――平成という30年にわたって、ここまで番組が続いてきた理由は、どのように捉えていますか?
石原:でも、本当にお気楽通りで、こんなに続くと思わなかったですよ(笑)。もちろん支持してくれた視聴者の皆さまのおかげなんですけど、もう1つ理由があるとすれば、『世にも奇妙な物語』は番組なのですが、同時に単なる“枠”なのかもしれないということです。つまり企画は、なんでもアリ、なんです。近未来のSF的なものもあれば、ホラーもあれば、『ズンドコベロンチョ』(91年、草刈正雄主演ほか)のような人間の心の奥に潜んだ見栄を描くような作品も許容してくれる。スタート当時は4人の編成担当がいて、僕は『オーソン・ウェルズ劇場』や『ヒッチコック劇場』のような作品が好きだったんですけど、それぞれに別々の好きなジャンルがあったので、ものすごいバリエーションになったんですよね。それによって、飽きられずにここまで来たのかなという気もしています。
小椋:あと面白いのは、この30年はコンピューターが急速に発達した時代だから、スタート時に『奇妙』で描いたSFだったものが、今現実にあったり、むしろ現実のほうが当時の物語を追い越してしまったりしてるんですよ。例えば、現実と架空の世界の区別がつかなくなってしまった話なんかは、VRが登場しましたし、僕らの想像していたことを、テクノロジーが追いつき、追い抜いてしまったのかもしれないですね。
――今描いている近未来の作品が、また30年後に現実になっているかもしれないですよね。この30年で、テレビを取り巻く環境の変化をどう見ていますか?
石原:そこは、まず教授から!
小椋:まぁ民放に勤めてらっしゃる方の前で言うことではないかもしれませんが、クライアントからの広告収入で番組を作って地上波で放送していくというビジネスモデルがいつまで続くのかというのは、HuluやNetflixといったサービスが出てきた5年くらい前から思っているんです。まだまだ地上波を見ている人たちの数は圧倒的に多いので、今すぐそれを止めるという話じゃないと思うんですけど、小さい頃から僕はテレビっ子で、“テレビ博士”っていうあだ名をつけられたくらいの人間なので、その大好きなテレビが今後どうなっていくかというのは見てみたいですね。
石原:僕が勤めているテレビ局というのは、よくよく考えると変なもので、放送のプラットフォームという機能と、番組の制作会社という機能の両方を持ってるんですよ。そうすると、コンテンツを見るウインドウとしてのテレビが相対的に減っていく可能性はありますが、その代わりインターネットなど他のウインドウが増えていってるので、制作会社フジテレビとしては何も変わらない、むしろ発表できる場所は増えているんです。映像を見たいっていう人が急に減るということはないですからね。一方で、広告収入による無料放送という天才的なモデルは、僕は今も盤石だと思うんですが、それが永久に続くかというのは分からないところなので、この両側面から今後に向けた作業をしているところです。
バイプレイヤーが主役になる
――制作会社としての機能を考えたときに、先ほどお話があった『世にも奇妙な物語』の新人発掘的な要素は、今後より重要な役割を果たすことになるかもしれないですね。ところで、最新作『’18秋の特別編』では、星さんが佐野史郎さんと勝地涼さんW主演の『幽霊社員』で11年ぶりに演出を担当されます。
小椋:星さんと佐野史郎さんと言えば『超・能・力!』(90年)ですよね。あれも傑作で、『奇妙』のお手本のような作品です。今回も楽しみですね。
――佐野さんは今回が10作目で、「『世にも奇妙な物語』には特別な思い入れがあります」とコメントされていました。
石原:10本ですか! ひょっとして、最多出演じゃないですか?
――最多は、大杉漣さん(15作品)だそうです。
石原:あぁ! 大杉漣さんと言えば『夜汽車の男』(02年)が好きだなぁ!
小椋:佐野史郎さんとか、大杉漣さんとか、バイプレイヤーの方たちが主役になるのが、『奇妙』の懐の広いところでもありますよね。あまり主役をやられない方たちで作るのを面白がるという雰囲気もあったと思います。
『SUITS/スーツ』月9の新しいスタイルに
――最後に、せっかくフジの石原さんと元共テレの小椋さんがいらっしゃるので、『絶対零度』『SUITS/スーツ』と、月9×共テレドラマの好調が続いていることについても伺いたいのですが…
石原:月9と言えば、昔はトレンディドラマのイメージがあったと思うんですけど、少しずつ変質してきていて、僕が担当したもので言えば『HERO』とか、その後も『ガリレオ』など、90年代だったらあり得ないと言われた作品が生まれ、そして、今また新しいスタイルになろうとしているんです。『SUITS/スーツ』は、でき上がった脚本を読んだときに、弁護士モノというより、それに加えて事務所の人間関係やキャラクターを描いたバランスの取れた作品になっていて、「あぁ、この手はありそうで意外となかったな」と思ったのと同時に「フジテレビっぽいな」とも感じたんです。おかげさまでなんとか良いスタートが切れているので、今後のうちの新しいスタイルの1つとして、こういった作品が定着していけばいいなと思いますね。
小椋:フジテレビさんの絶頂期の頃は、半分は共テレが作っていて、競争相手として切磋琢磨して、良い作品がたくさん生み出された時代もあったんですよね。だから、もう一度そういう時代が来て、共テレももっと元気になってほしいなと思っています。
『世にも奇妙な物語 ’18秋の特別編』見どころ
今回は不思議なことに、「存在」ということを考えるラインナップになりました。ネットの集合知という目前にはいない存在、クリスマスに欠かせないサンタクロースという存在、幽霊社員という会社組織のみで呼称される存在、明日の自分や死んでしまった先輩という存在しない存在…全部脳みそを通じて知覚することは果たして実在するのか? そんな存在に登場人物たちがどう振り回されるのか? バリエーション豊かでご家族そろって楽しむことができるエピソードになっていますので、10日の土曜よる9時からはぜひ『世にも奇妙な物語‘18秋の特別編』をご覧いただけたら幸いです。(編成企画・フジテレビ狩野雄太氏)