ソフトバンクとソフトバンクロボティクスは2月8日、9日の二日間、東京・虎ノ門ヒルズで「Pepper World 2017」を開催している。ソフトバンクは毎年夏に法人顧客向けイベント「SoftBank World」を開催しているが、Pepper Worldは人型ロボット「Pepper」の法人向けサービス「Pepper for Biz」などの関連展示、講演を行うイベントとなる。

展示会場ではロボットの競演も

(左から)ロンドンブーツ1号2号 田村 淳さん、益若つばささん、ソフトバンクロボティクスグループ 代表取締役社長 富澤 文秀氏

展示会では、2月7日に発表した一般販売モデル向けの5種類のアプリが体験できるほか、川崎重工業の産業用途向け双腕スカラロボット「duAro」とPepperの連携ソリューション、ソフトバンクが現状で「Pepperの価値を最大限に活かせる活用軸」として位置付ける「サービス」「セールス」「PR」の3つのテーマに沿ったビジネスアプリなどが体験できる。(関連記事 : ゼンショーグループのはま寿司がPepper導入、本格的な案内業務活用では初)

なお、5種類のアプリについてはNAOqi OS上のもので、昨年発表されたAndroidアプリではないという。Androidアプリについては「2017年中には何らかの案内ができる」(ソフトバンクロボティクスグループ 代表取締役社長 富澤 文秀氏)としていた。

Pepper Viewアプリはスマホなどで外出先からPepperを操作できる。頭部に搭載されたカメラからPepperの視界を見ることができ、主に自宅内の確認や子供などの見守り、遠隔地に住む親類とのコミュニケーションなどを想定している。左の画像では、奥にいる男性が手前のPepperを操作して写真を撮影する筆者の方向を向いたり、テキスト・音声によるコミュニケーションを行っていた

アスラテックが開発したPepper for Biz向けビジネスアプリ「ロボットリモートコンシェルジュ」。羽田空港でPepperを活用した訪日外国人向け構内案内ロボットの実証実験に利用されたアプリで、こちらもカメラ映像を利用する。Pepperは日本語と英語、中国語の発声に対応しており、Pepper一台とコールセンターに在中する多言語対応スタッフを組み合わせることで人手不足とおもてなし双方のニーズに対応する。なお同社はVRと組み合わせて前述のPepper Viewのように遠隔操作が可能な「VRコン」も用意しており、こうしたPepper活用ニーズが今後拡大しそうだ

一般販売モデル向けに提供される「Pepper Maker」。これまでもGUIベースでプログラミング可能な「コレグラフ」を提供しているが、こちらはダイアログベースでより簡単にわかりやすくPepperの動作や発声テキストを規定できる。PC向けにアプリが提供される予定で、ディスプレイ上で”仮想Pepper”が動き、どう動かせるかを確認できる

ラウンドワンではアプリダウンロード誘導施策としてPepperを活用。Pepperに電話番号を入力することでSMSを送信し、リンクからアプリをダウンロードさせる。通常は従業員がクーポンコードをアプリで提供している旨の周知を行うが、ダイバーシティ東京で行った実験では1日(平日)に33件のSMS送信、24件のサイトアクセスがあったという。電話番号の送信という点で普通は心理的障壁があるものの、Pepperという存在がその障壁を下げたとソフトバンクロボティクスの富澤氏は分析していた

Pepperと連携する川崎重工業の産業用途向け双腕スカラロボット「duAro」。かつては仕切りなどを用意しなければ産業用ロボットを動かすことはできなかったが、規制緩和により人の保護措置を備えた機材などであれば誰もがいる場所であっても動かせるようになった。そのため、例えば工場のラインで人とロボットの混在もできるため、人員が不足してしまった場所に補充要員としてロボットを活用できる。ただduAroの動作はPCによるプログラミング設定が必要で、フレキシブルな対応が難しい面もあったそうだ。そこで、Pepperを”インタフェース”として活用して、プログラミング知識のない人員でも簡単にduAroを操作できるようにした。今後はお台場に構えた川崎重工業のショールームでデモンストレーションを行う予定だ

シンギュラリティはソフトバンクから

ソフトバンクらは先週から立て続けにPepperに関するアップデートを発表。前述の一般販売モデル向けアプリや川崎重工業のロボット連携ソリューションのほか、はま寿司における導入事例も公開した。

7日に行われた一般販売モデル向けアプリの発表会では、富澤氏がPepper Makerについて「肝いりのアプリだ」と説明。プロジェクトリーダーとしてロンドンブーツ1号2号の田村淳さんを起用して認知拡大を目指すなど鼻息荒い様子が伺える。

一方で8日の基調講演には、ソフトバンク 専務取締役の榛葉 淳氏や導入企業の担当役員などが登壇し、Pepperの未来と、現時点で最新の活用事例について語った。

ソフトバンク 専務取締役 榛葉 淳氏

導入企業は2000社に

榛葉氏は代表取締役社長の孫 正義氏がイベントなどで常々口にする「シンギュラリティ」について触れ、その構成要素が「AI」と「ロボット」「IoT」になると指摘。そしていずれの要素についてもソフトバンクとして関与する技術があると語った上で、「Pepperが大きな役割を担う」と話す。

「AIは自然言語処理に強みを持つIBMのWatsonを日本における展開の窓口として活用しているほか、IoTは皆さんも御存知のように”本丸”であるARMを買収した。AIやIoT、そしてロボットは、皆さんが薄々『関係性がある』と思う一方で独立した技術として捉えていると思う。でも私たちとしては、密接に、そして表裏一体で動くものだと考えており、シンギュラリティを達成する存在だと信じている。

人類の叡智を結集しても宇宙の謎、例えばダークマターなどについてはまだまだわかっていない。これは私たちの生活の中にも言えることで、最近はビッグデータという言葉があるが、企業活動や個人の生活で、自分たちが気づかない、気づけない”ダークデータ”が隠れている。

このダークデータをトレジャーデータ(貴重な、宝のデータ)に変えられるかどうかが転換点となるはず。つまりPepperはこれからも進化して、IoTなどから得られるデータと共に大きな役割を担うし、水先案内人として期待してもらえれば」(榛葉氏)

その後、活用事例の紹介として、はま寿司 取締役 営業本部 本部長の田邉 公己氏、ソフトバンク仙台六丁の目店 ショップディレクターの濱田 茜子さん、B-Rサーティワンアイスクリーム 営業統括本部営業推進本部長 執行役員の佐藤 健氏、沖縄徳洲会湘南厚木病院 経営企画室室長 兼 医療サポートセンター センター長の山下 尚子さん、ヤマダ電機 代表取締役副会長 兼 代表執行役員 CEOの一宮 忠男氏が登壇した。