そして、21年の時を経て『FINAL』が放送されることが決定。動き出したきっかけは、2022年にフジテレビ制作センターの局長からフジパシフィックミュージックの社長になった立本洋之氏からの言葉だった。

「彼は『心はロンリー』を作りたいと思ってフジテレビに入ったんだけど、その思いがかなわず異動になったと聞いて、この話をさんまさんにもしていたんです。ちょうど同じ時期に、山崎裕太くんのところに『あっぱれさんま大先生』の同窓会をやってほしいという声が寄せられて、僕のところに“やれませんかね?”と相談が来ていたので、それをさんまさんに伝えたら“ありがたい。こんなときだからやりましょう”と快諾を得て、編成にお願いして両方やることになりました」

『心はロンリー』は、多くの手間暇と予算がかかる番組だけに、テレビを巡る環境が変わった中で、参宮橋金曜サークルの面々はもうできないと思っていたが、「さんまさんというのは、“人”とお仕事をなさる方なので、やってほしいという人たちの思いに動かされたんだと思います」と解説。

振り返ると、さんまは自身が総合司会を務めた『FNS27時間テレビ』の生放送中に名曲「笑顔のまんま」を作ってくれたBEGINに、お礼として沖縄のイベントにノーギャラで出演したり、アンジャッシュ・児嶋一哉のオファーで千葉テレビ『白黒アンジャッシュ』に破格のギャラで出演したりと、“人”とのつながりを大切にするエピソードが数しれず、今回の成立経緯にもその人柄が表れている。

再始動が決まり、22年12月、参宮橋金曜サークルの面々が20年以上ぶりに中華料理屋に集まった。さんまが希望したのは、刑事役。それを受け、君塚氏が2週間後にプロット(ストーリーの筋)を出し、打ち合わせを重ねて23年6月に第一稿の台本が上がった。そこからワンショット出演も含めてキャスティングが進み、その当て書きも入れていくなど直し作業を進め、決定稿は同年9月に完成した。シーン数は、実に128に上る。

クランクインは翌月の10月22日で、全体のクランクアップは11月29日だったが、今年に入り4月11日深夜の『ナインティナインのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)の生放送での撮影をもって、さんまのクランクアップとなった。

  • 『ナインティナインのオールナイトニッポン』生放送でクランクアップ (C)フジテレビ

FINALは「ある種、さんまさんのドキュメントドラマ」

今回は『FINAL』ということで、「ある種、さんまさんのドキュメントドラマでもあるんです」という三宅氏。さんまの役は、妻(吉田羊)と離婚して一人娘(川口春奈)がおり、今でも家族の仲は良好という点で、現実と重なる。そして、娘の「和来(わく)」という名前は、さんまが実際にIMALUの次の子が生まれたら付けようと考えていたものだったそうで、「その理由は、川口さんが“なんで私に和来って付けたの?”と聞くシーンで明かされます」と予告する。

ほかにも、川口の「なんで離婚したのに仲良さそうなの?」というセリフがあるが、それに対する返答のセリフは、三宅氏いわく「僕がさんまさんに“なんで(大竹)しのぶさんと別れたんですか?”と冗談で聞いたときに、さんまさんが言ったことが台本になっています」とのことだ。

  • 川口春奈(左)と明石家さんま (C)フジテレビ

そして、現実の元妻・大竹しのぶも出演し、さんまと2人のシーンが登場。この場面については、「ドラマの中なんだけど、おふたりが実生活の部分についてもお話しするドキュメントになっていて、そのやり取りは見事でしたね。2人が出会った『男女7人(夏/秋物語)』(TBS)での掛け合いを彷彿とさせる感じで、撮ってて思わず鳥肌が立ちました」と印象に残るシーンになった。

  • 大竹しのぶ(左)と明石家さんま (C)フジテレビ