海外のテレビ制作者が、愛媛を紹介する約2分の動画を作るという斬新なコンセプトの特番『海外クルーを呼んでみた。』が、南海放送・日本テレビ系で27日(15:00~)に放送される。このムチャぶりを快諾してフィンランドから来日したのは、近年注目を集める“北欧ミステリー”を手がけるリク・スオカス監督だ。
監督・脚本を担当するサスペンス犯罪ドラマ『Lakeside Murders(湖畔殺人事件)』はシーズン4まで制作中の人気シリーズで、海外セールスも好調。時には自身も俳優として作品に出演し、スタンドアップ・コメディアンとしてテレビ出演もこなすなどマルチな才能を発揮する、いわば“フィンランドの北野武”といった存在だが、彼の目に愛媛はどう映ったのか。日本との番組制作スタイルの違いやフィンランドのメディア事情なども含め、話を聞いた――。
制限はクリエイティビティをかき立てる
ドラマ監督が本業なだけに、「北欧ミステリーはおぞましく怖く描くので、町を魅力的に紹介するのとは真逆です。だから、どうして私にオファーが来たんだろうと思いました」というが、「企画としてすごく興味がわいたので、楽しそうだと思いました」と、今回の仕事を引き受けたリク監督。
日本に来るのはこれが初めてで、愛媛という地名も聞いたことがなかったといい、「東京は近代的な都市でも、地方に行くと古い建物ばかりで寂れているんじゃないかと勝手に思っていたんですが、実施に訪れてみるととても町並みがきれいで、モダンで、むしろフィンランドの大きな町と同じような感じでした」と印象を語る。
ストーリーに基づいてシーンに合ったロケ地を選定していくドラマと違い、愛媛のスポットを次々に訪れ、“2分のストーリー”をどう紡いでいくかを考えていく作業に、「いつもと逆のパターンで頭を働かせなきゃいけないのが、大変でした」と苦心。
また、「限られた時間の中で限られた場所を回って作るという制限がありました」とも振り返るが、「ドラマ制作でも場所や時間、予算の制限はついてくるものです。そうした制限の中でどう工夫しようかというところでクリエイティビティをかき立てられるので、制限があることは必ずしも悪いことじゃなくて、今回はそれをすごく楽しめました」といい、普段とジャンルは違えど、制作者としてのマインドは変わらず生かせたようだ。
忘れられないしまなみ海道「想像以上の景色」
訪れたロケ地で印象深い場所を聞くと、「目を閉じて愛媛の旅を思い出すと、真っ先に思い浮かぶのは自転車で走った、しまなみ海道です。フィンランドでは絶対に見られない、すごく美しい光景で、ずっと思い出せるような想像以上の景色でした」と回想。
ほかにも、「フィンランドには温泉がないのですが、室内に整備された温泉に入れるというのが印象的です。同じ施設にサウナもあって、これは日本の素晴らしいところですね」と称賛した。
そんな愛媛は、北欧ミステリーのロケーションにもマッチすると評価。「海や島を感じられるしまなみ海道や、山や森のきれいな自然の風景だけでなく、タオルや船を作る工業地帯、倉庫が並ぶようなところもあって、こういう場所は北欧ミステリーのロケ地として重宝されます。それらがちょっとした移動で両方撮れるのは、ロケ場所としてとても優秀だと感じたので、機会があればまた撮影に来たいです」と意欲を示した。