――『勇者ああああ』で最初に手応えがあった企画はなんですか?
最初の収録で、「にわかゲーマー一斉摘発 芸能界ゲーム風紀委員」って企画をやったんです。お笑いが起きる瞬間ってみんなが思っている共通認識を刺激した瞬間だと僕は思うんですよ。どこかでゲーム好きのタレントさんを嫌いだって思ってたゲーマーはたくさんいたはずなんです。そのみんなが漠然と思っていた悪意を刺激した瞬間にドカンとウケたんで、これはイケると思いました。
同じ回にやった「コマンド危機一髪」も分かりやすくて。ライターの火を点けるのを失敗した人が負け、みたいなよく合コンとかでやるゲームを、「波動拳」でやってるだけなんですけど、みんなの共通認識の中にスーファミのコントローラーだと「波動拳」が出にくいよなっていうのがある。それと連帯責任で罰を受けるバラエティでよくあるパッケージが合体したときに、なんか新しいものがつくれたなって。
自分にはゼロイチで新しいものをつくる才能はないと思っているので、今まで見た面白いバラエティのパッケージを、どうやったらゲームの世界と組み合わせられるかなっていうのをずっと考えていますね。
――これまでの『勇者ああああ』の中で会心の企画だと思うのはなんですか?
「名作ゲーム人狼」(※)ですかね。僕は、何か面白くないものとか、嫌いなものとかに対して、何がつまらないんだろうっていうことを考えるのが好きなんです。それで、バラエティ番組に“背負ってる人”が出てくると意味が分からないなあって。
(※)…名作ゲームが大好きな人が集まって魅力を語り合うが、メンバーの中には、そのゲームを全く知らない人が。モニタリングして、にわかゲーマー(=人狼)を推理して探し出す企画。
――“背負ってる人”ですか?
たとえば、タレントさんが出てきて「今日は美味しいスイーツを僕が調べてきたんで紹介します」って言うじゃないですか。でも、大抵の場合、この人が本当に調べているわけじゃなくてリサーチしてるのはスタッフで。要は、番組側の意思をタレントに背負ってもらっていて、調べてもない人が今渡された原稿を読んでるだけ。この誰の熱もない状態が僕にはウソに思えるんですよ。っていうか「そのウソ必要ある?」っていう。しかも、視聴者も言わされてることに何となく気づいてる。
だからもし、テレビの中の人が言わされてるってことを認めたら面白いだろうなっていうのがどこかにあって、ひな壇バラエティでみんなが好きなゲームの話をしてるのに、そのうち1人だけが、全然やったこともないのに“背負わされている”。で、その人は誰かを当てるっていうクイズ企画が生まれたんです。オーディションやっても、本当にゲーム好きな人って2~3人しかいないんですよ。ほとんどの人は事務所からいわれて付け焼き刃で勉強してきた人たち(笑)。オーディションやってて分かるから、これはクイズになるなって。
■テレビにおけるゲームの認識を若返らせる
――本当にゲームが好きな人がそのゲームをプレゼンする「ゲーマーの異常な愛情」からはヤマグチクエストさんやノブオさん(ペンギンズ)のような番組発のスターも生まれましたね。
ヤマグチさんとかノブオさんって、選んでくるゲームのラインがちょうどいいんですよ。『moon』とか『LIVE A LIVE』とか、「あ、そこをついてくるんだ!」って。ゲーム好きな人なら絶対知ってるんですけど、ゲームを知らない人からすると「なんですか、それは」って驚く。正直、プレゼンに関しては、めちゃくちゃ打ち合わせして一緒につくり上げていくし、編集もしてうまく見せることはできる。でも、ゲーム好きはこの辺を紹介してほしいんだっていうライン取りは本人の愛がないとできない。そこが巧いのがその2人でしたね。結果、ノブオさんはアルピーさんより仕事が増えてるっていう(笑)
ゲーム番組というとファミコンの『スーパーマリオブラザーズ』をやってみたり、「『魔界村』難しいですよね」みたいなレトロゲームの話をずっとしてて、いつまでその話してるの?と思ってたんですよ。テロップをドット文字にしてみたり。僕は物心ついた頃には家にスーファミもプレイステーションもあった世代だから、8ビットの文字にピンとこないんですよ。だからオープニングもプレステ風にしてるんです。テレビにおけるゲームの認識を10年は若返らせたいなって。それとRPGのようなテレビ番組では扱いづらいものをこのコーナーで取り上げられるようになったのもうちの強みだと思います。
――テレ東さんでは、2018年から「eスポーツ」を題材にした『有吉ぃぃeeeee!』も始まりました。
最初は正直言うと「潰される!」と思いましたね(笑)。向こうはスターが街ブラしてるじゃないですか。見てられるんですよ。でも、逆にやりやすくなった。もっとむちゃくちゃなことをやっても「差別化をはかった」って言いはれるようになった(笑)。さらなる飛び道具で勝負するしかないですから。アルピーさんで街ブラしてもねえ(笑)
――『勇者ああああ』はどんな人に見てもらいたいですか?
意外と家族で見ても面白いのがあると思うんですよね(笑)。もちろんダメなのもありますが。別にゴールデンを目指してはないですけど、深夜まで起きて疲れているサラリーマンとか奥さまとかが夜中にゲラゲラ笑って、これは子供にも見せてもいいなって思ったのだけ、お子さんにも見せてほしいなって。深夜のお笑い好きだけのためにつくってるわけではないので。
先日、公開収録のイベントをやったら、寒い中、パニックになるくらい集まってくれたんですよ。子供たちも盛り上がってくれた。番組発信のものでこれだけ人を集めることができたのはうれしかったですね。今後は有料イベントとかアプリをつくったりとか、お金を生むようなことも考えたい。視聴率をこれ以上上げるのは難しいと思うので、番組を続けるためにも、番組ファンの方たちにお金を落としたいと思わせるものをつくっていきたいです。
――番組で紹介した野田クリスタルさんがつくったゲームがアプリにもなりましたね。
商品化された瞬間に、うちが手つけとけばよかったって(笑)。芸人さんもいっぱいアイデアを持っているし、本業じゃない人がやる面白さもあると思うんですよ。うちから発信してどんどん外で活躍してくれれば、僕らが見つけたって言いやすいんで(笑)