「働き方改革」は「会議改革」から――。こう主張するのはシスコだ。4月13日に同社は、ビデオ会議を中心としたビジネスコミュニケーションのクラウドサービス「Cisco Spark」に関するKDDIとの協業を発表した。協業では、KDDIが7月より「Cisco Spark」と「Cisco Spark Board」を取り扱うほか、Cisco Sparkのコーリング機能(クラウドPBX)との連携で、固定電話番号(0AB~J番号)による音声通話サービスも、時期は未定ながら提供する。(関連記事 : 石川温が携帯3キャリアに聞く「IoTは飛躍するか」 - 「グローバル」と「セキュリティ」が鍵を握るKDDIの戦略)

KDDI 取締役執行役員 常務の東海林 崇氏(左)と、シスコシステムズ 代表執行役員社長 鈴木みゆき氏(右)

会議改革はディスプレイから?

シスコシステムズ 執行役員 コラボレーションアーキテクチャ事業担当 アーウィン・マッティー氏

シスコシステムズ 執行役員 コラボレーションアーキテクチャ事業担当のアーウィン・マッティー氏は、モバイル(スマートフォン)とクラウド(スマホアプリなど)の時代に差し掛かり、「自宅のITの方が遥かに優れている状況になっている」と指摘。企業向け製品がUXをあまり重視していない点や、企業によって最新環境の導入にばらつきがあることから、コンシューマーITとのギャップが生まれていると話した。

シスコは、こうした環境の変化に対応するため、3年半前に「自宅ITが、簡単に、早く、優れたモノを使えるのであれば、企業にもその価値を提供できないか」と新たなプロダクトを企画。それが、およそ2年前に提供を開始した「Cisco Spark」となる。この製品では、「Meeting」と「Messaging」「Calling」の3つの機能にフォーカスし、企業が課題の一つとして挙げる「会議」を効率的に、より良いクリエイティブなものにするために提供を開始した。

ただ、ビデオ会議、ワイヤレスプレゼンテーション、デジタルホワイトボード機能を備えるディスプレイ、この日お披露目された「Cisco Spark Board」こそがシスコにとって重要な存在であるようだ。

マッティー氏はBoardの紹介前に、「新しい価値観生み出し、既存のサービスをもっと良くできる。今日、ようやく目に見える形で発表できることがワクワクしてる」と語っており、「会議改革」に繋がる最大のコンポーネントであることがわかる。

実際にMeetingとMessaging、Callingだけで言えば、資料共有サービスと「Skype for Business」や「Google Hangout」「LINE WORKS」を組み合わせれば問題ないし、そもそもMicrosoftやGoogleはOneDriveやGoogle Driveを提供しており、そこで資料共有やコラボレーションを実現すれば良い。

また、この2社に至っては、Cisco Spark Boardと競合するであろう「Surface Hub」「Jamboard(日本未提供)」もリリースしており、そう簡単に「Cisco Spark」+「Board」がベストとは言えない。

セキュリティは「一筆」から

そこで、長年エンタープライズのネットワークを支え、会議システムを提供してきたシスコとしては、「エンタープライズ品質」による差異化を最大のメリットとして挙げる。コンシューマー製品での知見はあれど、エンタープライズで求められる品質は、また別だというのがシスコの考えだ。

例えば、協業パートナーのKDDIが社内環境で調査したCallingのIP電話の音声品質試験では、他社が不安定でばらつきが見られる一方でCisco Sparkは安定した品質を保っていた。またBoardでは、仮想ホワイトボードに2名同時に書き込めるほか、遠隔地にいる共有メンバーがWebを介して同じ仮想ボード上に書き込める。

Cisco Spark Boardのデモ。中央上部に写るメンバーが仮想ボード上に書き込んでおり、登壇者はペンで書き込んでいないことがわかる