先ほど紹介した内閣府の22年度の調査では、困ったときに頼れる友人や近所の人の有無に関する質問もしています。スウェーデンは「友人あり」が34.9%、「近所の人あり」が26.5%となっており、ドイツはそれぞれ40.7%と38.2%でした。一方、日本はそれぞれ17.2%と18.5%にとどまっています。

「遠くの親戚より近くの他人」という言葉が表すように、いざというときに身近にいる人が頼りになるケースは往々にしてあります。老後まで住み続けるのであれば、「住む場所選びは故郷づくり」ととらえ、若いときから地域に根差すように取り組んでいきましょう。

介護費用や医療費の節度ある利用も気をつけたい点です。救急車をタクシー代わりに利用したり、病院を老人サロン代わりにしたりしていれば、税金はいくらあっても足りません。

また、20代や30代でも要介護にならないとは限りません。医療保険で介護特約があるケースもあります。若年要介護に備え、預貯金で準備するのもよいと思います。40歳になれば、それまで準備した預貯金はそのまま今後の生活費に使えます。

制度をきちんと知って行動にうつそう

高齢化のニーズを受けて、他の業界からも多くの企業が介護の世界に進出するようになりました。介護制度の成立により、ケアマネージャーなどの必要度も一気に高まり、私の経験では当初、あまり質が高くない印象でした。どの分野でもユーザーがその業界や制度を育てるものです。制度を正確に知らないと、どこが問題なのか、どう改善すればよいかは判断できません。

機会がある度に述べてきたのは、不条理や不安を感じるのであれば、「制度を正確に知る」「誰かの言葉ではなく、元の情報を取りにいくことが大切」だということです。10回のシリーズではありましたが、制度を知っていただくだけでなく、皆様が元の情報に向けて行動を起こす一助になり、今できる最善を踏み出す機会になれば幸いです。

■ 筆者プロフィール: 佐藤章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。