本作では、セリフなしで背中だけで見せるシーンも男らしさがあふれているが、「何も考えてないですよ」と話す草なぎ。
「京都がめちゃめちゃ寒かったので、寒いなと。國村さんと2人で抱き合って、励まし合っていました(笑)。震えたらダメだから耐えて。寒さに耐える感じが男らしさとして出たのかなと思います」
また、演じた格之進について「何でこんなこと言うんだろう」とイライラすることが多かったと明かし、その怒りが役にいい影響を与えていたのではないかと考えている。
「復讐に固執せずに娘と2人で穏やかに暮らせばいいのになと。娘を苦しめるたびに格之進に腹が立って、その怒りが格之進の怒りとしていい感じに出たのかなと思います。格之進には共感できるところが少なかったが、素敵な役にしないといけないと思ったので、古き良き、譲れないという、今にはない美徳があるのではないかという思いを込めて演じました」
そして、白石監督について「とても穏やかで丁寧な方」と印象を述べる。
「なんでそんなに気が利くのかなと思うくらい、いろんなことにすぐ気づいて自分で動くんです。バイオレンスな作品を撮っている方とは思えないけど、丁寧で細やかな方だからバイオレンスをしっかり撮れるんだなと逆に思いました」
技術的にもこだわってさまざまな撮り方をしていたため、「待ち時間が多かった」と言うも、完成した映像を見て感動したという。
「まさしく1カット1カット魂を込めて映画を撮っているぞという、すごく素敵な画になっていたので、『なんで時間かかっているの?』なんて言わなくてよかったなと(笑)。時間をかけて丁寧に撮ったからこそ、素敵な画が撮れたんだなと」
「お芝居は元気じゃないとできない」 年齢を重ねてより実感
『ミッドナイトスワン』(2020)で第44回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞し、NHK大河ドラマ『青天を衝け』(2021)やNHK連続テレビ小説『ブギウギ』(2023~2024)などでの演技も好評を得た草なぎ。俳優としてますます注目を集めているが、自身は演じることをどのように捉えているのだろうか。
「あまり深く考えてないですが、演じるということは心も体も健康的でいることと向き合う仕事なんだなと感じています。体を使う仕事なので、元気でポジティブじゃないと現場も進まない。年を重ねてよりそう思うようになりました」
本作の山のシーンでも元気でいる大切さを実感したという。
「山のシーンは超大変でした! 行くまでに1時間ぐらい山登りをして、撮影は7分ぐらいで終わって、また1時間ぐらいかけて帰るという。元気がないと行くまでに疲れてしまう。スタッフさんもそうですが、みんな元気じゃないとできないと思うので、それがお芝居なのかなと思います」