「Let It Be」の理由
――取材する駅によって、人の特徴などはあるんですか?
ありますあります、それが本当にあるんですよ! 茨城の土浦は、本当について行ける確率が高くて、かつちょっと波乱の人生送ってる方が多かったりするんです。あとは蒲田。高級住宅地や工場地帯など、様々な地域を背後に控えながら、安いアパートもいっぱいある地域だから、お年よりも若い人もいろんな人がいっぱいいるんですよ。それと上野は雑然としてて、何でも受け入れる街という感じもして、とても寛容なんです。
――土浦が即答で出てくるのは面白いですね! 街頭インタビューでおなじみの渋谷や六本木はいかがですか?
やってて気づいたんですけど、深夜に声をかけてもこれから遊ぶって人が多いんですよね。だから、終点の駅も面白いです。有楽町線の和光市とか中央線の高尾とか、ベロンベロンになって起きれず、気づいたらなぜか終着駅でぼう然、という方が結構いますから。ディレクターによっても、自分の好きなスポットや得意な街があるみたいですよ。
――演出面で心がけている部分はなんですか?
ナレーションを入れない、音楽も最後の「Let It Be」以外は、基本かけないということですね。ナレーションはどうしても感情を誘導できちゃうので、そこは入れないようにして、その人の魅力を出そうとしてます。一般の方だからタレントと違って自分で自分の魅力をプレゼンすることに長けてないじゃないですか。でも、せっかく家の中を見せてもらってるんで、その人の人生観や頑張っていることから、魅力を描き出そうということは気をつけています。
――「Let It Be」の選曲の狙いは?
僕、右脳が全くダメで、左脳人間なんです。だから音楽は歌詞から聞く方なんですよ。「Let It Be」というのは「あるがままに」という意味なんですが、それがこの番組にぴったりだなと思ったんです。家が汚くても頑張ってる何かがあったり、ギャンブルが好きで離婚しちゃったけどこの人なりにこう考えて生きてるてるんだっていうそのままを肯定してあげたい。つらいことがいっぱいあっても一番良い解決方法は、そのままに頑張ることなんだよという歌詞がいいなと思ったんです。だから、部屋をあるがままにして片してほしくないし、すっぴんもそういうことなんですよ。
――昨今、視聴者側が"リアル"を求めているということもあるのでしょうか。
僕は2005年入社なんですが、それは入社してちょっとしてから本当に感じるようになりましたね。ドキュメンタリー番組も台本があって、ナレーションを構成作家が書いてるということも視聴者の皆さんが知るようになったり、この10年でリテラシーがすごく上がってきたと思うんですよね。昔は「悲しかったです」ってナレーションを適当に当てて処理できてたかもしれないところを、今は本当のことを描くしかない。だったら、リアリティを全面的に出そうかなと思ったのは、この番組を作るときに考えたことですね。作り手の裏側を知っている方にも満足してもらいたいという思いはありました。
『水曜日のダウンタウン』のパロディにテレ東ザワつく
――MCに、ビビる大木さんとおぎやはぎの矢作兼さんを起用した狙いはなんでしょうか?
この番組は、タレントでもない、本当に毎日会社に勤めている人のプライベートをさらけ出すという側面があるじゃないですか。それって結構ナイーブな話で、制作サイドも気をつけるんですけど、コメントする側にも細心の注意が払われるなと思って、その人の言葉にできない思いとか、裏に抱えている思いを推測して優しく理解してくれるような雰囲気のある人がいいなと考えて人選しました。大木さんは、笑いを作りつつ、人を包み込むような雰囲気がありますよね。矢作さんはサラリーマン経験があって、加藤浩次さんとかいろんな人から好かれるように、人間との付き合い方が上手。柔らかい雰囲気があって、かついろんなことに興味を持ってくれる人という意味で、お2人を選びました。
――あんまりメガネ2人をMCにキャスティングしないですよね(笑)
そうですね。メガネがあるとやっぱり優しく見えるんですかね。あんまり意識してなかったです(笑)
――2時間枠の時に、裏番組の『水曜日のダウンタウン』(TBS)にパロディされたことがありましたよね。あれはビックリしましたか?
事前に正式に話はなかったんですけど、作家さん経由でうっすら噂は聞いてはいて、まあ別にいいかなあ~と思っていたんですけど、放送後ちょっと会社はザワッとしました(笑)。こっちがCM入ったときにザッピングしたら、同じような映像が流れてましたからね。(演出の)藤井(健太郎)さんは、本当にいたずら大好きなんでしょうね(笑)