Q5.なぜマイナ保険証は毎回提出?
従来の健康保険証は、慣例的に毎月の最初の受診時に提出するだけで再診時は提出しないという運用が一般的でした。
これは「どのみちリアルタイムで資格チェックできないから」ぐらいの理由でしょう。月の最初の診療で保険証を確認したら、それをレセプトでまとめて請求するだけで、「月の途中で転居、転勤、退職などで保険者が変わった」としてもチェックできなかったからです。
現在は、従来の健康保険証を含めてオンライン資格確認でその場で資格チェックが可能になったので、既存の健康保険証も毎回確認した方が返戻の削減には繋がるかもしれません。これは資格確認書でも同様です。
本来、健康保険法施行規則の規定では、健康保険証を毎回提出することになっています。それが慣例的に免除されているだけなので、健康保険証(資格確認書)でも毎回のオンライン資格確認で返戻が減るということであれば、毎回提出にしてオンライン資格確認をしてもいいかもしれません。このあたりはコスト効率との兼ね合いでしょう。
なお、マイナ保険証は、オンライン資格確認に加えて情報共有の同意が必要になるため、毎回確認の必要があります。
Q6.マイナ保険証のメリットは?
マイナ保険証は現状、医療機関で資格の誤りや転記のミスが避けられて不正にも強いというのが最大のメリットです。これは患者側のメリットではありませんが、医療制度という大枠では、効率化などが図られて恩恵があります。
患者にとっても、わざわざ書面に書かなくても本人同意ができて医療サービスが受診できるというメリットはあるでしょう。診療情報や薬剤情報の提供もそうで、今後電子カルテや電子処方箋が普及したら、リアルタイムの情報を元に医師や薬剤師が治療や調剤を検討できます。
自らの医療情報を確認できるようになるほか、データ連携によって民間の健康サービスも進化するかもしれません。
端的なメリットだと高額療養費制度の自動適用があります。これは高額な診療に対して窓口での立て替えが必要だったところ、マイナ保険証だと自動的に窓口負担を自己負担にまで引き下げられるというものです。限度額は収入や年齢に応じるため、従来は事前に申請して1週間程度かかって送られてくる書面が必要でした。これが自動適用されるので窓口負担が最小限に抑えられます。
診察券や予防接種や乳幼児検診の受給者証といった複数のカードが統合されるというのメリットですが、これは現在拡大中で、まだまだ対応が広がっていないのは課題です。ただ、これが普及すると、今後のマイナンバーカードのスマートフォン搭載で、スマートフォンだけで全てまかなえるようになります。
Q7.マイナ保険証はトラブルで「●」表示?
マイナ保険証におけるトラブルはいくつか存在していますが、ハードウェアやネットワークの障害に起因するもの以外に多いのが「人名や住所で『●』が表示される」というもののようです。
これは、その文字が外字と呼ばれる通常のフォントでは用意されていない文字だった場合に生じます。マイナ保険証ではなくオンライン資格確認の仕様であり、健康保険証や資格確認書でオンライン資格確認を使った場合にも「●」表示になるため、「マイナ保険証のトラブル」ではありません。前述の通り、オンライン資格確認の利用の8割は従来の保険証であるため、従来の健康保険証の方が多く「●」表示になっていると考えられます。
「●」表示であっても、オンライン資格確認やレセプト請求としては問題ありません。初診で病院が管理するデータベースに登録する場合は、診療申込書などに記載してもらった書面で確認するなどして修正する形になります。最初の登録以降は、事務員の端末ではオンライン資格確認と病院のデータが紐付けられているため、「●」が出ても支障はなく、そのままレセプト請求できます。
「●」表示はマイナ保険証とは直接関係のない問題ですが、デジタル庁では文字の標準化を進めており、まずは自治体などでのフォントが標準化されるようで、オンライン資格確認では当面はこうした状況が継続する模様です。
Q8.マイナ保険証で他人の情報と紐付けられる?
マイナンバー関連のトラブルとして話題になったマイナ保険証の誤紐付けの問題ですが、これは健康保険証の情報をオンライン資格確認に登録する時に、氏名/住所/生年月日/性別の基本4情報を使わず、さらにマイナンバーの提出がなかったため、同姓同名などの別人と紐付けてしまったという事例です。
マイナ保険証はこのオンライン資格確認の情報を確認するため、他人の情報を紐付けられてしまった人が受診した際に、別人の情報が医療機関側には表示されてしまいました。健康保険証でも同様に誤紐付けの可能性はあり、その場合は他人の情報が表示されてしまうため、これも正確にはマイナ保険証の問題ではありません。ただし、診療情報や薬剤情報の閲覧ができるのはマイナ保険証のみなので、マイナ保険証で同意した場合、こうした情報を医療機関や薬局側に表示されてしまうという問題はあります。
別人の情報が表示されたとはいえ、「他人が誰でも閲覧できた」というわけではなく、医療機関・薬局で事務員や医師などの限られた人が閲覧できてしまったというものです。このため、個人情報の漏洩を過度に恐れる必要はないと思われます。ただ、事前に対処できていなかったのは国にとって大きな問題です。
現在、社会人などの被用者保険加入者には、「資格情報のお知らせ」が送付されています。これは保険資格情報とマイナンバーの下4桁を送付するもので、ここでマイナンバーとの保険資格情報に誤りがないかなどを確認できます。マイナンバーカードを使ってマイナポータルにアクセスしても、自分の保険資格情報は確認できます。
これをチェックして正しいことが確認できてなお、他人の情報が表示されるというのはかなり特殊な状況だと思われますので、遭遇した場合は自分が加入する保険者に連絡をした方がいいでしょう。
Q9.マイナ保険証で個人情報が漏洩する?
マイナンバー制度やマイナンバーカードにかかわる問題で、「個人の情報が漏洩する」という誤解が広がっています。一部のメディアが誤解を解こうとしないまたは積極的に誤情報を流布していることもあって根強く残っていますが、多くは誤解に基づいています。
まず、マイナンバーは日本の住民に強制的に自動割り当てされている番号です。この番号を鍵に行政のさまざまな情報を連携できるようにするのがマイナンバー制度です。
各行政機関はマイナンバーに紐付く「機関別符号」を生成します。例えば国民健康保険だったら各市町村が生成した機関別符号に対して記号番号と基本4情報やマイナンバーが紐付けられます。
連携するのはこの機関別符号で、例えば年金の情報を市役所が取得したい場合、機関別符号を問い合わせて情報を引き出します。情報連携にマイナンバーは使われないので、「マイナンバーが漏洩しても直接情報は引き出せない」ということになります。インターネット経由でマイナンバーで何らかの情報にアクセスすることはできないので、こうしたルートで情報の漏洩は原理的には発生しません。
「マイナンバーを知ったから他人のマイナ保険証の健康保険情報にアクセスできて、さらにそのデータベースに税金の情報もあって勝手に閲覧できた」といったような情報漏洩が起きるような仕組みでもありません。「マイナンバーに紐付けられた」健康保険情報から年金の情報、税金の情報、銀行の口座情報……と、どんどんアクセスを広げることはできず、芋づる式の情報漏洩はありません。
これまでの説明の通りマイナ保険証の実態はオンライン資格確認であり、マイナンバーは使わず、保険資格の情報にアクセスしているだけです。これは従来の健康保険証でもアクセスする情報なので、マイナ保険証を使っても使わなくても変わりません。
Q10.マイナンバーカードを持ち歩くのが心配
マイナンバーカードは個人の情報が記載された公的な本人確認書類です。運転免許証と同レベルの強度を持ち、同様に本人確認に使えます。裏面にマイナンバーが記載されていますが、マイナンバー制度とカードは厳密には関係ありません。
運転免許証や銀行のキャッシュカードをなくすのと同様に注意が必要ですが、紛失したから即座にマイナンバーで情報漏洩するというわけではありません。前述の通りマイナンバーで情報を引き出すことはできないからです。
券面に記載されている情報量は、マイナンバーと免許番号の違いはありますが運転免許証と同等です。被用者保険の健康保険証を紛失した場合は働いている会社名も漏洩しますし、運転免許証とは違って拾った人が悪用することは容易です。
マイナンバーカードにはICチップ内に電子証明書があり、安全にマイナポータルにアクセスして自分の情報を確認したり、行政手続をしたり、さまざまなことができるようになります。マイナンバーカードを紛失した場合、4桁の暗証番号が同時に漏洩すると、他人がログインしてこの情報にアクセスできてしまいます。
キャッシュカードも4桁の暗証番号で現金を下ろすことができますが、暗証番号が分からなければ下ろされることはありません。同様に、紛失に気付いた場合などにすぐに利用停止をすれば、アクセスされることはありません。
ICチップ自体には券面情報のみしか保管されていませし、ICチップ内の情報を暗証番号なしに勝手に読み出すことはできないので心配は無用です。また、ICチップを偽造してマイナ保険証やマイナポータルのログインといった悪用は現時点で不可能です。券面情報の漏洩を除けば、停止さえすればそれ以上の情報が漏洩する心配はありません。