業界によって異なるが、「企業の中核を担う屋台骨的な存在として働く年代」と言えば、40代を思い浮かべる人が多いのではないだろうか。この年代ともなれば、管理職などの役職にも登用されるようになり、それに伴い年収も増えてくる。その一方で、育児や介護のダブルケアに直面したり、子どもの教育費がかさんだりと、何かと支出が増えがちな時期でもある。
そこで本特集では、ファイナンシャルプランナーの佐藤章子氏に、40代を迎えたら最低限知っておきたいテーマの基本を解説してもらう。今回は「相続トラブル」だ。
相続は誰しも経験することなので、40代であれば相続の基礎は知っておきましょう。特に「法定相続人」や「相続税の計算方法」などの正確な知識は、トラブルを避ける意味でも大切です。親の資産がある場合は、残された子どもたちが相続税の支払いで窮地に陥らないように早めの準備が必要です。
また財産はなくても、実は相続は介護問題と大いに関係します。介護の負担は、未経験者の想像を超えたものがあります。外からはなかなかその大変さはわからないため、負担していない人にとってはどこかひと事に映ります。
その温度差をそのままにしておくと、「相続」が即「争続」になりかねません。介護を担った家族がその寄与分を相続分として要求するかもしれないからです。相続の発生はまだ先かもしれませんが、介護はいつ現実になってもおかしくありません。それだけに、相続についてきちんと理解しておきましょう。
法定相続人とは
相続を考えるうえで不可欠な言葉の一つに「法定相続人」があります。文字通り、民法で定められた相続人を意味し、主に配偶者と子どもなどを指します。法定相続人の考え方は、下図の通りです。
配偶者と子どもがいる場合は、配偶者と子どもが法定相続人で、相続分は配偶者が1/2で、残りの1/2を子どもの人数で等分します。配偶者がいて子どもがいない場合の法定相続人は、配偶者と被相続人の父母です。父母もない場合は配偶者と兄弟姉妹となっています。
遺言状で法定相続分と異なる事項が記載されていても、法定相続人は遺留分を相続する権利があります。ただし、兄弟姉妹には遺留分はありません。