開設のタイミングは、2022年大みそかの『紅白歌合戦』のタイミングを狙った。花火を打ち上げるべく「放送前」「放送中」「放送後」に大量の動画コンテンツを制作し、その数は200本以上に及んだ。そして、昨年末の2023年『紅白歌合戦』では130本以上のショート動画に、ライブカット動画をはじめとした125本以上の関連動画、さらには出場歌手発表会見のライブ配信など、全部でYouTubeコンテンツの数は約260本にのぼった。
放送中に映像編集を行い、アーティストが歌唱を終えたわずか20分後に、ライブカット動画が公式YouTubeにアップされていくスピード感にこだわる。放送中に「けん玉チャレンジ」の失敗までもがSNSで大きな話題になる『紅白』ゆえ、動画制作には速さが求められるからだ。
「瞬間的に次々と動画をアップするような勢いが大事。SNS上でアーティストのパフォーマンス動画が話題になり、それをきっかけに、テレビで『紅白』を見に来てもらいたいと思っていたので、スピード感を特に重視しました。生放送中の映像制作現場はてんやわんやです」と打ち明ける。
閉鎖感からの脱却も図る。「舞台裏もオープンにするような意識を持って、コンテンツにできそうなものは全て視聴者にシェアしたい。『紅白』をいろいろな角度で切り取ると、そこにはドラマがあるのです」。
458ページに及ぶ台本の印刷工場や裏方スタッフのヒューマンストーリーまで、様々な角度から取り上げられた数多くの『紅白歌合戦』コンテンツが、「NHK MUSIC」YouTubeチャンネルで作られているというわけだ。『紅白』という長い歴史と伝統を持つコンテンツを、とことん味わい尽くしてもらいたいという思いがある。
YOASOBI「アイドル」へのアクセスは海外が25%
『紅白』がけん引力となりながら、開始から約1年半を経た今、「NHK MUSIC」の登録者数は37.9万人を超え、累計再生回数は2億5,000万回以上にのぼる。
これまでどんなコンテンツが人気を集めたかというと、歴代最高の数字をたたき出したのは、2023年『紅白歌合戦』のYOASOBI「アイドル」のライブカット動画。1,128万回再生を記録した。
続く2位は『Venue101』の“踊ってみた”ダンス企画「ビートDEトーヒ」生田絵梨花とガウル(IVE)版の1,011 万回再生。3位も「ビートDEトーヒ」からで、かまいたち濱家と影山優佳(当時・日向坂46)版の876万回再生。4位は2023年『紅白歌合戦』の Ado「唱」ライブカット動画で657万回再生。5位は「ビートDEトーヒ」からで、TWICEのユニットMISAMO版の455万回再生という順である。2023年の『紅白』と「ビートDEトーヒ」に人気が集中しているのは一目瞭然だ。
また、「NHK MUSIC」は海外の音楽ファンが日本のアーティストを知ることができる受け皿にもなっている。YOASOBI「アイドル」のステージは1,128万回再生のうち、約25%がアジアを中心にした海外からのアクセスで占めたという。