• 中村ゆり

――演じた役への共感は、いかがですか?

おまささんは決して恵まれた環境ではない背景の中で生きてきた方ですし、盗賊の道に進まざるを得ない中でも自分の中の尊厳を失わない。一つ一つの選択の中に必ず美学があって、人としてのプライドもしっかりとある人なのですが、私の中にもそういう部分が少なからずあるので、とても共感できるところが多かったです。

でも、「命を捨てたっていい」と思えるくらいの人に忠誠を誓うという気持ちは……私にはないかも。命は捨てられないな(笑)

――主演の松本幸四郎さんの印象はいかがでしたか?

幸四郎さんは、普段はおっとりされていて、私たちを全然萎縮させない方なんです。でもクランクアップのとき、とても熱い思いで語ってらっしゃるのを見て、やっぱり自分の叔父さん(中村吉右衛門さん)がやっていた役を受け継ぐというのは、とても大きいものを背負っていたんだなと思いました。私でさえ、とんでもないプレッシャーを感じていたのに、それ以上の重さがありますから。その姿に、より一層魅力的な一面を見たなと思いましたね。

――京都での記者会見では、皆さんで幸四郎さんのことを「カッコいい」「カッコいい」と褒めだす流れもありましたが(笑)、実際に“カッコよさ”という点ではいかがですか?

私には、分かりやすいカッコよさではないカッコよさがあると思っているんです。誰がツッコんでもOKみたいな空気でいてくださって、本当に普段はふわふわしていて、それが幸四郎さんの気遣いだということも分かるので、みんなすごくのびのび撮影できたのは、幸四郎さんの懐の深さだなと思います。

  • 中村ゆり

京都の職人スタッフで思い出す緊張感

――京都での撮影はいかがでしたか?

やはりスタッフの方も独特の職人気質というのがありますよね。プライドがしっかりあって、だからこそプロフェッショナルなのだと思います。例えば、カメラマンさんが「ちょっとおまさ、そこ瞬(まばた)きせん方がええな」と言ってくれたりして、こちらに遠慮するよりも作品愛を一番に考えているのが素敵だなと思いました。その分、私も緊張するんです。ベテランのスタッフさんに厳しい目で見られているので。でも、それが自分の役にとってプラスに働くということが分かるから、もう皆さんどんどん言ってください、という感じでした。

――キャリアを重ねられてきた中で、技術のスタッフさんにそのように言われることは、あまりないですか?

そうですね。でも、私は出だしが井筒組(井筒和幸監督『パッチギ! LOVE&PEACE』)だったので、そこでボッコボコにされましたから(笑)。あの緊張感を久々にちょっと味わう感じがあるので、ピッと身が引き締まりました。

――インスタグラムを拝見していると愛犬に溺愛している様子がうかがえますが、長期の京都での撮影で離れるのは寂しかったのではないでしょうか。

そうですね。その間は母が見てくれていたのですが、私が家でスーツケースを出すと、長期でいなくなるというのが分かるので、めっちゃ怒るんですよ! 荷物を出すのに引き出しを開けようとすると、それを阻止しようとしてきて(笑)

なので寂しかったのですが、地元が大阪で京都にもお友達がいるので、撮休の日はカーシェアをして伊勢にも行ったりして、結構満喫していました。