――神戸さんは地方予選にも行かれるのですか?
もちろん行きます。札幌、仙台、東京、新潟、長野、静岡、名古屋、福井、大阪、広島、高松、福岡の12か所、基本的には全部行きます。僕は出場者たちに「鬼の神戸」なんて言われているんですよ。でも、一番会いたがってもくれるんです。なぜなら、一番厳しいことを言うから(笑)
最近は、いいか悪いか分からないけどビデオ応募というのもあるんです。でも講評を電話でしても、電話だと通じないんですよね。対面だと「ここをこうしたほうがいい」って言った時の顔が曇ったか、ニコッとしたかで真意が伝わったかが分かるんですけど、電話だと分からないですからね。
――出場者にアドバイスもされるんですね。
各組に1人必ずスタッフが付き、5組ほど責任を持って担当します。でも、難しいのはどこまでアドバイスを言っていいかということ。言いすぎてはダメだから。例えば夕焼けを表現するときに、テレビ側が手伝って照明を使えばキレイにできてしまうけど、それはやっちゃいけない。彼らは夕焼けを仮装で表現するわけだから。
あと、素人は「日記」みたいになりがちなんですよ。極端にいうと、「サーフィン」を仮装する演目だとすると、朝起きて、弁当つくって、海行って……みたいに1日を作っちゃう。「君はお弁当を見せたいわけじゃないだろ?」って、その作品の一番いいところを探してあげて、そこだけを見せた方がいいと経験値を生かして、仮装本部スタッフの平井(秀和)、山本(修一)、小室(圭子)、永井(大輔)などが助言するんです。
――なるほど。やりすぎてしまうんですね。
やっぱり省略が苦手なんです。だから損することをたくさんしちゃう。プロは省略が上手いんです。だって欽ちゃんが舞台で「海だ!」って言えばそれだけで海になるじゃないですか(笑)
スタッフは何も得しないのに親身になってやってますよ。担当した組が100万円獲っても何ももらえるわけじゃない。でも、彼らは番組が本当に好きなんですよ。そうでないとできない。出場者と一緒になってやっているのが好きなんでしょうね。
――合格の基準は?
基準が分かったら苦労しないですよ(笑)。鶴間政行という作家がうまいことを言うんですけど、「演技して3つ驚かせなさい」と。「あ、上手いね」でもいいし、「いいグループだね」でもいい。それで10点。それから「そのアイデアいいね!」で13点になる。そこからもう1個心を動かすことができたら合格ラインになるんです。
出場者たちが番組の方向を決めてくれた
――『仮装大賞』には初期の頃から参加されている常連さんもたくさんいらっしゃいますね。
例えば常連の三井(勝彦)くんの作品のように傾向が似てしまう、その場合どのように評価するか、意見が分かれますね。それを嫌がる人もいるんだけど、やっぱりリピーターがいないとこの番組は成立しないですよ。
第3回を正月にやった後、当時のプロデューサーの五歩一勇とハワイに行ったんです。そのとき、「リピーターを作らなきゃ、続かねえぞ」って話して、ハワイから出場者全員に年賀状を書いたんです。そしたら次も来てくれた。やっぱり常連さんはツボを知ってますから。それを初めて出る人に教えるのは難しいんです。
予選で何度落ちても、常連さんは予選に来てくれる。彼らは「スタッフに会いに来た」って言うんですよ。なぜなら、自分がスタッフだと思ってるからね。
――『仮装大賞』は、子どもからお年寄りまで年齢も様々で、個人でもグループでも参加できるというのが特徴だと思います。
それどころかプロのタレントさんも出られますからね。あらゆる人が出られる。萩本さん自体もそういう人だから。全く自由にどんな人とも普通に付き合えますからね。
――作品も様々な題材がありますね。
そう、何でもあり。ただ唯一ダメなのが「汚い」もの。ゴールデンタイムの番組ですから、観ていて人を不愉快にするものはダメなんです。
前回優勝したのは、「TikTok」をモチーフに仮装した父娘だったけど、僕は「TikTok」なんて分からないから、作品の良し悪しを若いスタッフに後は任せました。だけど、あの父娘が終わった後、手をつないで帰ったんです。その姿に感激したんです。
――素敵な親子でしたね。
『仮装大賞』は、最初にこういうものを作ろうって考えたのは日テレと萩本さんでしたけど、その後は運がいいんです。出場者が勝手に流れを作ってくれる。例えば、第1回に「蒸気機関車」が出てきて見本を見せてくれた仙台の関根さん。その次に先生が卒業記念に30人くらい引き連れて「花咲か爺さん」をやって、そこから団体が出るようになった。
その後は家族で子どもたちと一緒に出るようにもなった川上さん一家、松田さん一家。まだまだいっぱいいるけど全ての方々に感謝しています。僕たちも一生懸命考えているんだけど、出場者の人たちが番組の方向を決めてくれているんです。