バカリズムに、オークラ脚本の“らしさ”を聞いてみると、「コントでもそうなんですが、必ず何か言いたいことがあるというのを感じます。僕の場合は特に何も言いたいこともなく、お笑いだけで考えるんですけど、スタートの段階で“こういうことを言いたい”というのが、ちゃんと明確にある人だというのは、コントを見てるときから思いますね」と分析。

今作では、森野とミコのやり取りや、最後にミコが犯人に語りかけるセリフに、その思いが込められており、第1話でミコは、トリンドル玲奈演じる熱波師の犯人に「もがき続けたら絶対にリスタートできるはず」と言葉をかけていた。

この分析を受け、オークラ氏は「バカリズムはコントのときから、1個のルールを作って、その中でうまく笑いを作っていくというのが天才的で、初めて見たときから衝撃を受けたんです。僕はそれが大好きだったんですけど、ある時期にこの路線では勝てないと思って、そこから(放送)作家になった時に、やっぱりメッセージ性や、人間のキャラクターを描くことを重点的に考えて、そこにどうお笑いを絡めていくかというのを意識するようになりました。だから、バカリズムにはちょっと妬みもあって(笑)、そこからだんだん自分の中でもすみ分けができるようになって、楽しくなってきたんです」と明かす。

芸人と放送作家の脚本の違い

バカリズムがもう1つ挙げるオークラ脚本“らしさ”は、時代性。「これは僕が芸人で、オークラさんが作家だからという違いもあると思うんですけど、僕はコントを作って、それこそ何年後に見せることも想定して作るんで、基本的にその時代のものをあまり入れないんです。でもオークラさんはトレンドを入れますよね。今回だったらサウナだったり、流行りものや時代を象徴するものが必ず入ってくる」と気づいたという。

オークラ氏は「確かにテレビの作家をやってると、その時代時代にお客さんが触れているものというのは、ちょっと意識していますね」と認め、「犯人役の職業(※サウナ熱波師、コンビインフルエンサー、二世議員、パティシエ、法廷画家など)もそうだし、今っぽい理由とか、今っぽいプライドみたいなものも時代によって変わってくると思うんです」と捉えているそうだ。

そのため、最新のカルチャーをインプットする必要があるものの、オークラ氏は「ちゃんと若い子としゃべらなきゃいけないなと思うんですけど、今って若い子と積極的にしゃべりに行くと、時代的にあんまり良くないんで悩ましいところではあります(笑)。そこは本当に毎回苦労しますね。相当信頼のおける人にしかしゃべってくれないと思うので」と打ち明け、バカリズムも「若い人の砕けたしゃべり方知りたいけど、向こうからしたらキモいだけですからね(笑)」と同情した。