4年ぶりの復活を果たし、『千鳥の鬼レンチャン』をメインに、千鳥、かまいたち、ダイアンという3組の総合司会で生放送されたフジテレビ系大型バラエティ特番『FNS27時間テレビ』(7月22~23日)。視聴率は全ての時間帯パートで、同局が重視するコア(13~49歳)に加え、個人全体、世帯が同時間帯横並びトップという好成績を残し、放送のみならず、TVer史上最長という27時間半にわたるリアルタイム配信でも、視聴人数などで断トツの実績になったという。

総合演出・プロデュースの武田誠司氏(フジテレビ)は、本番前に応じたマイナビニュースのインタビューで、「“真剣勝負の先に笑いがある”というキーワードもとに、ラインナップを決めていきました」と話していたが、それは狙い通りにいったのか。大仕事を終えた同氏が再びインタビューに応じ、今年の『FNS27時間テレビ』を振り返ってくれた。(第2回/全2回)

  • (左から)『FNS27時間テレビ』総合司会のかまいたち、千鳥、ダイアン (C)フジテレビ

    (左から)『FNS27時間テレビ』総合司会のかまいたち、千鳥、ダイアン (C)フジテレビ

■大悟「写真見たらヤバいと思って…」

――今回大活躍だったほいけんたさんと並んで縦軸で活躍されていたのが、オープニングから随所に登場し、グランドフィナーレでは「時代」を熱唱された、ダイアンの津田(篤宏)さんのお母さん、津田きみ子さんでした。こちらはどのように出演が決まっていったのでしょうか?

『鬼レンチャン』のレギュラー回で、「サビだけカラオケ」に挑戦される津田さんの応援で一度出ていただいて、面白い方だなあと思っていました。一方で、今回の構成を作るに当たって『27時間テレビ』の過去作品を全て見たんですが、僕がずっとお世話になってる明石家さんまさんが総合司会をされた2008年のフィナーレの「笑顔のまんま」がやはり最高で。27時間を走り切ったMCや視聴者の方にメッセージを届けるには、歌は欠かせないなと思い、そこで白羽の矢を立てたのが津田さんのお母様でした。今回のMC6人は、インディーズから一緒にはい上がってきた3組で、売れない時代に息子を思いやる母の気持ちが当然あったと思うので。お母様にフィナーレで歌っていただくことが決定してから、前振りを考えていった感じですね。

オープニング、『めざましテレビ』、『FNS鬼レンチャン歌謡祭』、『大縄レンチャン』の観覧は早めに決めて、『イタズラジャーニー』は当初出演予定がなかったんですが、演出の池田(哲也)から「番組上、手前から引っ張れるものありますか?」と聞かれたので、「津田さんのお母さんいるよ」と。結果、主役級の活躍でしたね。津田さんがお母様に発した「長生きしてな」は、あの番組とは思えないハートフルなシーンでした。

――このオファーにはノリノリで参加してくださった感じですか?

ノリノリです。「歌える場所を探していました」と(笑)。ただ、お母様は中島みゆきさんの「時代」を全くご存じなかったので、ちょっと焦りましたね。本番までの約2カ月、猛練習してくださって、“知られざる挑戦”が裏にあったんです。お母様専属のディレクターを1人付けて、ボイストレーニングもやってもらって。結果、本番では臆することなく歌い上げてくださって最高でした。

79歳というご高齢なので体力的にも大変だったと思いますが、「息子の大舞台のために」という“母の気持ち”が奮い立たせたんだろうなと。まさに陰の立役者でした。

――歌い終えると、津田母子が涙されていました。

おかげさまで素敵な画が撮れました。フィナーレではMC6人に一度、感傷的な気持ちになってもらいたかったので、お母様には感謝しかありません。

――まさに狙い通りといった感じでしょうか。

baseよしもとで苦楽を共にしてきたMC6人が『27時間テレビ』の総合司会にまで登りつめた物語、そして27時間を走り切った勇姿をフィナーレで表現したいとずっと思っていて、お母様が歌っているときに、baseよしもと時代の写真を重ねることにしました。写真について、大悟さんとノブさんに個別に相談したところ、「自分たちだけじゃなくてbaseよしもとの仲間たちも入れてほしい」とお二人ともおっしゃって、つくづく情に厚い方々だなと。

ただ、誤算もありました。当時の写真があまり残っていない中、登内(翼斗)Dが頑張って素晴らしいVTRを作ってくれたので、「この映像をフィナーレで見たらMC全員泣くかも」と少し期待してたんです。実は、フィナーレのステージからは、写真が流れるOAモニターと、お母様が見る「時代」のカラオケモニターがあって。大悟さんに後で聞いたら、「写真見たらヤバいと思って、カラオケモニターをずっと見てた」と。「せっかく作ったんだからちゃんと見てくださいよ」ってさすがに言いましたけど。

■唐沢PとNHKの懐の深さで実現したコラボ

――ロバートの秋山竜次さん扮する“総合プロデューサー”の唐沢佐吉さん(※1)も、要所要所で登場されました。

伝説のTVプロデューサー・唐沢佐吉 (C)クリエイターズ・ファイル

唐沢プロデューサーはとても重要な役割を務めてくださいました。彼の存在なしではやれないことが多かっただろうなと思います。今回の『27時間テレビ』は、僕の中で「世代交代」というのが1つのテーマだったんですが、コンセプトである「楽しいを塗りかえろ」というフレーズを誰の口から言い出せばいいのかと。僕ら制作者が言うわけにはいかないし、MC6人は絶対自ら口にしないので、視聴者が見てる上では、さも唐沢プロデューサーが言い出してるように感じてくれたらいいなと思いました。

フィナーレで津田さんのお母様が歌うきっかけを作ってくれたのもそうです。アナウンサーが「歌いましょう」と言い出すとどこか押し付けがましいので、唐沢プロデューサーという代弁者がいてくれたからこそ、『27時間テレビ』の構成を作れました。

――NHKとのコラボ(※2)も、きっかけを作ったのは唐沢プロデューサーでしたね。

生田絵梨花さんをNHK(フジテレビ本社V4スタジオ)から『チームDEファイト』のスタジオ(同V2スタジオ)に誰が連れて行くのか。それはスタッフでもなくて、生田さんが自分から行くのも性分に合ってないだろうなと。そこで、唐沢プロデューサーがいたからこそ、そしてNHKさんの懐の広さがあったからこそ、“バラエティのノリ”の中で生コラボを実現することができました。唐沢プロデューサーブロックを27時間通して演出してくれた名城ラリータDにも感謝感謝です。