ジャケットのフラップは出してOK?
スーツにはボタン以外にも好印象を与える基本マナーがあります。1点目はジャケットのフラップです。ビジネスシーンにおいて「フラップは出していてよいのか否か」を迷っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
フラップとは、ポケットのフタのことで、屋外での雨避け(ほこり避け)のために取り付けられている物です。従って雨に濡れることはない屋内においては、フラップをポケットの中に入れるのが基本です。つまり「室内ではしまう・屋外では出す」のがマナーということになります。
しかし現代のビジネスシーンでは室内と屋外を行き来するシーンも多く、室内でフラップを出したままにしていてもマナー違反と責められるようなことはなくなってきました。
とはいうものの、タキシード、モーニングなどの礼装は、屋内使用が前提のため、フラップは取り付けられていません。つまり結婚式などフォーマルな場にダークスーツで参列する場合は「フラップはしまうのがマナー」になりますので注意しましょう。
普段のビジネスシーンでは出したままでも問題ないかもしれませんが、就職活動での面接試験や大切な取引先との商談の際にフラップを内側に入れておくと「スーツのマナーを正しく理解している」と見てもらえるかもしれません。
常にきれいなシルエットを保とう
2点目はスーツのシルエットです。スーツの型が崩れてしまうとだらしない印象を与えてしまいますから、常にきれいなシルエットを保つように心がけることが重要です。
シルエットを崩すものとして注意したいのがジャケットのサイドポケットです。このポケットは「最も使うべきではないポケット」とされています。理由として、サイドポケットに何か物を入れてしまうと、重みでシルエットが崩れるのが非常に顕著であるからです。しかも両方に同じ大きさ・重さの物を均等に入れて使うということは少ないでしょうから、片側だけがダラリと下がってしまいます。
スーツのポケットは便利なようで、実は「使うために作られた物ではない」ことが基本ですので、ボールペンやスマホ、財布、ハンカチとたくさんの物を入れずに、美しくスーツを着こなしたいものです。面接時や先方への挨拶、会合時には、上着の内ポケットに名刺入れを入れる程度にとどめ、それ以外の物はかばんの中にしまっておくことがビジネスマナーです。
新社会人として印象を良くするために
面接時や入社式など、社会人として踏み出すための第一歩として、好感の持てる着こなしの話をしてきましたが、私が普段学生に一番指導している話は「前髪・横の髪による印象」についてです。
上の写真をご覧いただいてもわかるように、同じ笑顔であっても前髪・横の髪をきちんと整えることによって印象は大きく変わります。後ろに髪をまとめても、耳の前の髪を数本ヒュルヒュルと垂らしている人をよく見かけますが、これは社会人の髪型としてはいただけません。また、額を出すと知的に見えます。前髪・横の髪・後れ毛などはムースや髪をまとめるワックスでしっかりと固めましょう。
ショートカットの女性や男性についても同様です。前髪をおろすと幼稚な印象を与えてしまいますので、額と耳を出して髪型に留意し、「視覚」からくる第一印象を大切にしていただきたいと思います。
まとめ
就活生や新社会人の方々に役立てていただきたいという想いを込めて、相手に好印象を与えられる「身だしなみ」の第一歩をご紹介しました。
社会人としての経験を重ねるにつれ、仕事を覚えたり、人間関係を構築したりすることなどに必死で、服装のことは少しずつ後回しになっていくかもしれません。しかし、相手に好印象を与えるためのマナーやルールは社会人として活躍するうえでは必要不可欠です。
身だしなみは無言のメッセージです。話さなくても、外見である程度判断されてしまいます。信頼を得るのか、信頼を失うのか、身だしなみを整えることは信頼関係の重要な要素です。周囲から好感を持たれる清潔感のある身だしなみでいられるよう、常に努めていただきたいと思います。
著者プロフィール: 江上いずみ(えがみ・いずみ)
筑波大学客員教授・札幌国際大学客員教授・Global Manner Springs代表。東京生まれ。筑波大学附属高等学校から慶應義塾大学法学部法律学科卒業。1984年日本航空入社。客室乗務員として30年間で約19,000時間を乗務。オリンピック・パラリンピック教育担当講師として全国の小中高校で「おもてなしの心」をテーマに講演。国内外での年間講演数は250回に及び、「おもてなし学」の構築に取り組む。主な著書は「幸せマナーとおもてなしの基本」(海竜社)、「“心づかい”の極意」(ディスカバートゥエンティワン)