日本プロサッカー選手会(JPFA)が新設した「JPFAアワード」で、初代MVPに選出された今年1月。三笘はビデオメッセージを通じて、プロを夢見る子どもたちへ金言を授けている。
「僕自身、ドリブルという武器でどんな場所へ行っても、自信を持って相手に立ち向かえました。そういった武器を持つことが最後、自分を信じる力につながります」
大学時代にさまざまな角度から研究し、絶対的な武器に昇華させたドリブルで世界最高峰のプレミアリーグを席巻した。自らがかつてロナウドに憧れたように、ブライトンで見せた勇姿が子どもたちに憧憬の思いを抱かせる。代表練習中は常に「ミトマー!」と最も大きな声援が飛んだ。
カタール大会を戦った代表選手を中心に合い言葉が生まれている。それは「日本サッカー界全体で、いまの熱を途絶えさせてはいけない」――。森保ジャパンの「7番」を自分の色に染め上げ、その効果として子どもたちが競って「7」をつけてボールを追う光景は、日本の未来へと繋がっていく。
ペルー戦後には三笘の市場価値が、日本人選手で最高額となる3200万ユーロ(約50億円)に達したとドイツメディアが報じた。ユニオン・サンジロワーズ(ベルギー)への期限付き移籍から復帰し、プレミアリーグでデビューした昨年9月は300万ユーロ(約4億7000万円)だった。
つまり自身のパフォーマンスを介して、わずか9カ月で市場価値を10倍以上に跳ね上げさせた。これもカタール大会後に激変した状況のひとつ。しかし、三笘は冷静に自分の足元を見つめる。
「クラブでも最後の方は結果を出せなかった。メンタル的な部分が強ければ強いほど結果が出ている印象があるので、そういうハングリー精神を常に持っていきたい。毎試合のように結果を出せる選手がいい選手だと思うので、オフの間にしっかりと見つめ直していきたい」
三笘が振り返るように、プレミアリーグでは4月1日のブレントフォード戦で決めた7ゴール目を最後に、12試合続けて無得点で終えた。出る杭は打たれる、とばかりに対戦相手に対策を練られ、さらに未消化だった試合が次々と組み込まれた後半戦の過密日程が心身両面を消耗させた。
クラブ史上最高の6位に食い込んだブライトンの新シーズンは、ヨーロッパのカップ戦もスケジュールのなかに加わってくる。代表戦ではドイツがリベンジをかけて臨んでくる9月の親善試合を経て、11月からは次回ワールドカップ出場がかかったアジア2次予選も幕を開ける。
だからこそ、立ち止まっている時間はない。ペルー戦を終えた瞬間からオフに入り、身心の充電にあてている三笘の視線は、さらに右肩上がりの成長曲線を描いていく自分の姿へ向けられている。