今回の番組において、橋本氏は「企画・演出」という立場だが、テレビ朝日出身のAmazon MGMスタジオのプロデューサーとともに、制作の指揮を執った。かつては『有吉の壁』(日テレ)と『あいつ今何してる?』(テレ朝)という水曜19時に真裏同士で戦ってきた2人が、裏方として“ゴールデンコンビ”を組んだ形だ。
「とんでもない予算をかけてすごい規模の配信のバラエティをやるとなると、演者さんだけでなく、美術、衣装、技術、主題歌、また編集においてもタッチや加工の色味、CGをどう作っていくかなど、やらなければいけないことがとんでもない量あるんです。それでも、細部まで詰めることが必要な時に2人で分担することで、気持ち的にもだいぶ楽になれました。
配信で大きなコンテンツをやる時はこういう作り方をすることが増えていて、やっぱり1人が抱えきれない量を持つより、それぞれの強みを最大限に掛け算しながらコンテンツの強度を上げていくほうがいいと思うんです。地上波でもドラマは分業が進んでいますが、バラエティは1人の演出家に権限が集中しがち。それゆえに思い描いたコンテンツがしっかりできるという良さもあるのですが、やっぱりグローバルに向けて見たことのないバラエティを作ろうとなると、個々が自分の限界を突破して表現に挑戦し、その化学反応でコンテンツを作ることが大事だと思うので、今回彼と一緒にやれたことは僕の中でめちゃくちゃ財産になっています」
収録5か月前のスケジュール確定で豪華メンバー実現
MCの千鳥をはじめ、「高比良くるま(令和ロマン ※「高」は正しくははしご高)&野田クリスタル(マヂカルラブリー)」「せいや(霜降り明星)&秋山寛貴(ハナコ)」「堀内健(ネプチューン)&屋敷裕政(ニューヨーク)」「長田庄平(チョコレートプラネット)&じろう(シソンヌ)」「澤部佑(ハライチ)&真栄田賢(スリムクラブ)」「平井まさあき(男性ブランコ)&堂前透(ロングコートダディ)」「サーヤ(ラランド)&KAZMA (しずる ※「Z」は正しくはストローク付きのZ)」「津田篤宏(ダイアン)&永野」というこれだけの売れっ子芸人たちが一堂に会したのは、収録の5か月前にスケジュールを確定させたことで実現。これも、配信ならではの制作スタイルの賜物だ。
「テレビのバラエティの収録で“5か月後のこの日、空いてますか?”なんてことはあり得ないです。むしろ“来週空いてますか?”みたいな世界で、それによって今話題の人に出てもらえるという良さもあるんですが、これだけ時間をかけることで“本当に見たい人たち”がそろうということを改めて感じました」
その上、全組が既存のコンビやトリオから1人ずつ代表して出場する形に。ここは、「チョコプラだと松尾(駿)さんにも出てほしいし、シソンヌの長谷川(忍)さんも出てきたら面白くなるのは見えるのですが、それをやってしまうと分かれたコンビがお互いのネタをどう見るのか、ということもお客さんが気になってくるし、そこでネタの“かぶせ”ができてしまうかもしれない。なので、1回目としてフレームを分かりやすくする上で、シンプルに1人しか出ないということにしました」と意識した。
ちなみに、オリジナルのテーマソングは、サーヤらのバンド「礼賛」が担当し、高比良くるまがボーカル&作詞という形で参加しているが、「賞レースと銘打っているものの、千鳥さんが“1日でちゃちゃっとやって1,000万円もらえちゃう”と言うように、優勝をかけて競う設定の中で、面白いお笑いをやりたいだけなので、サーヤとくるまがテーマ曲をやっているから勝負に有利になるみたいな視点は全く考えてないです(笑)」とのこと。
従来のテレビバラエティでオリジナルのテーマ曲を作るとなると、スタジオ収録に間に合わず、放送上で付けるというケースも多々ある中で、「今回はしっかり準備期間を設けて曲を作ってもらい、実際に現場で流すことでお客さんも高揚感を持って収録に参加することができたと思うんです。そこも配信ならではの贅沢なこだわりだと思います」と捉えている。