これまで『ZIP!』『クイズ!あなたは小学5年生より賢いの?』『ゼロイチ』『最強の頭脳 日本一決定戦! 頭脳王』などを担当し、現在は『カズレーザーと学ぶ』でディレクターを務める南斉D。情報番組や知的バラエティを作る機会が多かったが、もともとお笑い系番組を志望していたのもあって、「企画書はめちゃくちゃ出していました」という。
そうした中、入社7年目で初めて通った自分の企画が、『イワイ・オンライン』(22年7月22日放送、Huluで配信中)。全編PC画面だけで展開され、ハライチがMCを務めるトーク番組の収録を翌日に控えた岩井勇気の生態をのぞき見するという番組だ。岩井が実際にクリックして画面を動かしながら演技するという撮影スタイルによって、リアリティのある画作りに成功し、こちらも業界内で反響があった。
ニコニコ動画で加藤純一氏のゲーム実況にハマり、“ネットの笑い”にも親しんだという中高生時代。その後、大学時代は授業をサボって1人で映画を見に行っていたが、「ネットで情報を入れるようになって、僕らの世代からみんなが見てる流行みたいなのがなくなってきて、僕も例に漏れず古い名作や、台湾ニューシネマ、アメリカンニューシネマといったジャンルを好んで見ていました」という。
そうした自分の趣味を企画に還元。『マルコヴィッチの穴』→『カワシマの穴』は、まさにその例だが、「内容が似ちゃうと嫌なんで、見返さずにタイトルだけ引用しました」とのことだ。
■面白いと思ったことを一気に発信できる――テレビの魅力
テレビ離れと言われる世代だが、「『モヤモヤさまぁ~ず2』とか『アリケン』とか『タモリ倶楽部』が大好きでよく見ていて、芸人さんが大好きなんです。ずるい話かもしれないですが、会社員でありながらクリエイターとして活動でき、自分が面白いと思ったことをものすごい放送網で一気に発信できるというのがすごく魅力に感じて、テレビ局に入りたいと思いました」と志望。
先ほど名前の挙がったテレ東の大森氏や、『ここにタイトルを入力』のフジテレビ・原田和実氏、『イワクラと吉住の番組』のテレビ朝日・小山テリハ氏など、各局で若い制作者の名前がどんどん出て活躍していることには、「もちろん刺激になります」と語る。
今後については、「自分ならではの着眼点で番組を作っていきたいというのはもちろんですが、それが一部の人たちだけ面白いと盛り上がるんじゃなくて、どんどん多くの人に伝えていけるようになりたいと思うので、エッジの効いた企画性と、それがきちんと理解してもらえるという相反することを、バランスを持って両立させる番組作りをしたいと思います」という南斉氏。
『カワシマの穴』においても、スタジオで本人がツッコミを入れ、最後にニセ川島を演じた人たちのオフショットを答え合わせ的に入れたのは、「新しさを求めるだけではなく、尖った番組を好まない人たちも、見たら面白いと思ってもらえるようにしたい」という意図があった。
ちなみに、「第7回NHK新人お笑い大賞」(2020年)優勝、「第43回ABCお笑いグランプリ」(2022年)準優勝のお笑いコンビ・令和ロマンの松井ケムリは中高の同級生。「お互いに頑張って、いつか一緒に面白いことができたらいいね、という話をしています」と夢を抱いている。
●南斉岬
1994年生まれ、東京都出身。早稲田大学卒業後、16年に日本テレビ放送網入社。『ZIP!』を担当後、編成部に異動。制作に戻ると、『クイズ!あなたは小学5年生より賢いの?』『ゼロイチ』『最強の頭脳 日本一決定戦! 頭脳王』などを担当し、22年に『イワイ・オンライン』『カワシマの穴』を企画・演出。現在は『カズレーザーと学ぶ』『女芸人No.1決定戦 THE W』などでディレクターを務める。