第2の注意点は欧米の実情です。欧米各国も今、相次いで制限の解除あるいは緩和に動いており、これも日本の解除ムードを促進する一因となっています。 しかしよくよく注意すべきなのは、欧米と日本の大きな違いです。この間の欧米のほとんどの国でとられた措置は外出禁止や店舗閉鎖などの都市封鎖(いわゆるロックダウン)で日本よりはるかに厳しい内容、かつ罰金や逮捕など強制力を伴うものでした。

最も早かったイタリアの場合、3月10日に外出禁止令が出され、外出が認められるのは「外出を延期できないことが証明可能な業務上または健康上の理由、その他の緊急事項」のみとされ、外出する場合はその理由を記した書類の携帯が義務づけられました。食料品店・薬局以外の全店舗はすべて閉鎖となりました。個人の行動は軍隊と警察が取り締まり、違反すれば最大3,000ユーロ(約35万円)の罰金が科せられます。イタリアの人たちはこんな厳しい状況の下でほぼ2カ月も我慢して頑張って暮らしてきているのです。

イタリアでは5月に入って製造業の一部が再開され、この18日には小売業も再開が可能となります。しかしそれでも依然として現在の日本より厳しい規制下にあることには変わりないのです。飲食店は6月にならないと再開されません。

フランス、スペイン、ドイツ、英国なども相次いで緩和に動き出しました。しかし、もともと欧米各国の感染者数や死者数は日本よりはるかに多いため、規制内容も日本より厳しくなっていたのであり、ここへきての緩和も段階的で、それでもまだ日本より厳しいレベルにあるわけです。したがって「欧米に続いて日本も」「バスに乗り遅れるな」というのは、適切な判断尺度とは言えないでしょう。

むしろ、たとえば米国ではまだ感染者数が十分に減少傾向に至っていないにもかかわらず規制解除に動いている州が少なくありません。ドナルド・トランプ大統領も経済再開に前のめりになっている印象で、今後の感染再拡大を心配する声があります。

この間の経済的な打撃の大きさを考えれば、経済再開を急ぎたくなる気持ちはわかりますが、拙速は避けるべきです。感染爆発の第2波が起きてしまえば、かえって経済的損失も拡大してしまいます。