(4)遅れる場合の連絡

就職活動中の訪問においても社会人としても遅刻は絶対に避けなければなりません。しかし、いくらきちんと準備して臨んでも、電車の遅延などやむをえない事態に遭遇することがあります。そういったときは必ず訪問相手に連絡を入れるようにしましょう。

そしてその連絡はアポイントの時刻になる前に入れることが肝心です。遅刻することがわかった時点、または可能性が出てきている時点で

「たいへん申し訳ございません。電車が遅延しており10分程度遅れそうです」

と必ず電話を入れて伝えるようにします。

さらにそれが大幅な遅延になり、例えば、午後3時にアポイントをとっているのに、到着が40分ほど遅れてしまうというときには

「たいへん申し訳ございませんが、人身事故により御社への到着が40分ほど遅れて、午後3時40分になってしまいそうです」

と伝えることにより、

「そうですか。午後4時からは別の会議があるので、今日は難しいですね。それではまた日をあらためてお会いしましょう」

という返答になるかもしれません。そういった相手の時間への配慮と心づかいをするためにも、遅れる場合には、アポイントの時刻になる前にぜひ伝えていただきたいと思います。

(5)コートを脱ぐ場所とたたみ方

寒い時期、花粉が舞う時期や雨期にコートを着ているときは、必ず建物に入る前に脱ぐ必要があります。そしてその脱ぎ方、たたみ方は「中表」です。 「中表」とは、コートの外側が内側にくるように包み込むようにたたむことです。

訪問時には外から中に入るわけですが、外気中には目に見えないチリやホコリ、花粉などがたくさん浮遊しています。そのため、外側を内側に折りたたむことによって、それらを室内にできるだけ入れないようにするのです。訪問先に入る前にコートを振るなどして細かな汚れをできるだけ取り除くことで、「あなたの会社に花粉や雨のしずくを落としませんよ」という細かな配慮、心づかいを表すことになります。

脱いだコートなどは片手に持ち、受付を訪れます。コートと同様、手袋やマフラーについても会場入れする前に外しておくのが正しいマナーです。

逆に暑い時期にジャケットを手に持って訪れたようなときは、会社に入る前にきちんと着用し、一番下のボタン以外を留めることを忘れないでください。 傘は、傘立てがあれば傘立てに入れ、ない場合は、外で水滴をしっかりと落としてたたんでから建物内に持ち込みましょう。

(6)受付でのマナー

会社に着いたらまず受付で

「本日午後3時に◇◇部の○○様とお約束をしております△△会社の□□と申します」

と、会社名・氏名・訪問相手・約束の有無をはっきりと告げ、取り次ぎを依頼します。企業によっては受付で来訪者用のバッジが渡されたり、来訪者名簿に氏名、会社名等を記入したりすることがあります。受付の指示に従いましょう。

(7)入室時のノックの回数

無人受付にある内線で訪問を告げたり、受付がない会社の場合は、直接担当者のいる部屋を訪れます。そのような場合は、ノックをして相手の返事を待ってから入室することになりますが、ではノックは何回すれば良いでしょうか。

ベートーベンの交響曲第五番「運命」にある「ジャジャジャジャーン」は悪魔が運命の扉をノックした音、ということでこの「運命」という曲名が付けられたといいます。そうです。実は「プロトコール・マナー」という世界共通の国際標準マナーでは、正式なノックの回数は4回なのです。それが今はだいぶ軽減されて「少なくとも3回以上しましょう」という表現に変わってきています。

アメリカの映画を観ていると、「トン、トン、トン、トン」という4回のノックのシーンをよく目にしますが、日本のドラマでは、まだまだ「トン、トン」という2回のノックが多く表現されています。この2回のノックを「トイレノック」といい、トイレ以外に用いるのはよくありません。2回のノックは「中に誰も入っていませんよね」という空室を確認するためのノックです。就職活動での面接時や他社を訪問する際には、「私が入ってもよろしいでしょうか」と入室を確認する3回以上のノックを心掛けましょう。

(8)応接室・会議室での席次

受付を経て応接室や会議室に通されたら、席次を考えて下座に着席しますが、「お客様には上座に座っていただく」という心得がある会社においては、上座を案内されることでしょう。そのような場合は、断らずに指定された席に座ります。