4年ぶりの復活を果たし、『千鳥の鬼レンチャン』をメインに、千鳥、かまいたち、ダイアンという3組の総合司会で生放送されたフジテレビ系大型バラエティ特番『FNS27時間テレビ』(7月22~23日)。視聴率は全ての時間帯パートで、同局が重視するコア(13~49歳)に加え、個人全体、世帯が同時間帯横並びトップという好成績を残し、放送のみならず、TVer史上最長という27時間半にわたるリアルタイム配信でも、視聴人数などで断トツの実績になったという。
総合演出・プロデュースの武田誠司氏(フジテレビ)は、本番前に応じたマイナビニュースのインタビューで、「“真剣勝負の先に笑いがある”というキーワードもとに、ラインナップを決めていきました」と話していたが、それは狙い通りにいったのか。大仕事を終えた同氏が再びインタビューに応じ、今年の『FNS27時間テレビ』を振り返ってくれた。(第1回/全2回)
■オープニングでまさかの失敗「現場のノリが一気に作れた」
――1年にわたる準備、そして27時間という長丁場の生放送、改めましておつかれさまでした。今回はSNSでの評判も良く、視聴率でもコアを中心に良い結果が出ましたが、総論として、今回の『27時間テレビ』は“成功”と捉えていらっしゃいますでしょうか?
最初から最後まで27時間をMC6人の笑いで包むことができたので、その時点で大成功だと思っています。初めての総合司会ということで、「最後まで体力が持つのか」「声は出るのか」「フィナーレ漫才のときに頭は回るのか」と不安もあったと思うんです。そんな中、見事に走り切った6人には感謝しかありません。コア視聴率、世間の皆様からの評判、社内の喜び含めてこんなに良い反響を頂けたのは、あの6人でしか生み出せない“面白さ”が番組を通してずっとあったからだと思います。
――オープニングの『FNSスゴ技鬼レンチャン』(※1)で、トップバッターの東海テレビがいきなり失敗して、スタジオがどっと盛り上がる雰囲気に、「ああ、27時間テレビが帰ってきたな」と感じました。あのとき武田さんはどんな心境でしたか?
僕はサブ(=副調整室)のディレクター卓に座ってて、「マジか!」って思いました(笑)。東海テレビさんの弓矢の子がすごく見応えがあって事前の成功率も高かったので、トップバッターに置かせてもらったんです。そしたらまさかの失敗で。ただ、結果的には最高のスタートになりました。演者の皆さんが「もう1回! もう1回!」って盛り上げてくれて見事にリベンジしたあの場面は、とても生放送らしくて現場のノリが一気に作れたなと思います。彼女が失敗してもヘコむことなく笑顔でいてくれたのも助かりました。
――頭であの空気が作れたのは大きかったですよね。そんな流れを受けて、『千鳥の鬼レンチャン ~サビだけカラオケ タッグモード大会~』に入りました。事前のインタビューで、カラオケはVTR収録でいつも通りの形でいくと話していましたが、その狙いはうまくいったでしょうか。
VTRだからこそ『千鳥の鬼レンチャン』のいつもの質を保てました。千鳥さん、かまいたちさんの生トークやペリー・キー中継(※2)など、VTRと生のバランスが良かったなと。VTRの音とワイプしゃべりの音声バランスが一番心配でしたが、そこも上手くいったと思います。これは、5月31日の深夜に生放送枠を編成からもらってテストしていたのが大きかったです。本番中は廊下に民生機のテレビを置いて、サブのD卓と廊下を行き来しながら、視聴者の方がどれくらい聴こえているかチェックしてました。
■『FNS歌謡祭』スタッフから“ほいけんた×アイドル”を提案
――そして、今回の『27時間テレビ』でキーマンになると予告されていた、ほいけんたさんが、また名フレーズ「くるっくぅ」(※3)を生み出しました。
VTRチェックの段階で僕も思わず笑ってしまったので、あそこは演者さんも反応するだろうなと。ほいけんたさんは、あれを“やりにいってる”のではなく、ただただ音程を当てるためだけの「くるっくぅ」なので面白いんですよね。
――大舞台で、こういうフレーズを生み出すのはすごいですよね。
実は、ほいけんたさんは、営業とか「カラダぐぅ」のYouTube撮影とかでお忙しかったので、登場するのは今年1月の放送以来だったんです。『27時間テレビ』という大舞台で新しいワードが生み出すのはさすがだな思いましたし、次の矢を放てたのは、レギュラー番組にとってもすごく良かったです。
――ほいさんはその後も、『FNS鬼レンチャン歌謡祭』『ドッキリGP』『サザエさん』にも登場されて、『耐久フィナーレ漫才』(※4)で何回もほいさんの名前が出てくるほどの大活躍でした。
『鬼レンチャン歌謡祭』は、『鬼レンチャン』歌手の皆さんと、本家『FNS歌謡祭』に出られてる皆さんとのコラボということで、“どう違和感を出すか”がテーマでした。今回プロデュースをされた大悟さんとの打ち合わせで、浜崎(綾)ディレクターがほいけんたさんとアイドル(モーニング娘’23、AKB48、ももいろクローバーZ)のコラボを提案してくれたんです。僕はカット割りとか全然わからないので浜崎に任せっぱなしだったのですが、『FNS歌謡祭』には若干似つかわしくない歌手でも“本家”がちゃんと撮ることでテレビのコンテンツになるんだなと、いろいろ勉強させてもらいました。
『サザエさん』は作品づくりにかなり時間がかかるので、2月頭にMC以外のキャスティングを決めなきゃいけなくて。「サザエさんに何でこの人が出てんの?」という違和感の筆頭がほいけんたさんだったので、お願いしました。劇中でいきなり「♪カラダぐぅ」と歌い出すのは、おそらく『サザエさん』の制作ルールからは外れていて、長年の歴史の中でもあり得ないことだと思うので、(制作会社)エイケンさんの遊び心には本当に感謝ですね。
――27時間通して、CM入りの曲も「♪カラダぐぅ」を生んだ「HIGH PRESSURE」を使われていました。
CM入りの曲は27時間全体のテーマ曲みたいになるので、正直悩みましたね。“真剣勝負”というキーワードから音効さんにもいろいろ案を出してもらいましたが、選択する理由が自分の中でなかなか見つからなくて。正直、全体の筋を通す意味でも「HIGH PRESSURE」以外ありませんでしたが、最終的には本部スタッフのディレクターやADの意見に後押しされる形で決めました。