2023年のいま、仮面ライダー、ウルトラマン、スーパー戦隊、ゴジラ、ガメラといった「特撮」ジャンルの作品群が子どもから大人まで、幅広い年代に人気である。

  • 朝日ソノラマ『宇宙船』VOL.14(著者私物)

テレビでは『王様戦隊キングオージャー』『仮面ライダーギーツ』が好評放送中で、夏からはウルトラマン新シリーズ『ウルトラマンブレーザー』が放送を開始する。そして映画では仮面ライダー誕生50年を記念した庵野秀明監督の『シン・仮面ライダー』が話題となり、秋には山崎貴監督による最新『ゴジラ』が公開予定である。また、特撮怪獣映画の雄『ガメラ』が全6話のアニメ作品『GAMERA -Rebirth-(ガメラ リバース)』となってネット配信されることも発表されている。

これらの作品には、主な視聴ターゲットである子どもたちを喜ばせるための「ハイクオリティな玩具商品」が同時に企画される場合が多いが、それ以外にも「大人も楽しめる本格仕様の高級玩具」や、高画質の「映像ソフト」、劇中音楽を網羅した「サウンドトラックCD」、作品の成立過程やキャラクター創造の経緯などを表した「研究書籍・ムック」などがリリースされ、あらゆる世代のファンからの強い「研究心・探求心」に応える体制が整っている。現在は、特撮ファンにとって非常に「満たされた」時代の真っただ中にあると言うことができるだろう。

新作・旧作を問わず、このように特撮の「関連玩具」「音楽商品」「映像ソフト」「研究書籍」が企画・発売され、ファンを喜ばせる環境は一朝一夕に出来上がったものではない。1970年代後半から1980年代初めまでの「黎明期」を経て、往年の名作から現役のテレビ作品まで、いろいろな特撮作品の魅力を高め、多くのファンが語り合う「特撮文化」が次の段階へ進んだと思わせる時期があった。

当時を知るファンの環境や体験によって微妙な差異はあれど、筆者はそれを「1983年春」だと認識している。今から40年前となる1983年4月30日は、全国特撮ファンから愛読されていた朝日ソノラマの雑誌『宇宙船』VOL.14(春号)が発売された日。1980年の創刊以来、特撮ファン・SFファンにとっての貴重な情報源となり、同時に「古今東西の特撮作品をいかに楽しむか」の指南書でもあった本誌が、さらなる高みを目指して「飛躍」を図った号である。誌面の随所に、特撮ファンの知的好奇心を刺激するビジュアルや言葉が確認でき、40年後の現在では当時の「熱気」を知る貴重な記録となりえている。

1980年1月に創刊した『宇宙船』は、イラストレーター・開田裕治氏がイマジネーションを尽くして描いたSFビジュアルが毎号の表紙を飾っていた(一部例外あり)のだが、この号より表紙モデルとして、『大戦隊ゴーグルファイブ』(1982年)でゴーグルピンク/桃園ミキを演じた大川めぐみを抜擢。この号で大川は、開田氏デザイン、MONSTERS代表・若狭新一氏が製作したSFマインドに満ちたコスチュームを身に着け、魅力的なポーズを決めている。大川はVOL.17まで『宇宙船』表紙モデルを務めており、「美女とSFアートの融合」というすばらしい表紙コンセプトはその後も女優を交代して継続された。

  • 『宇宙船別冊 SUPER GALSコレクション』(著者私物)

『宇宙船』VOL.7で実験的に行われた「特撮ヒロイン特集」が読者の人気を集め、中でも『電子戦隊デンジマン』(1980年)のデンジピンク/桃井あきら(演:小泉あきら)に熱い視線がそそがれた。1983年4月には特撮映画、テレビ作品に出演したヒロインにスポットを当てた『宇宙船別冊SUPER GALSコレクション』が発売され、それまでは青年ファンたちの「ひそかな憧れ」というべき「特撮ヒロイン」が、一気にメジャーなフィールドへ現れたという印象があった。

大川めぐみや『科学戦隊ダイナマン』(1983年)ダイナピンク/立花レイ(演:萩原佐代子)、『宇宙刑事シャリバン』(1983年)の女宇宙刑事リリィ(演:降矢由美子)たちがアイドル的人気を博し、やがて80年代最強ヒロインのひとりとして今もなお伝説的に語り継がれる『宇宙刑事シャイダー』(1984年)の女宇宙刑事アニー(演:森永奈緒美)の登場で、特撮ヒロインブームは一層の盛り上がりを見せていく。『SUPER GALSコレクション』では、『ゴーグルファイブ』を終え『激闘!カンフーチェン』に出演中だった大川めぐみの単独インタビュー+撮りおろしグラビアページが設けられ、当時の大川の人気ぶりがうかがえる。