リアルタイム配信は、現状テレビデバイスでは視聴できないが、最近は地上波などのテレビ放送を受信しないチューナーレステレビが相次いで販売されている。それに対して、「CTV(コネクテッドTV)でもリアルタイム配信が見られる状態というのは、もしかしたら先々にはあるのかもしれないですが、まずは今ある見逃し配信などVODのコンテンツやライブ配信をとにかく見てもらえるように注力しているところです」という状況。

一方で、バレーボールのワールドカップが開催された際、地上波で放送されない海外代表の試合や、男子日本代表の強化試合をテレビ向けにもライブ配信したところ、「非常に反応が良かったです。CTVだと長く見てもらえる傾向もあります」という結果が出た。スポーツ中継は、スマホよりも大きな画面で観戦する需要があると考えられ、今後の対応の動きに注目したい。

さらに、総務省の検討会でNHKの同様のサービスである「NHKプラス」との統合を求める意見が出たり、Hulu、TELASA、U-NEXT、FODと、各局それぞれで運営されている有料動画配信サービス統合の受け皿としてTVerが期待される声もあるが、「まずは“無料”というサービスを打ち出して、それをとにかく大きくしていくということに力を入れていきたいと思います」と、現状の姿勢を説明している。

ライバル局から出向「面白い座組」

TBS出身の薄井氏をはじめ、民放各局から出向者が集まるTVer。業界団体ではなく営利企業で、ライバル企業の社員が一緒に仕事をするのは珍しいケースだが、この座組を「面白いなと感じます」という。

「例えばTBSしか映らないテレビって誰も買わないじゃないですか。テレビの画面にNHKを含め6局が映るということで、テレビというのは元々こうやって一緒にやるプラットフォームの感覚があったのではないかと思うんです。だからこそ、テレビ業界全体としての話をみんなで会話できる環境があります」

社員のうち、テレビ局からの出向者は40人程度。一方で、中途入社で月に十数人入ることもあるほど積極的に採用しているため、テレビ局出身者の割合は低下し続けている。「局からの出向者が集まっているだけでなく、いろんなバックグラウンドの方がいることで、多様性がすごくあります」といい、そこからユーザー・視聴者の視点を取り入れやすいメリットもあるようだ。

●薄井大郎
2006年にTBSテレビ入社。営業局スポット営業部、報道局社会部、編成局編成部を経て、22年にTVerに出向。取締役サービス事業本部長を務める。