新年あけましておめでとうございます。
ITSearch+では「2017年新春インタビュー」と題し、「IoT」を軸に携帯3キャリアの法人部門トップインタビューを行いました。IoTの本質とは何か、携帯3キャリアの戦略からIoTをベースに、次の打つべき手は何かを見出していただければと思います。今回はKDDIです。
KDDIと言えば、「IoT」という言葉がブームになる遙か昔から「M2M」の実績を積んできた通信会社だ。
古くは1998年に64Kbpsの通信モデム「P’sBoat」を開発。トラックの位置情報管理や自動販売機の在庫管理などに活用されていた。その後、子供やお年寄りの見守りに活用できる「ココセコム」(SECOM)、カーナビにインターネット経由で情報配信を行う「G-BOOK」(トヨタ自動車)に通信回線を提供するなど、M2M領域を得意としていた。
M2Mは前述のように、特定の企業と二人三脚でモジュールや規格を開発していくのに対し、これから訪れるとされるIoT分野において、KDDIは幅広いプレイヤーがさまざまな規模で参入する受け皿を作ろうとしている。特にIoTへの期待値が高まる昨今、KDDIは得意とする「グローバル」と「セキュリティ」で攻める。
トヨタと組んで組み上げた「グローバル通信プラットフォーム」
2016年6月に、KDDIはトヨタ自動車と共同で「グローバル通信プラットフォーム」を構築していくと発表した。
トヨタ自動車は、2020年までに国内で生産する乗用車すべてに「eSIM」を搭載し「コネクテッドカーにしていく」と宣言している。そのeSIMは、KDDIのグローバル通信プラットフォームで管理され、トヨタ自動車が日本国内で製造した乗用車がどの国に輸出されても、eSIMには現地の通信会社のプロファイルが書き込まれるようになる。
トヨタ自動車はこれにより、日本国内であっても世界で走行しているクルマのデータを収集し、ビッグデータとして解析。メンテナンスなどに活用していくという。これまで大規模な通信プラットフォームを構築できたのも、KDDIが国際的な通信会社だからだといえよう。
KDDI 取締役執行役員常務の東海林 崇氏は「自動車会社が各国のキャリアと個別交渉するには、料金、端末などがバラバラで負担が大きい。そこで、KDDIがグローバルな通信プラットフォームを提供することで、そうした負担を軽減することができる。これまで国際通信を60年以上手がけ、世界600社以上の通信会社とのリレーションがあるからこそ実現できたと言える」と胸を張る。
海外においては、グローバルで接続サービスを提供しているキャリアもあるように見えるが、東海林氏は「あれは料金請求のシステムに過ぎない。KDDIは各国のキャリアと提携し、eSIMのプロファイルを書き換えていく、グローバルプラットフォーム運用が強み。これまで固定の世界でやってきたことを、ようやくもモバイルの世界に持ち込むことができた」と話す。
海外のキャリアがやろうとしても、どこかのキャリアと組まなければならないし、運用体制が整っていない。その点、KDDIはグローバルのネットワークオペレーションセンターを持つなど「すでにベースが整っている」というわけだ。グローバル通信プラットフォームは将来的に、トヨタ自動車だけでなく他の自動車会社や、工作機械メーカーなどへの納入もめざしていくという。
IoTに欠かせない「セキュリティ」を担保できる「SIM」
また、IoTを手がけていく上で、欠かすことのできないポイントがセキュリティ対策だ。何千万台という膨大なIoT機器をサイバー攻撃者に狙われると、単なる誤動作だけでなく、人名の危機に繋がる恐れもある。ファイアウォールやソフトウェアで管理するとしても、個々のデバイスをひとつずつ見極めるのは困難。そこでKDDIの強みと東海林氏が強調したのが、SIMカードをベースにしたセキュリティシステムだ。
「SIMカードはICチップであるため高いセキュリティ耐性がある上、アプリの実行が可能で遠隔操作が可能だ。それに加えてKDDI総合研究所による、SIMカードをベースとした世界初のセキュリティ技術がある。もしデバイスが盗まれたら、暗号鍵を削除すればいい。デバイス側にセキュリティを入れられれば、エンドポイントとして堅牢性が高まる。デバイスがどこに行っても遠隔操作でき、SIMカードと暗号鍵を組み合わせることで、高いセキュリティを実現できる」(東海林氏)
IoTの世界にはアンライセンスバンドを使った通信規格の普及も見込まれているが、キャリアとしてはこうしたセキュリティ技術の優位性を活かし、SIMカードをベースにした通信規格を売り込んでいきたいようだ。