世の中の大半の仕事は、人がいることによって成り立つ。そもそも取引先がいなければ仕事の受注がないわけだし、上司や先輩のサポートもなくいきなりバリバリと業務はこなせない。

多くの他人が関係してくる以上、相手に対する敬意やマナーが必要となってくる。だが、職場で使用するツールの使い方や業務上必要なタスクを先輩社員からレクチャーされることはあっても、ビジネスマナーをイチから教えてもらった機会がある社会人は少ないはずだ。そのような人は、無自覚のうちに礼節を欠いた態度をとってしまい、ビジネスチャンスを逸してしまう恐れがある。

そこで本連載では、筑波大学および札幌国際大学の客員教授を務めながら、大学や官公庁などで「職場に活かすおもてなしの心」をテーマとした講演や研修を手掛ける江上いずみ氏に、社会人として知っておくべきビジネスマナーを解説してもらう。

  • 他社を訪問するときのマナーを解説

外出し、対面することが難しいこのような情勢の中、就職活動もオンラインが中心になっていますが、エントリーシートを提出して通過し、リモート面接もパスして、いよいよ最終的な面接を……となれば、必ず会社を訪問する機会を得ることになります。

あるいは新社会人になって所属が決まると、新しい担当者として取引先にご挨拶に伺うなど他社を訪問する機会も多く出てきます。

他社を訪問するときは、相手に非常識な人間だと思われないよう、自分が会社の代表者であるという意識を持って行動することが大切です。今回はそういった他社を訪問するときのビジネスマナーについて、お伝えしたいと思います。

他社訪問時の12の基本マナー

(1)アポイントのとり方

他社を訪問する際には必ずアポイントをとるのがマナーです。相手の都合も考えずに突然訪問して貴重な時間を割いてもらうのは、大変失礼な行為になります。

就職面接の際は、先方から指定された時間に伺うことになりますが、社会人となってこちらからアポイントをとって伺う際には、遅くとも訪問したい日の1週間前までには連絡をして相手の都合を伺うことが肝要です。事前に考えておいた候補日を念頭に置き、相手の都合を優先して伺いながら、双方が都合の良い日時を設定します。

またアポイントを取る際には必ず訪問の目的と人数を伝えましょう。その目的や人数によって、先方は用意すべき会議室を確保することになります。

訪問する日程が決まったら、相手の会社の受付方法を聞くことも大切です。 社屋の玄関の受付で取り次いでもらう会社もありますし、直接担当者のいる部屋に行く場合もあります。また1つのビルの中に複数の会社が入っている場合もあります。必ず確認しておきましょう。

(2)訪問前の準備

アポイントが取れたら、先方への行き方、電車の時間や乗り継ぎなどを事前に調べて所要時間を把握します。最寄り駅から遠い場合は、タクシー、バス、徒歩などそのアクセス方法を検討して、10分前には訪問先に到着するように時間設定をします。

また、名刺の確認や先方へ持っていく資料や書類などは前日までに準備しておきましょう。当日に準備すれば良いなどと思っていると、何かアクシデントに見舞われた際に慌ててしまうことになります。訪問の準備を整えて、心の準備も整えましょう。

(3)訪問先を訪れる時刻への配慮

10分前に着くように時間設定したとしても、10分前に先方を訪ねることはNGです。予定よりも早く訪問することで、その方のスケジュールを崩してしまったり、前のアポイントを早めに切り上げさせてしまったりすることになってしまうかもしれません。約束した時間の5分前以降に訪問するのがビジネスマナーであり、10分前など早すぎる訪問もマナー違反となります。

先方の会社の場所を確認したら、身だしなみを整えます。視覚からくる第一印象は3秒から5秒で決まります。そして後々まで影響を及ぼします。見た目で信頼を失わないために、訪問先へ到着したら、ヘアスタイル、服装に乱れがないか、身だしなみは必ずチェックしましょう。

女性の場合は、メイクが崩れていないか、ストッキングが伝線していないかなども確認します。ただし、訪問先のロビーや受付前など公共の場で鏡を取り出し、化粧や化粧直しをするのは、たとえ男性の目がなくても避けるべきです。 身だしなみをきちんと確認した上で約束時間の5分前以降、直前に到着するように調整しましょう。