ビジネスにふさわしいスーツを選んでも、その着こなしのマナーを知らなければ台無しになってしまいます。そこでスーツのボタンの留め方、外し方のマナーについてお話ししたいと思います。ただ、男性用スーツと女性用スーツではその構造が違うため、着こなしのルールも違います。まずは男性編からみていきましょう。
正しい男性スーツの着こなし方
まず男性のスーツには2つボタン、3つボタン、そして3つボタンのうちの一番上のボタンが襟の折り返し部分に隠れる「段がえり」というタイプがあります。どの形であっても、一番下のボタンのことを「飾りボタン」といって、留めないのがマナーです。
この写真を見ていただいてもわかるように、どのスーツも一番下のボタンが見えています。つまりボタンホールから離れた位置にボタンが付けられている=スーツがそういうデザインになっているということです。上のボタンだけを留めることによって、フロントカットの部分が少し開くようになり、より着こなしやすくなるので、スマートな印象を与えることができます。几帳面な人はボタンがあればすべて留めたくなるかもしれませんが、一番下のボタンを留めてしまうと、スーツそのもののシルエットが崩れてしまうので、「一番下のボタンは留めないで着こなすのがマナー」と覚えましょう。
さて、そのボタンの留め方、外し方にもマナーとルールがあります。基本的に立っているときは留め、座っているときは外すというのが本来のスタイルです。アメリカ映画を観ても、ビジネスマンが座るときにボタンを外して会議に臨み、ひとたび会議が終わったら立ち上がる瞬間にスッとボタンを留める、というシーンがよく出てきます。他社を訪問し、応接室に通されて座っているときは外していても、先方が入ってきたらすぐに立ち上がり、ボタンを留めて挨拶、名刺交換をする。それがビジネスマンとしてのボタンの着脱マナーになります。
新社会人は2つボタンがベター
ところで、就活生・新社会人は2つボタンと3つボタン、どちらのスーツを選ぶべきでしょうか。
2つボタンのスーツは、最もスタンダードなスーツで、「場所を選ばない」スーツと言えます。フォーマルな場所でもカジュアルな場所でも、どのような場所でも着用することができ、業種や社風を問わないオールマイティーなビジネスアイテムと言えます。
では3つボタンのスーツはどうでしょうか。スーツ発祥の地はイギリスだと言われていて、英国風のクラシックなスーツには3つボタンが多く採用されています。スタイリッシュでタイトなラインになるので、日本でも近年、若者を中心に人気があるデザインです。
しかし基本的にはおしゃれなパーティなどカジュアルな場所に向いているスーツとも言えますから、「悪目立ちせず、好印象を与えるスーツ選び」という観点でいえば、就活生・新社会人の方には2つボタンのスーツ着用をおすすめしたいと思います。
正しい女性スーツの着こなし方
では女性用のスーツはどうでしょうか。女性用スーツは、歴史が古く伝統を重んじる風潮が根強い男性用のスーツと比べ、比較的自由な着こなしが許されています。そのためボタンの数は、そのときの流行に左右される傾向にあり、男性用ほどの意味は持ちません。かつては3つボタンが主流でしたが、現在は、1つボタン、2つボタンが人気の主流になってきました。従って、ボタンの数にこだわるよりも、色やデザインの印象で選べば良いかと思います。
しかしボタンマナーについては配慮すべきポイントがあります。女性用スーツは、男性用スーツのボタンマナーとは異なり、すべてのボタンを留めるのがマナーです。女性用のスーツはそのようにデザインされているということです。従って、「歩くとき」「応接室に通されて座ってお待ちするとき」「挨拶や名刺交換をするとき」などのシーンは、すべてボタンを留めたままにするのがマナーとなります。
では長時間の会議など、座って仕事をしているときも常時ボタンを留めておくべきでしょうか。それはその人の体型とスーツのゆとりによって臨機応変に考えてもよいかと思います。
ボタンを留めたまま座るとジャケットのシルエットが崩れてしまい、スーツ姿がかえって不格好に見える場合もあります。また、お腹まわりのジャケット生地が張っていると相手に窮屈な印象を与えかねません。タイトなスーツを着ていて、「座るときはあえてボタンを外す」ことが相手への心遣いになると判断したのであれば、挨拶時や名刺交換時は必ず留めるという大原則さえ守れば、それもありかと思います。