――アイドルユニットのYURIMARIとしてデビューされた中村さんですが、その経験が役者業に生きることはありますか? よくリズム感が演技に生きるというお話も伺うのですが…
私は恐ろしく運動神経が悪いので、全然何も(笑)。アイドルのときは歌もダンスも下手だったので、何も生かすところがないんですよ。本当に運動神経が天性の悪さなので、動きの大きい舞台をやるときは、その能力があったらいいのになと、いつも思いながらやっています。ただ、自分は何もできないということが実感としてあったからこそ、役者をやる上で人一倍勉強しなきゃ、人一倍もっと準備しなきゃと、ものすごく覚悟してスタートすることができました。
――その気持ちをずっと忘れずにいるから、時代劇の仕事が入ると時代背景を勉強するなど、準備を怠らないんですね。
そうですね。そうしないと、全部自分に返ってきますから。
――『鬼平犯科帳』は長年にわたり愛される作品ですが、テレビ静岡で25年続く番組『くさデカ』では、YURIMARIさんの曲「love love dreamer」が今も主題歌に使われていますよね。
「えー! なんで!?」って感じです。ありがたいけど、謎ですよね。私たちの曲は王道のアイドルソングではなくて、すごく変わっていますから、よく使い続けてくれているなと思いますし、静岡の方にも結構このことは言われますね。番組の周年記念で出演オファーを受けて、そんなに長年使ってくださっているのでぜひ行きたかったんですけど、どうしてもスケジュールが合わなくて。結局、番組を見られていないんです。
――知らないところでずっと流れているって、不思議な感覚ですよね。
そうなんです。
――幸四郎さん版の『鬼平犯科帳』も、そのように長く愛されるシリーズとして続くことを期待しておりますので、最後に改めて見どころをお願いします。
鬼平をはじめ火付盗賊改方が提灯を持って登場するシーンやアクションもすごくカッコいいので、王道な時代劇の一面も楽しんでいただけると思いますし、それにプラスして人間味があって、人の感情の機微も丁寧に描いています。
裁く側の人間が主人公ではありますが、その人の持っているルーツが決して正統派ではないし、道を外したこともあるというのが、鬼平の魅力的な背景です。だから罪人や盗賊など、いろんな人が出てきても、みんなの人生に寄り添っていく。そこが、この作品の美しさだと思うので、若い人にも共感して見ていただけると思います。
●中村ゆり
大阪府出身。2003年女優デビュー。以降も映画、ドラマ、舞台、ナレーターなどで幅広く活躍。映画『パッチギ! LOVE&PEACE』(07)で全国映連賞女優賞、おおさかシネマフェスティバル新人賞、『市子』(23)で高崎映画祭最優秀助演俳優賞を受賞。近年の主な出演作に、映画『Fukusima 50』(20)、『窓辺にて』『母性』(22)、『嘘八百 なにわ夢の陣』『仕掛人・藤枝梅安』(23)、『あまろっく』(24)、ドラマ『平成細雪」(18/NHK)、『今夜はコの字で』(20・22/テレビ東京系)、『天国と地獄~サイコな2人~』(21/TBS系)、『ただ離婚してないだけ』(21/テレビ東京系)、『SUPER RICH』(21/フジテレビ系)、『クロサギ』(22/TBS系)など。現在放送中の『私の幸福(しあわせ)時間』(テレビ朝日系)で番組ナレーターを務めている。