――創建350年の錦帯橋というロケーションでの撮影はいかがでしたか?

千之助:今回の作品で錦帯橋を初めて知り、撮影の前に写真で拝見していたのですが、実物を見たときのダイナミックさに圧倒されました。過去に壊れてしまい修復されてきたという歴史も事前に調べていましたが、実際に現地に行って、本当に長い年月にわたり愛されてきた場所なのだと実感しました。作中でこの橋がどう映り、その上で自分たちの芝居がどう生きるのか、完成形がどうなるかはまだ分からないですが、ここでやる意味や意義が見える作品になればと思います。

北:錦帯橋と言えば一度は行ってみたいと思っていたので、まさか作品で来られるなんて、とてもうれしい気持ちです。これだけ大きな橋を間近に見て、そこでお芝居をするのは初めての体験です。長丁場の撮影でしたが、スタッフの皆さん、千之助さん、ロケーションの支えのおかげで、あっという間に時間が過ぎていきました。貴重な場所で撮影させていただいて気持ちが良かったです。

――橋の上でお芝居するというのは、やっぱり違いますか?

北:気持ちがすごく晴れやかになりますね。露天風呂に入ると風が気持ちいいじゃないですか。あの感じがあって、リラクゼーションのようでした。すごく泣くお芝居があっても、そのシーンが終わって橋の上から周りを見渡せば、目に入ってくるものすべてが新鮮で、気持ちが切り替わりました。

――橋がかかるのは清流と言われる錦川です。

北:高いところがすごく好きで、あの高さから水が流れているのが見られるのも心の癒やしでした。

千之助:水の流れが岩場によって様々で美しくて、またそこに魚が集まってくるから、セッティングの合間に見ていましたね。夜はライティングもすごくて、それがまたきれいだねとみんなで話していました。

大ファンの祖父が「泣いちゃうんじゃないですかね(笑)」

――藤沢周平さんの原作はとても人気で長く愛されている作品ですが、台本を読んでどんな感想を持ちましたか?

千之助:杉田監督と初めてお会いしたときに、この作品の意味や藤沢先生がどういう人かというお話を聞かせていただきました。時代ものながらどこか現代的で、人の感情や心の動きが繊細ながら鮮明に入ってきやすい作品だなというのが、まず印象的でした。その上で、自分の体を通してどう表現するか、映像となったときにどう反映させるか、という難しさもありますね。それでも、こんな素晴らしい作品に携われて、幸助になれてうれしいです。

北:脚本を読んだときに、若い男女にしかない葛藤のようなものがエモーショナルで、美しいなと感じて、藤沢周平先生はやっぱりすごいなと思いました。それと、今回の作品が決まって祖父に会ったときに「『約束』にお蝶の役で出演するよ」と言ったら、『約束』の本を持ってきて、「香那、俺は藤沢周平先生が大好きなんだ! この本をあげるから大事に現場に持ってけ!」と言われて(笑)。 ますます撮影が楽しみになりましたし、光栄なことだと改めて感じました。

――完成したら真っ先にお祖父さんに見てもらいたいですね。

北:もう泣いちゃうんじゃないですかね(笑)。この作品で祖父孝行ができるかなと思いました。