いよいよ最終章に突入するTBS系金曜ドラマ『ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と』(毎週金曜22:00~)で主演を務めている俳優・山田裕貴にインタビュー。自身が世の中に伝えたいメッセージが詰まった作品になったという本作をどのように作り上げてきたのか。本作に込めた思いや制作の裏話、赤楚衛二らとの共演の感想、さらに今後について話を聞いた。
都心へと向かう電車の一車両が未来の荒廃した世界にワープしてしまい、過酷なサバイバル生活を余儀なくされたカリスマ美容師・萱島直哉(山田)や消防士・白浜優斗(赤楚衛二)ら乗客たち。第8話で過去へ戻ることに成功するも、たどり着いたのは元いた2023年ではなく、地球環境が激変する半年ほど前の2026年5月の東京だった。直哉らは半年後に起こる最悪の出来事を食い止め、地球を救うことはできるのか。
ゴールデンプライム(GP)帯の民放連続ドラマでの主演は今回が初めてとなった山田は「世界を変えられるとは思っていませんが、多くの人に見てもらえる仕事をやっている以上、何か変わるんじゃないかという可能性は信じたい」と言い、このドラマは「そのメッセージ性をものすごく持っている作品だと思う」と語る。
企画段階から脚本の金子ありさ氏やプロデューサーたちと話し合いを重ね、その中で山田が発していた言葉もセリフに。
「『これ僕の思いだ』というものがたくさんありすぎて、作品自体が僕なのではないかと錯覚してしまうぐらい思いが詰まっています」
自身の思いが詰まった本作の撮影現場では、「細部に目を凝らす」ことを心がけてきたという。
「今の表情だと違うと思ったら伝えるとか。1個目線を動かすだけでも、1音声色が違うだけで受け取り方が変わるので、『芸術は細部に宿る』という言葉がありますが、そういうところを気にしました」
そして、「今まで、監督やプロデューサーさんに言われて時には『わかりました』と言われたままでやっていることもありましたが、今回は絶対折れなかったです」と語る山田。自分を押し殺して後悔したことがたくさんあり、「あの人が言ったから」と人のせいにしてしまう自分が嫌だから今回は折れなかった。
それだけ自分の思いが詰まった作品であり、作品に関わっているスタッフ・キャストへの並々ならぬ信頼があるからこそ遠慮することなく発言できているという。
「僕の集大成をここでぶつけるべきだ」と感じ、とことん話し合って作り上げてきた本作。「もちろん、素敵な表情やセリフをくれる相手あってこそです。自分のエゴを突き通すのではなく、『優斗がそうしてくれるんだったら僕はこうしたいのでマジでお願いします』みたいな、そういうキャッチボールの中での話です」と語った。
すべてのシーンに情熱を注いだ中でも、特に印象に残っているシーンはどこか。「全部一番いいシーンになれ!」と思っていたため一番は決めづらいと前置きした上で、第9話で直哉が「この世界は最低でクソみたいなところだよ」と話すシーンを挙げた。
「どれだけコミュニケーションをとったり、人のことを信じたいと思ったとしても、相手の価値観や感覚が固すぎて自分の思いが伝わらず苦しんだことがありました。だけど、そういう人も無視したくないと考えたときに、まずはその人の奥を見なきゃダメなんだと。そういうことが9話で描かれます」
そのシーンを撮っていたときに「泣きそうになった」と言い、「そんなシーンになると思ってなかったので、僕の魂がそうさせたのだと思います」と振り返る。
また、直哉について「少し前の僕のような人」だと言い、「僕の中で振り返っているみたいな感覚。こんなこと思っていたなということが多いです」と話した山田。何がきっかけとなって変わっていったのだろうか。
「直哉はきっと母親や弟など、人ばかり意識して生きてきた。僕も人のことしか気にしてなかったので自分の意思がないというか、誰かがそう思ってくれるならそれでいいという考えでしたが、わがままに生きようと。正直に生きようと思い始めてからですね」