Desktop向けのRadeon RX 7600が登場となった。7600という型番はMobile向けには今年1月のCESで発表されているが、Desktop向けにやっとこれが降りてきた格好だ。ということでスペック及びベンチマーク結果をご紹介したいと思う。

  • テストに用いた「Radeon RX 7600」。メインストリーム級のゲーミングデスクトップ向けに新登場した。注目はコストパフォーマンスだ

    テストに用いた「Radeon RX 7600」。メインストリーム級のゲーミングデスクトップ向けに新登場した。注目はコストパフォーマンスだ

まずRadeon RX 7600のポジショニングを明確にしておくと、2K(つまり1080p)に対応した、Gamingのメインストリーム向け製品ということになる(Photo01)。ただ異なるのはその価格だ。Radeon RX 6600が$329、Radeon RX 6600 XTが$379とされていたのに対し、Radeon RX 7600は実に$269である。それでいてスペックは大幅に強化されている(Photo02)。ただしメモリは8GBということもあり、基本は1080p向けとなっており、それ以上の解像度は推奨しない(不可能ではない)、としている(Photo03)。

  • Photo01: RNDA 2世代の場合はRadeon RX 6600 XTがここに位置付けられていた(参考記事はこちら)。

  • Photo02: 流石にTBDは132Wから165Wに増えた(Radeon RX 6600 XTは160Wだから、こちらと比較しても微増)だが、後のスペックは全て上回っているのが判る。

  • Photo03: 右の価格帯は、現時点でのAMDの製品ラインナップでのものとなる。

製品の位置付けとしては、GeForce GTX 1060(Photo04)やGeForce RTX 2060(Photo05)の置き換えに最適というものだが、Radeon RX 6600(Photo06)はもとより8GB版のGeForce RTX 3060(Photo07)や12GB版のGeForce RTX 3060(Photo08)と比較しても高速としている。またeGamesなどで利用される、比較的負荷の低いFPS系のフレームレートはこちら(Photo09)で、十分に楽しめるとしている。

  • Photo04: そもそもGeForce GTX 1060で1080p Max Settingというのが無茶な気はするのだが。

  • Photo05: Photo04と比べると向上率は大分少なくなっているが、それでもそれなりに性能が向上しているのが判る。

  • Photo06: 流石に性能向上率は大分穏やかに。

  • Photo07: Photo06と比較すると、Radeon RX 6600がGeForce RTX 3060よりも高速に思えてしまうのが不思議。実際にはGeForce RTX 3060の方がやや高速である。

  • Photo08: DXRTを有効にするとやはりまだRDNA系列はGeForceには及ばないのは、Radeon RX 7900シリーズでも確認されていることであり、それが多少足を引っ張っているのは致し方なしではある。

  • Photo09: Dota 2だと解像度を変えてもフレームレートが変わらないあたり、CPUネックな気がする。ちなみにRyzen 5 7600XにDDR5-5200 32GB Memoryの構成だそうだ。

これとは別に、Encodeなどでも高速(Photo10)とか、Stable Diffusionが36%高速になった(Photo11)といった話も示されたが、EncodeはともかくStable Diffusionを使うなら現時点ではGeForce系列を使うべきだとは思う。

  • Photo10: こうした用途にRadeon RX 6600/GeForce RTX 3060を使うのか? というのがまず疑問ではあるが。

  • Photo11: これは恐らくだがStable Diffusion WebUI DirectML版を利用しての結果と思われる。

ちなみに冒頭でも触れた様に、Radeon RX 7600は要するに今年1月のCESで発表されたRadeon RX 7600M XTのデスクトップ版という位置づけである。なのでNAVI 31とは異なりGCDとMCDの機能が一つのダイに収まったMonolithic構造。製造プロセスはTSMCのN6である。出荷開始は5月25日で、複数のAIBメーカーから製品がリリースされることとなっている(Photo12)。

  • Photo12: 普通だと各メーカーのカードの紹介などがありそうなものだが、現時点でこれが出ていないあたりは相当綱渡りスケジュールになっているものと思われる。そもそもレビュー用にReferenceが出てくるあたりが、かなりスケジュールがタイトだったことを伺わせる。

余談ながら、今年のCOMPUTEX TAIPEI、AMDは「大きなイベントは一切用意していない」(広報談)ということで、AIBメーカーのブースなどにはこれが展示されるかもしれないが、それ以上の情報はなさそうだ。直近で言えば、米国時間の6月13日にオンラインイベントが開催されるが、こちらも名前の通りデータセンターやAI向けということで、コンシューマ向けにはあまり関係ない話である。

評価機材

さてRadeon RX 7600、今回届いたのはAIBメーカーのものではなく、AMD提供のReference Modelである。パッケージそのものは比較的コンパクト(Photo13)。全体的にモノトーンというかモノクロっぽいところにワンポイントで赤が入っているのが余計に目立つ格好だ。型番から判る通りメインストリーム向けで決して高価な製品帯向けでは無い筈だが、Reference Modelという事もあってかパッケージの構造はそれなりに豪華である(Photo14)。

  • Photo13: パッケージ外形寸法は260mm×173mm×65mm、重量1091.5g(いずれも実測値)。

  • Photo14: この構造、AIBメーカーから登場するときには簡略化されるだろうなぁ。

カードそのものはちょっと寸詰まり感はあるものの、手頃なサイズである(Photo15)。ちょっと珍しいのはファンの外周がリング状になっていることだろうか?(Photo16)。ファンそのものの厚みは7mm程度である。裏面はこのグレードのカードとしては珍しくフルカバード構成となっている(Photo17)。

  • Photo15: ファンは直径80mm。寸法は203mm×103mm×38mm、重量754.0g(いずれも実測値)。

  • Photo16: 一種のダクテッドファンではあるが、ここまで厚みが無いとそういう効果を期待できるのかは謎。

  • Photo17: カバーはカードエッジ端から4mmほどはみ出す格好になっている。

このアングル(Photo18)で見ると、全体としてのコンパクトさが良く判る。上面のヒートシンクには、パッケージと同じようにワンポイントで赤のストライプが入っているのが判る(Photo19)。補助電源は8pin×1(Photo20)。ほぼ基板全面をヒートシンクで覆っている格好だ(Photo21)。

  • Photo18: 細かくエッジを斜めに落としたり、とコストの掛かる構成になっており、結構見た目は格好良い。このReference Model、一般に発売されるといいのだが。

  • Photo19: 角を細かく落としているのもセンスが良い感じである。全体の流れとしては、Radeon RX 7900 XTX/XTに近い。

  • Photo20: 基板そのものはこの補助電源コネクタギリギリのところまで来ている模様。

  • Photo21: 完全に向こうが透ける訳では無い。斜めの影は、ヒートパイプの配管である。

出力はDisplayPort×3+HDMI×1という構成(Photo22)。このDisplayPortがRadeon RX 7900 XTX/XT同様にDisplayPort 2.1である。後端は綺麗に面取りされている(Photo23)。

  • Photo22: カードの高さはカードエッジ端から8mmほどはみ出しているが、この程度なら対応できるケースは多いと思う。

  • Photo23: この寸法と重要ならカード保持用リテンションを使う必要もないから、このスッキリさも納得。角を落としてあるので、ケース内の配線に引っかかり難そうなのも好感が持てる。

表1にテスト環境を示す。今回はスライドにもあったRadeon RX 6600とGeForce RTX 3060 8GB版を対抗馬として用意した。ちなみにRadeon RX 6600の方は筆者の私物、GeForce RTX 3060の方は以前レビューしたZotacの製品である。

■表1 テスト環境
CPU Ryzen 7 7700X
Motherboard ASUS TUF GAMING X670E-PLUS
BIOS BIOS 1601
Memory Corsair VENGEANCE CMK32GX5M2D6000Z36×2 (DDR5 EXPO-6000 CL36 16GB×2)
Video ZOTAC Gaming GeForce RTX 3060 TwinEdge OC 12GB PowerColor Hellhound Radeon RX 6600 AMD Radeon RX 7600 Reference
Driver GeForce Driver 531.79 DCH WHQL Adrenaline Edition 23.4.3 WHQL Adrenaline Edition 23.10.01 May 15 2023
Storage Seagate FireCuda 520 512GB(M.2/PCIe 4.0 x4) (Boot)
WD WD20EARS 2TB(SATA 3.0)(Data)
OS Windows 11 Pro 日本語版 22H2 Build 22621.1702

ちなみに今回は1080pがメインということで、解像度は1600×900pixel(1.5K)/1920×1080pixel(2K)/2560×1440pixel(2.5K)の3つに絞った。ただAMDは1080pでMax Settingが可能ということで、各ゲームの描画設定はかなり高いものにしている。ただしRay Tracingはやる前から駄目だろうということが見えている(そもそもGeForce RTX 3060ですら、Ray Tracingを使うとかなり性能が下がる)ので、可能な限り無効化している(無効化できない一部のゲームを除く)。DLSS/FSRなどの超解像度に関しては無効化した状態と、有効にした状態の両方を測定した。ちなみに設定は品質優先としている。

なお、グラフ中のビデオカードの表記は

RTX 3060 ZOTAC Gaming GeForce RTX 3060 TwinEdge OC 12GB
RX 6600 PowerColor Hellhound Radeon RX 6600
RX 7600 AMD Radeon RX 7600 Reference

とした。

◆3DMark v2.25.8098(グラフ1~3)

3DMark v2.25.8098
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/3dmark

  • グラフ1

  • グラフ2

  • グラフ3

おなじみ3DMarkであるが、今回はメインターゲットが2Kという事もあり、4K解像度で実施されるWildLife Extreme/FireStrike Ultra/TimeSpy Extremeについてはテストを省いた。とはいえ、2.5Kのテスト(WildLife/TimeSpy/PortRoyal/SpeedWay)が多く含まれているので、それなりに負荷は掛かっている。

さてOverall(グラフ1)を見ると、ほぼ全て(SpeedWay以外)でRadeon RX 7600が明らかに高い性能を発揮している。意外だったのはRay Tracingを使うPortRoyalでGeForce RTX 3060を上回っている事。Radeon RX 6600が概ね「GeForce RTX 3060にちょっと及ばない」程度の性能なので、ここから大きく性能を伸ばした感がある。

これはGraphics Test(グラフ2)からも明白である。今回はCPUが共通だから、性能差はほぼ全てGPUに起因することになる。実際傾向そのものはグラフ1と2で全く一緒である。

そしてFireStrikeのGraphics Testの結果はそのままCombined Test(グラフ3)に反映される訳で、当然こうした結果になる。少なくとも今回の3製品の中では、確かに高い性能を発揮できていることが確認できた。