腕に射撃盤を載せられる現代社会

ここまで、Tactix 7 AMOLEDがスマートウォッチとして特異な性格を持っていることを紹介してきたが、しかし、Tactix 7 AMOLEDをTactix 7 AMOLEDたらしめている特徴とは何か問われたら、「Applied Ballistics」に言及しないわけにはいかない。Applied BallisticsこそがTactix 7 AMOLEDの存在意義といってもいいだろう。

  • Tactix 7 AMOLEDの神髄ともいえる「Applied Ballistics」

Applied Ballisticsはライフル銃などによる長距離射撃において、その命中率を向上させるための支援機能だ(正しくはデジタルデバイスによる支援機能アプリを実現した開発組織の名称がApplied Ballistics)。

射撃は照準器の真ん中にターゲットの狙いを定めてドンッと撃てば命中する……モノではない。銃の特性や個体差、弾丸の形状や重さ、火薬の特性、そして射撃する場所の環境による影響を全て加味した上で「狙いを適切にずらす」ことでようやく命中する。

これらを反映した上で、「狙いを上下方向、左右方向のそれぞれでどれだけずらしたらいいのか」を計算してその結果を示してくれるのがApplied Ballisticsの目的だ。

  • 使用する銃と弾の特性、射撃時の位置と気象条件を加味して算出された照準修正量を表示する(Garmin FranceのYouTubeより)

撃った弾丸を命中させるために影響する要素は膨大な量になる。Applied Ballisticsでは銃や弾ごとの特性を収録したデータベースを構築しており、そのテーブルにアクセスして使用する銃器と弾、そして銃に備えた照準器を指定することで、データベースからネットワークを介して入力できる(その後、ユーザーがカスタマイズすることも可能)。

さらに、射撃する場所の風向風速に気温、気圧、湿度、さらには、緯度によって変わるコリオリ力の影響まで反映して照準の修正量を出力する。

その機能を軍艦に例えると「射撃盤を備えた射撃指揮装置」(FCS:射撃指揮装置もしくは射撃統制システム)に相当する。いわば、Tactix 7 AMOLEDを腕につけるということは、即ち「腕に射撃指揮装置を載せている」に等しいともいえる。

とはいえ。

軍人でもなく警官でもなく(いや軍人であっても警官であっても超遠距離狙撃を生業にする人はごくごく限られるが)競技ライフルをやるわけでもないごくごく普通の民間人の日常生活でTactix 7 AMOLEDは必要なのか。

ハードコンディションに余裕で耐えるTactix 7 AMOLEDの価値

ここまで読んで「うーん」と唸ったあなたに贈りたい言葉がある。それは、ちょっと前(とはいっても2018年ごろの話)にTwitterで流れた「戦闘力が求められる現代社会」だ。生ハムから端を発したこのネットミームは、“生ハム”をそれぞれが「いち推しなアレコレ」に変えることで拡散していった。

その文脈でいうならば、「Tactix 7 AMOLEDがあれば、ちょっと嫌なことがあっても“まあどんなに遠くても絶対狙撃できるしな”ってなるし、仕事でむかつく人に会っても“そんな口きいていいのか?私は腕に射撃指揮装置を巻いている身だぞ”ってなれる。戦闘力を求められる現代社会においてTactix 7 AMOLEDを所有することは有効」となる。そのとき、Tactix 7 AMOLEDの価値は「腕にはめたときの満足度がお値段以上」なブランド高級ウォッチと同等、といえるのではないだろうか。

もちろん、冒頭でも紹介したようにスポーツアクティビティやヘルスケア用の多彩な高機能アプリも、Tactix 7 AMOLEDの価値を高めてくれるのは言うまでもない。特に従来モデルからセンサーを増やした光学式心拍センサーの実装で、心拍数をカウントしてユーザーの状態を分析してくれるアクティビティアプリの信頼性は大きく向上したといえる。ハードコンディションにおける精度の高いコンデション把握は、ユーザーの安全を高いレベルで確保してくれる。

ハードコンディションで行動するユーザーの安全の確保。これこそがTactix 7 AMOLEDが持つ「お値段以上の価値」といえるだろう。