今回は世界配信されているが、「日本のお客さんが笑えるということをファーストに作っています」と意識。それでも、「バラエティのリアクション芸やドッキリって、言語を超えて伝わるものがあるのではないかという気がするんです。有吉さんも『ジャスティン・ビーバーに見てほしい』と言ってましたが(笑)、アイデアの断片とかで“これは面白い発想だ”というものを、海外の誰かが見つけてもらえたらうれしいですね」と期待を語る。
たけし軍団に始まり、『ビートたけしのお笑いウルトラクイズ』で確立された、いわゆる“団体芸”の笑いがさく裂する『名アシスト有吉』。これは、日本のバラエティが作り上げてきた1つの文化とも言える。
「みんなで“熱湯騎馬戦”をやるにしても、その現場にいる人たちが僕ら制作を含めて、どういうルールでやって、何を面白くしなきゃいけないかというのとを共有して、同じ方向を向いていないと実は難しくて、海外ではそういう土壌がなかなかないのではないかと思います」
この“共有”ができるのは、『有吉の壁』のスタッフが入り、芸人にも常連メンバーが多く参加しているからこそ。レギュラーの収録で培ってきた関係性が生きており、「こんなくだらないことを一生懸命考えるというのは、日本のバラエティの財産だと思います」と力説した。
■熱量を後押しした地上波以上の製作費
昨年夏頃から順次収録を進めてきたが、1本目に撮ったのは那須川天心MCの『天心一武道会』。演者やスタッフから、「Netflixで日本のお笑いバラエティをやる」ということへの熱量や本気度が感じられたという。
「(さらば青春の光)の森田(哲矢)さんが甲冑を着てバットを割ろうとしたら脚部が飛んでいったりとか、(バイきんぐの)小峠(英二)さんがフラッシュコットンを頭に載せてくれたりとか、見たことのない画がいっぱいあったんです。(オードリーの)春日(俊彰)さんが入場シーンで投げたタンスがバラバラになるんですけど、あんなにきれいにバラけるタンスはないから、制作スタッフが一番面白くバラけるように何回も何回も試して作って、でも5秒で終わるシーンなんですよ。そういうところから、“Netflixでここまでゴリゴリの日本のお笑いバラエティを自分たちが最初にやるんだ”、“世界の映画やドキュメンタリーがある中で、アウェーに乗り込んでいくんだ”という気概が、演者さんにもスタッフにもあったと思います。『(有吉の)壁』もやっている横澤Pがチーム全体を引っ張っていってくれましたし。終わった後、『めちゃくちゃ大変でしたけど、関われて良かったです』と言ってくれるスタッフが多くて、本当に良かったなと思います。頭に必ず『めちゃくちゃ大変でしたけど』が付くんですけど(笑)」
その熱量は、地上波に比べて多くの製作費をかけているからこそ実現した様々な仕掛けも後押しした。
「格闘技のリングを作ったり、1個1個の小道具にお金をかけさせてもらえたりしているので、この規模は地上波のゴールデンでもなかなか難しいかもしれないです。フワちゃんの回で春日さんが入ってる水槽は、最初は汐留(日テレ)のスタジオに置こうと思ったんですけど、とんでもない重量になるということで、設置可能な場所を探して中継を結びましたから。吹き替えのためのアニメも作ってますし、そういう部分も感じて、演者さんたちは“(エンジンが)かかった”のではないかと思います」