Q11.マイナ保険証の顔認証でエラーが出る

マイナ保険証は、カードリーダーに置いたマイナンバーカードのICチップから顔データを読み出し、カメラに映った顔と照合して顔認証を行います。4桁暗証番号を覚えていない人でも認証でき、暗証番号を不要にした顔認証のみのマイナンバーカードも利用できます。

エラーの原因はいくつかありますが、まずマイナンバーカードのカバーを付けっぱなしでないかを確認しましょう。普段の持ち歩きにカバーはなくても支障はありません。

  • マイナンバーカードの置き方

    マイナンバーカードの置き方は少し注意が必要です。また置き忘れにも注意しましょう

顔認証をする場合にはカメラに顔が映る必要はありますが、カメラをのぞき込むように近づく必要はありません。比較的広い画角で顔認証するので、カードをリーダーに置くのに自然な位置であればたいていは大丈夫なはずです(高さだけは調整しましょう)。

医療機関側の工夫で、さらに安定して使えるようになります。一般的に顔認証は、カメラに入り込む外光の状況で精度が左右されます。直射日光が当たらない位置に設置するようにすると精度が向上します。他にもPCやカードリーダーは定期的に再起動が推奨されています。

  • カードリーダーのチェックリスト

    カードリーダーのチェックリスト

Q12.マイナ保険証が使えないと医療費が10割負担になるの?

機械やネットワークの不具合でマイナ保険証が使えなかった場合でも、保険診療が受けられるようにいくつもの対策が用意されています。

マイナンバーカードで本人確認をしつつ、資格情報のお知らせ・マイナポータルの保険資格の画面・マイナポータルからダウンロードしたPDFの保険資格情報・医療機関にある被保険者資格申立書、いずれかの方法で保険診療を受けることができます。

  • 医療機関・薬局でのオンライン資格確認のやり方

    医療機関・薬局でのオンライン資格確認のやり方。基本的には10割請求にならないように配慮が求められています

マイナンバーカードの目視による本人確認できるため、紙やPDFでも被保険者番号などが確認できればレセプト請求が可能です。それらがダメでも資格申立書を記入すれば対応できます。再診であれば過去のデータを使うこともできます。それ以外は、「従来の保険証を忘れた」などといった場合と同じ扱いです。

Q13.「資格(無効)」や「資格情報なし」と表示されたら10割負担になるの?

転職や退職などで保険者が変わった場合、本人から加入の届出を受けた保険者は、5日以内にオンライン資格確認に情報を登録することになっています。それが遅れた場合または登録以前に受診した場合、「資格(無効)」などと表示される場合があります。

  • オンライン資格確認ができない場合の対応

    マイナ保険証で資格情報なしなどの表示が出た場合、登録遅れかどうかは分かりませんので、一定の確認作業をしたあとは自己負担だけで受診できることが求められています。最終的に資格が見つけられなくても医療機関の負担にはなりません

登録が済んでいないなどで資格が確認できない場合は、被保険者資格申立書を記入してもらいます。これによって現役世代であれば3割負担という通常の負担で診療を受けられます。

「むやみに10割負担をさせないように」というのが国の考えでしょう。医療機関などもそれに合わせた対処が必要ですし、患者側もあらかじめマイナポータルで資格情報を確認できるので、心配な場合は事前にチェックしてもいいでしょう。

Q14.災害や停電時に医療費が10割負担になるの?

日本の保険制度は、本人の保険資格に対して自己負担分を除いて保険者が医療費を負担するというもので、本人を特定することが基本です。そのため、健康保険証が必要ですし、それを確実にするための手段がマイナ保険証です。

では、災害や停電で病院のカードリーダーが停止した場合に、マイナ保険証が使えないと本人が特定できないので医療費を全額支払う10割負担になるのでしょうか。

もちろん、そうはなりません。災害時の場合、被災者は窓口で氏名/生年月日/連絡先/加入している保険者を告げることで保険診療を受けられます(災害救助法の適用など条件はありますが、ここでは割愛します)。これは当然、マイナ保険証でも健康保険証(資格確認書)でも同様です。

そもそも災害時に「健康保険証が焼失した人は保険証なしでも3割負担で診療するが、マイナ保険証が使えなければ10割負担」という医療機関はないでしょうし、通常の手続きをすればいいだけです。

停電に関しては、そもそも医療機関は電気がなければ多くの治療ができませんし、入院患者がいれば命にも関わります(自家発電などがあったとしても)。そうした時に、一般の外来には対応できない場合もあるでしょう。その病院だけが停電ならば別の医療機関の利用を促すでしょうし、大規模停電や災害時であれば、通常診療を受け付けてはいられないでしょう(緊急の場合はまた別の話です)。

ネットワークが停止してオンライン資格確認にアクセスできない場合も同様です。その状態でも外来を受け付けるのであれば、マイナンバーカード+資格情報のお知らせやマイナポータル、資格申立書記入などで対処することになるでしょう。ここでも、「10割請求しない」というのが大事なポイントです。

なお、オンライン資格確認には「災害時モード」(災害医療情報閲覧機能)があり、マイナ保険証や健康保険証などを持参しなくても、(電気とネットさえ通っていれば)氏名や住所などから患者を特定して薬剤情報・診療情報などの閲覧が可能です。

災害時に持病の薬が必要なとき、お薬手帳を持ち歩いていなくても過去の履歴から薬を特定してすぐに出してもらうことができます。被災者が離れた避難所にいても、その近くの医療機関などで活用できます。

  • 避難先での利用について

    令和6年能登半島地震において「災害時モード」が活用されました。石川県、富山県の二次避難先も含めて約22,000件の活用例があったそうです

Q15.マイナ保険証を登録をしたけど解除できるの?

マイナ保険証=マイナンバーカードの電子証明書と保険情報の紐付けを解除したい場合は保険者にマイナ保険証の解除申出書を届け出ます。その後の保険診療のための資格確認書が送られてきて、その後は保険者が中間サーバーに解除依頼をして、1~2カ月で解除されます。

  • マイナ保険証の利用解除の方法

    マイナ保険証の利用解除の方法

現状、従来の健康保険証が使える状態でマイナ保険証を解除する理由はなく、この間に使い方を確認すればいいとは思いますが、任意なので自由に解除は可能です。

なお、マイナ保険証の登録で「情報が漏洩しやすくなる」「国に医療情報が筒抜けになる」「健康保険証だけにすれば情報漏洩しない」などといったことはないでしょう。

Q16.マイナ保険証の有効期限は?

マイナンバーカードには有効期限があり、発行から10年(18歳未満は5年)で再発行が必要になります(正確には発行後10回目または5回目の誕生日まで)。

加えて、ICチップ内の電子証明書にも有効期限があり、こちらは5年(5回目の誕生日)になっています。電子証明書は、マイナ保険証やマイナポータルなどでも必要になるため、マイナンバーカードを使うのであれば更新は必須です。

マイナ保険証のカードリーダーで利用すると、「電子証明書の有効期限が3カ月以内に切れる」という表示がされる場合があります。それを目安に更新をするといいでしょう。この頃には、電子証明書の更新を促す案内も地方公共団体情報システム機構(J-LIS)から届くので、自治体(または指定郵便局)で電子証明書の更新を行います。

マイナ保険証のカードリーダーでは、有効期限が切れたあともアラートは表示されますが、3カ月間はそのまま利用し続けられます(医療情報などの提供の同意はできなくなります)。3カ月後が過ぎても更新しない場合、保険者から資格確認書が送られてきます。

  • 電子証明書の有効期限に応じた利用

    電子証明書の有効期限に応じて対応が変わってきます。基本的にマイナンバーカードの電子証明書が無効になると不便ですし、保険者にもコストがかかるため、できれば期限内に更新することをお勧めします

運転免許証の更新を忘れる人が続出して無免許運転している人が多いということもないように、普通に更新できる人は多いはずで、しかも忘れたままでも自動的に資格確認書が送られてくるため、保険診療が受けられなくなるわけではありません。

そもそも、保険資格があるならば保険診療を受けることは可能です。健康保険証を忘れた場合に10割請求となっても、あとから保険者に申請すれば療養費として払い戻されます。それと同じ状況になるわけです。

今回は、最終的に資格確認書も送られてくることになるため、過度な心配はいらなそうです(運転免許証は更新を忘れるとそのまま失効します)。

Q17.健康保険証を残さないの?

歴史的にオンライン資格確認は、ICカードとセットで検討されてきました。もともと「資格過誤」と「転記ミス」を減らすための解決策として考えられてきたため、オンライン資格確認は健康保険証のICカード化が前提となっていました。その後、医療DXの入口としてのICカード化が検討されてきました。

必要なのは、「健康保険証をICカード化できるかどうか」です。それ以外の方策だと、ICカードを導入しないで一足飛びにスマートフォンに内蔵するぐらいしかありません。「ICカードのマイナ保険証は高齢者が使えないけど、スマートフォンなら高齢者も使える」という主張なら、物理カードではなくスマホでの展開を求める意見も理解できますが、いずれにしても永遠に紙の保険証を使うことはありえません。

日本の健康保険制度上、民間の保険者、しかも多くが赤字を抱えている中、さらにコストがかかるIC化を求めるのは難しいため、国が予算を付けるマイナンバーカードに集約するのは自然な流れでしょう。

諸外国では台湾、フランス、ドイツを始め、保険証をICカード化している国は多く、さらに欧州では今後「EUデジタルIDウォレット」というスマートフォンに健康保険証などを保管するサービスも開始しようとしています。日本でも、今後AppleやGoogleのウォレットにマイナンバーカードが搭載される見込みです(結果としてマイナ保険証も使えるようになります)。

今後の医療DXにおいて、電子カルテや電子処方箋は重要な役割を担っています。こうしたデータをほかの医療機関でも利用できるようにするのが医療DXの一環ですが、本人確認ができない健康保険証だと共有できないため、医療機関や薬局では情報を確認できません。そのため、マイナ保険証がその入口になるわけです。

こうした「最低でもICカード」という状況では、「いつ切り替えるか」という点が課題となります。その性質上、マイナ保険証はメリットを出しづらい仕組みです。情報が自分で確認できるので自分で健康管理が可能になることや、健康情報と健康サービスを組み合わせて、よりパーソナライズされた健康増進プログラムを提供できるなどといった、健康サービスに繋げることで魅力を出せるか、なかなか難しいかもしれませんが、医療の効率化に繋げたい国としてはここで普及させたいところでしょう。

  • 医療DXの全体像

    国が進める医療DXの全体像。オンライン資格確認が重要な役割を果たします

なぜ今このタイミングか、というのは難しい判断です。何もしなくても少しずつマイナ保険証の利用率は上がっていくでしょう。恐らく、半数を超えても反対する人は反対しますし、課題はいつまでも存在し続けます。逆に言えばいつでもいいとも言えます。廃止のタイミングは国が責任を持って判断し、それによる不利益が極力発生しないように改善しつづけるしかありません。

現状、国の施策が万全とは感じませんが、良くなってきています。国も施策を進めながら問題を認識したらテンポ良く修正することが、信頼の拡大に繋がるでしょう。