今回、Oさんは家電量販店でマッサージチェアをお試しで長時間利用している女性に注意したところ、逆に恫喝されて店を後にしています。このようなとき、女性の横暴とも思える行為に法的な問題はあるのでしょうか?
店では「マッサージチェアのお試し利用は10分まで」と決められているにもかかわらず、女性は30分以上利用しています。また女性はOさんに対して周囲に響き渡るような大声で怒鳴り付けました。法的には、この2つの行為が問題になる可能性があります。以下で、それぞれについて解説していきます。
マッサージチェアに座り続けた行為について
店は女性に損害賠償を請求できる可能性がある
今回の話に登場する家電量販店では、マッサージチェアのお試し利用が認められています。そこで、店を訪れた客がマッサージチェアを利用すること自体に問題はありません。ただし「利用は1人10分まで」と決められているにもかかわらず、件の女性は30分以上使い続けています。
マッサージチェアは、家電量販店の所有物であり、売り物でもあります。店の許可がない限り、客が勝手に利用することは認められません。もしも勝手に利用したら、店は客に利用の停止を求めることができますし、店側に損害が発生したら損害賠償も可能です。
本件では、「10分までなら利用してもよい」という許可を出しているので、10分までなら問題は発生しませんが、10分を超えて利用すると、客は家電量販店の商品を無断利用しているのと同じ状態となります。
店側が気づいたら長時間利用している客に対し、利用の停止を求めることが可能です。また異常な長時間利用や、通常とは異なる利用方法によってマッサージチェアが故障するなどの損害が発生したら、店が女性客に損害賠償請求できます。
Oさんにできることは?
女性がマッサージチェアに座り続けた行為について、Oさん自身は女性に何らかの請求をすることができるのでしょうか?
マッサージチェアは、Oさんの所有物ではありません。店は訪れた客に10分までなら自由なマッサージチェアの利用を認めていますが、Oさんが特に店と契約をして「●時からチェアの利用をしてもかまわない」という権利を与えてもらっているわけでもありません。また店側から「10分以上利用している客がいたら、退去をさせるように」と依頼されているわけでもありません。
このようなことからすると、Oさん自身が法的な権利を持って女性に退去を求めるのは難しいと言えるでしょう。女性がマッサージチェアを利用したことによってOさんには損害が発生しないので、損害賠償請求もできません。
ただし上記のように、店には女性に対する退去請求権が認められるので、Oさんとしては店側に女性の行為を報告し、注意してもらったり退去を促したりすることが可能です。今回Oさんは、自分で女性に注意していますが、店の人に一報を入れて、女性に注意や退去を求めるようにしてもらった方が、よりよい対応だったと考えられます。