そんな分岐点を経て、今、俳優として活躍しているジョンヒョク。海を渡り、日本ドラマ初出演となった本作の演出は、ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(16)、『カルテット』(17)、映画『花束みたいな恋をした』(21)などで知られる土井裕泰氏で、撮影前にオンラインでミーティングをしたと言う。

「その時、演じるユンスのキャラクターについて、どのぐらい生きてきた人なのか、どんなことに重きを置いている人物なのか、たくさんお話をしましたが、すごく楽しかった記憶があります。ウィットに富んだ監督で、まるで友人と話しているように楽な状態で進めてくださいました。現場でもたくさん頼らせてもらいましたし、日本では美味しいものもいっぱいごちそうしてくれました。また、僕は土井監督の持っているユーモア感がすごく好きでした」

韓国と日本での演出の違いについて尋ねると「国の違いというよりも、やっぱり演出する監督によって違う気がしました。同じ韓国でも、監督によって全然違いますから。大きな違いは、通訳が必要か否かということでした」と回答。

ただ、現場で少し驚いたこともあったという。

「リハーサルをやってから、もう1回アングルを変えてまたリハーサルをするということが新鮮でしたが、それも楽しく撮影できました」

劇中では、流暢な日本語を話しているジョンヒョク。

「日本語については、撮影の1カ月ぐらい前から先生について勉強して準備をしました。韓国語と日本語は語順が一緒なので、馴染めるようにと頑張って練習しました。どうしても感情が入ると、セリフの1発目が上がっちゃったりするので、その塩梅が難しかったです。その辺も日本語のセリフを教えてくださる先生が毎回チェックしてくださいました」

とはいえ、一番大切にしたのは「演技の真実味」だったと明かす。

「日本語は音で覚えました。一生懸命練習したけど、日本に来て撮影に入った段階では、それを全部忘れるようにしたんです。そこにとらわれず、感情が入ってきた時は、自然な形で演じられるようにしたかったので。アドリブもしたくなるのですが、それはなかなかできなくて。みんなで食事をしながら笑ってしゃべるシーンでも、『すごい!』としか言えなくて、ずっと『すごい! すごい!』と言っていました(笑)」