――今回の『27時間テレビ』の企画書に「真剣勝負の先に笑いがある」という言葉を入れたということでしたが、『大縄レンチャン』(※6)で最後、脚が動かなくなった和田まんじゅうさん(ネルソンズ)を、敵チームのメンバーも参加して抱えながら跳ぼうとするのは、もう最高でした(笑)。あれは、全く予想外の出来事でしたか?
全く予想外です。完全に現場のノリです。14名の大縄芸人さんと、千鳥さん、かまいたちさん、ユースケさん(影ナレ)が大縄跳びという超シンプルな競技の中でゼロからストーリーを作っていく、まさに即興劇です。
本来彼らに課されてるのは、相手チームよりも1回でも多く跳ぶことだけです。過去2回のレギュラー放送では、負傷した和田まんじゅうさんを同じチームのメンバーが抱えながら跳ばせてたんですけど、今回は力が足りないという理由でなぜか敵チームのティモンディさんが呼ばれるという。僕はD卓に座りながら「もう何の勝負でもないだろ」ってツッコみながらただただ笑ってました。
しかも、いつの間にか皆さんパンツ一丁になられて。27時間を通してあのときだけですね、バラエティ制作の上層部が血相を変えてサブに注意喚起しに来たのは。「絶対に脱がすなよ」と。
――見てる側は「ヘルメットかぶって逆さにして跳ぶなんて、絶対無理だろ!」と思うんですけど、あの場に立って真剣に競技に向き合って、考えに考え抜いた結果、人間は思いもよらない行動に出るんだなと思いました。あのとき誰一人笑ってないのが、すごいですよね。
笑いを取りにいってるんじゃなくて、「和田まんじゅうを跳ばすんだ」という純粋な思いなんですよね。小島よしおさんの「僕もうしゃべらないんで、ピンマイク外します」という発言は最高でした。生放送での芸人さんのパワーというのは、つくづく素晴らしいなと。
――その上、新記録が連発するという、競技としてもすごい展開でした。
今回の『27時間テレビ』の中で『100kmサバイバルマラソン』の次に読めなかったのが『大縄レンチャン』でしたね。千鳥さん、かまいたちさんが一番楽しみにされてた企画なので尺もたっぷり取ってましたが、全然跳べずに凡戦になったらどうするのかなと。ただ、これまでのレギュラー放送でまさに“奇跡”が起こっていたので、「芸人さんの力で何とかしてくれるはず」と楽観的に構えてました。正直、演出失格です。
そんな中、26時間走り続けた津田(篤宏)さん(かまいたち軍)が番組記録を更新したときは、ちょっと感動を覚えましたね。この大縄跳びこそが、MC陣が『27時間テレビ』でやりたかった企画なので、大きな反響を頂いてうれしい限りです。
――台本にない出来事で言うと、『有吉ダマせたら10万円』で、大悟さんが球速150kmの球をキャッチできたときに、有吉(弘行)さんが自分にもできそうだと言って急きょ挑戦するというのも、全く予想してなかった展開でしたか?
予想してませんでした。芸人さんって、同じ空間を共有してる人たちは仲間であり同志なんですけど、どこかライバルでもあって。時間が限られた生放送という緊張感の中で、芸人さんと芸人さんの真剣勝負があったんだろうなと思いました。
■『耐久フィナーレ漫才』舞台袖で見せた「戦いに行く前の男の姿」
――それまでの生放送で起こった出来事をネタに盛り込んだ『耐久フィナーレ漫才』なのですが、あれはいつ、どのように作っていたのですか? やはり作家さんが手伝っていたのでしょうか。
いや、作家さんは全く入ってないです。僕ら制作陣はあの舞台を用意しただけです。どの持ちネタをやるのか、『27時間テレビ』のエピソードをどう入れ込むかはそれぞれのコンビ次第で。26時間の記憶を掘り起こす材料として、舞台袖にこれまでの出来事や名シーンを書いたホワイトボードを用意しましたが、それがどこまで生かされたかは分かりません。
サブでは全てのカメラの映像が流れているので、舞台袖でコンビ同士真剣にネタ打ちをされてる様子が映っていて新鮮でしたし、めちゃくちゃカッコ良かったです。まさに戦いに行く前の男の姿でした。
――改めてプロの技を見たという感じですね。
プロですよね。1組何分やるかも何も決まってなくて、26時間ずっと走ってきて疲労困ぱいの中でのあの素晴らしい漫才ですから。baseよしもとから何万回もの舞台に立たれた経験が成した技だと思います。本当に圧巻でした。
(※1)…FNS27局の代表が生中継でスゴ技に挑戦し、“技の成功”をついで27レンチャンを目指すオープニング企画
(※2)…ロバート・秋山竜次が扮するアジアの大スターが挑戦した
(※3)…T.M.Revolution の「HIGH PRESSURE」で「♪カラダが~」を「♪カラダぐぅ」と聴こえるクセ強な歌唱で人気になった、明石家さんまモノマネ芸人・ほいけんたが、今回は布施明の「君は薔薇より美しい」で「♪変わった~」を「♪くるっくぅ」と歌った
(※4)…グランドフィナーレ前に総合司会の3組が、自分たちのネタに『27時間テレビ』のエピソードを入れ込みながら、約1時間にわたり代わる代わる漫才を披露する企画
(※5)…「サビだけカラオケ」で、Mr.シャチホコが披露した木山ものまねの完成度の高さで「木山より木山」と呼ばれるようになったことから、木山本人がシャチホコに挑むも敗北し、名前を剥奪されて「細シャ(=細いMr.シャチホコ)」に。その後、歌唱中にしゃがんで画面に出たり入ったりする様子を魚釣りに例えられ、「細魚」に改名。同番組の収録でフジテレビに来ても、受付で「細魚」と名乗らなければ入館できない状況になっている
(※6)…千鳥軍vsかまいたち軍(7人1チーム)が大縄跳びの連続跳び数で勝負する企画
●武田誠司
1977年生まれ、福岡県出身。01年フジテレビに入社し、『トリビアの泉 ~素晴らしきムダ知識~』ではADを担当しながらVTRにたびたび登場。これまで立ち上げた番組は、『ホンマでっか!?TV』『ペケ×ポン』『千鳥の鬼レンチャン』『芸能界特技王決定戦 TEPPEN』 『さんまの東大方程式』『有吉ダマせたら10万円』『イタズラジャーニー』など。現在は『千鳥の鬼レンチャン』の総合演出・プロデュース、『ホンマでっか!?TV』のチーフプロデューサーなどを務める。