音がテーマの番組だけに、「音声の技術スタッフは、やっぱり他の番組より気合いが入るそうです。ちょっと意気込みが違うんですよ(笑)」と、プロの腕が鳴るのだそう。番組開始当初は特別なマイクを準備して録音していたが、最近は業務用ビデオカメラの性能が向上し、「普通に耳で聴こえる音なら、カメラが寄っていけば録れるんです」と、カメラマイクで録った音を使うこともあるという。

ただ、「生き物など簡単に近づいて録れないものもあり、ディレクターやカメラマンはいかにして近くに寄って録るかをいろいろ工夫しています」とのこと。小動物が木の実をかじる音を録るためにピンマイクを木の上に仕込むなど、試行錯誤を重ねている。

音声スタッフと同様に、ナレーションを担当するアナウンサーも、“音”に焦点を当てる番組ということで、「歴代の皆さん、すごく一生懸命やってくれています」と臨んでいる。声を吹き込むのは冒頭のわずか数秒だが、制作側からリテイクを要求することもあれば、本人が「今のはちょっとテンポが速すぎました」と言って録り直しを志願することもあるそうで、宮本氏は「ネタによっても微妙にトーンを変えているみたいです」と、彼女たちのこだわりを明かす。

  • ナレーションを担当する森富美アナウンサー (C)日テレ

音の調整をするMAミキサーにとっても、自らの腕を発揮できる番組。録音素材が非常に小さな音の場合、放送に乗せるためにボリュームを上げることになるが、上げすぎると余計なノイズが入ってきてしまう。そんなケースも含め、「ミキサーさんは『今日は難しいからね』と言いながら、腕の見せ所の回があるんです」とプロの仕事が行われているのだ。

正味2分弱という短い尺の中で、ラストカットにもこだわっている。

「最初に音の内容を紹介してから、いくつか展開があるのですが、最後には音に戻って、最初の雰囲気で余韻を残して終わるという作りにしています。いろんな見方をしてくれる人がいて、日曜日の夜にのんびりとした気持ちになる人もいれば、『明日からまた仕事か…』と憂鬱になる人もいるので、それぞれの思いに寄り添ってあげられればと思っていますね」

■ほとんど音がしない回に放送事故を危惧

1,000もの音を紹介してきたが、ネタ切れの心配はないと断言。「本当にいろんな音があって、尽きなくて面白いです。僕らがまだ気づいていない音もたくさんあるだろうし、“祭り”や“発酵”のように『こういう切り口もあるのか』というテーマが見つかるかもしれないので、楽しみです」と期待を寄せる。

さらに、今後は「逆に音がほとんどしないものも紹介できたらと思っています。奈良の薬師寺で、90人ぐらいで一斉に写経をする会があるそうなんですが、大人数がいるのにほとんど音がしない光景もきっと面白いと思うんですよ。墨をすったり、お経を読む音などと絡めて、静かに書いている“音”がうまく作れたらいいなと思います」と構想を語った。

音のほとんどしないネタは、「ギフチョウの羽化」(岐阜・岐阜市)、「サガリバナ」(沖縄・西表島)、「セサミストリート」(鹿児島・喜界島のゴマのはじける音)、「壺畑の不思議な音」(鹿児島・霧島市の黒酢の発酵の音)、「南大東島の地底湖」(沖縄・南大東島)など、過去にトライしたこともあったが、「納品したら、放送事故になると思われて、『これ音が入ってないですけど大丈夫ですか?』と言われたこともありました(笑)」とのことだ。

  • 「ギフチョウの羽化」

  • 「サガリバナ」

  • 「セサミストリート」

  • 「壺畑の不思議な音」

  • 「南大東島の地底湖」

  • (C)日テレ