) どうぞご自由にという感じですね(笑)
――この"予定不調和"というのは、やはり生放送の『笑っていいとも!』で学んだイズムなのでしょうか?
そうですね。本当にあの番組は"タモリ学校"でしたね。毎日生放送で、自分が提示したものがウケた、ウケないと、すぐ反応が来て、じゃあ来週どうしよう、あのコーナーを変えるか? でも企画を考えなければいけない…という日々でしたから。
――コーナーもすぐに終わってしまうものがありましたよね。
1週や2週で終わるものなんて、いくらでもありましたからね。そういうとき、タモさんは常に「とりあえずやってみよう。ダメならやめればいい」って言うんです。"予定不調和"という言葉では直接言われないですけど、やっぱりそこですよね。『ヨルタモリ』もそうでしたし、その場のセッションなんです。
――ジャズですね。
そうです。『やさしいね』もジャズなんです。だからフロアにいて、演者さんたちとやり取りをするんです。自分でも流れは100%想定しておきますけど、その想定を越えた150%が出ると、一番面白いんですよね。