お笑いコンビの千鳥がMCを務めるPrime Videoの新番組『Amazon Original「最強新コンビ決定戦 THEゴールデンコンビ」』(31日18:00配信スタート)。人気芸人8組が番組オリジナルのコンビを結成し、最強新コンビ(=ゴールデンコンビ)の座と賞金1,000万円をかけ、様々なお題に即興コントで挑む新たな“賞レース”だ。
全8ステージにおよぶ収録は、数々の現場を乗り越えてきた実力派芸人たちが、即興ならではのミラクルを何度も起こすことに。その背景には、即興ネタへの制作・技術チームの職人芸とも言える対応力と入念な準備があった。舞台裏を、企画・演出の橋本和明氏(WOKASHI)が語る――。
Prime Videoは「テレビに近い」プラットフォーム
2022年末に日本テレビを退社後、『名アシスト有吉』(Netflix)、『愛のハイエナ』(ABEMA)、『横道ドラゴン』(DMM TV)と各配信プラットフォームで次々と新たなバラエティに挑んできた橋本氏。今回臨んだPrime Videoは、どのようなフィールドに映ったのか。
「Netflixさんだったらエッジの効いたドラマ好きの方がいっぱいいるだろうし、ABEMAさんはアニメや麻雀のチャンネルもあるので尖ったものが好きな男性が多いと思ったのですが、Prime Videoさんに関しては、一般的に使われているネットショップを利用する方が見るので、わりとフラットな人が多くて、テレビに近いのかなと思いました」(橋本氏、以下同)
配信メディアであっても、「例えば裸になるとか、ドギツい下ネタがあるとか、“テレビじゃできないめちゃくちゃヤバいもの”をやりたいのではなく、テレビが培ってきたバラエティの歴史の延長線上で勝てるものを作りたいという気持ちがあるんです」という橋本氏にとって、Prime Videoはうってつけのプラットフォームとも言える。
一方で、Prime Videoには『HITOSHI MATSUMOTO presents ドキュメンタル』というバラエティのロングヒットコンテンツが存在していることから、それとの差別化も意識。
「Prime Videoさんに置いていただくのに、似たようなコンテンツになるのは意味がないので、コンビで戦い、目の前のお客さんが投票する賞レースということで、『ドキュメンタル』とは全く違う構造にすることは気をつけました。テレビだと、『オモウマい店』(中京テレビ)が当たったらお店バラエティが大量に増えるみたいなことがあるじゃないですか(笑)。やっぱり新しいコンテンツとしてお客さんに喜んでもらおうというのは、結構議論しました」
1日かけた前日リハーサルで混乱を味わう
順番も回数も決めず、200人の観客を前にしたステージで、即興ネタがノンストップで繰り出されていく――プレイヤーの芸人たちにとってこの刺激的なフォーマットは、橋本氏らがこれまで仕事をしてきた百戦錬磨のスタッフ陣なくして成立しなかった。
出番の整理や、直前に聞いた明転・暗転のきっかけの伝達だけでなく、突飛な発想をする芸人が求める小道具の手配、さらにはネタがかぶって「練り直したいです!」と希望した際などの対応力も問われるが、これをライブ形式で一切止めることなく進行できたのは、橋本氏が立ち上げ、即興ネタをレギュラーで展開する『有吉の壁』(日本テレビ)をはじめとする「お笑いに関して情熱と確実な腕があるスタッフのドリームチーム」だからこそ。
それでも、前日に1日かけてリハーサルを実施。若手芸人8組に、本番と同じお題でネタを披露してもらい、「どうやってネタ順を整理するのかという混乱を前の日に味わって、本番のイメージをみんなが頭の中にできた状態で臨むことができました」と、シミュレーションを行っていた。
前日にも、制作チームの打ち合わせを4時間にわたって実施。出演者が急にトイレに行きたくなったら3階建てのセットでどう誘導するか、長時間の収録で観客が疲れたらどうするか…といった部分まで、「微に入り細に入り考えられることを全部想定して、100人のスタッフで、誰がいつどういう動きをするのかを全部詰めていきました」という。ここは、過去に総合演出を担当した『24時間テレビ』(日本テレビ)のノウハウも生かされていた。