• 久本雅美

第一線で活躍し続ける秘訣を尋ねると、「人に恵まれているというのもあると思いますし、一作一作を自分の納得いくものにする、あるいは喜んでもらえるものにするために、妥協せずにやってきたというのもあると思います」と回答。「妥協せず面白いものにするんだというエネルギーの延長で、またオファーをいただいたり、次につながっているんじゃないかなと思います」と分析する。

妥協せずに走り続ける原動力はやはり、「人に喜んでもらいたい」という気持ちだ。

「お客様が喜んでくれている姿が私の原動力です。喜んで拍手してくれたり、笑ってくれている姿を見ると、逆に私のほうがエネルギーをいただくんです。『ありがとうございます! 頑張ります!』って」

また、活動していく中で「人と比べない」ということも大切にしているという。

「人と比べると卑下したり、マイナスなことを考えてしまうので、比べるんだったら昨日の自分と今日の自分を比べるという生き方をしたいなと。若い頃は人と比べてしまうことがありましたが、自分に力をつけない限りは何も変わらない。評判・評価の世界なので、そこに引っ張られそうになるときもありますが、自分を鍛えて自分らしく輝いていけたらと思います」

  • 久本雅美

43年間の活動を振り返って大きな転機になったと感じていることを尋ねると、舞台とテレビの両方をやり続けていくと覚悟を決めたタイミングがあったと明かした。

「テレビの仕事をたくさんいただくようになったときに、テレビの仕事が落ち着いてからまた舞台に戻ろうかなと、弱気になっていた時期がありました。そんなときにうちの劇団の若手の舞台を見に行って、全力でお芝居してお客様に笑ってもらおうとしている姿を見て大感動し、ボロボロ泣いてしまって、原点を忘れていたなと。私は舞台が原点であり、両輪があっての自分だと思い出しました。テレビにしばらく身を置こうと思ったのは逃げだと思い、逃げちゃいけない、両方やり切るんだと腹に決めたのが大きな節目だったと思います」

舞台も続けていくと覚悟を決めてから、ブレずに両立させてきた久本。「舞台を毎年やり続け、本当に休まなかったです」と述べ、「舞台は私の骨格です」と語る。

そして、舞台の醍醐味として観客の“生の反応”が大きいと言い、「稽古中にどれだけ一生懸命悩んで考えて面白く膨らませていくか、その過程が面白いですし、幕が開くとお客様の反応で正解か不正解かわかる。不正解だなと思ったらすぐ変えてみたり、お客様のダイレクトな反応で力をつけさせてもらえるというのは舞台ならではの醍醐味だと思います」と語る。

舞台での経験はテレビにもプラスに。逆にテレビでの経験も舞台に生きているという。

「舞台で作り上げた笑いは宝としてあり、自分の血肉となってバラエティにも生きていると思いますし、バラエティにはバラエティの達人がいて、笑いの取り方などとても勉強になります。本当に相乗効果だなと感じていますし、私は両方やっていかないと気が狂うと思います。両方をやっていくことで精神やチャレンジのバランスが取れているので」