俳優の竜星涼演じる三星大陽が、「“資産は人なり”。資産を手放す投資家はいない!」の理念のもと、様々な事情を抱えた人々と出会い、「スタートアップ(起業)しよう!」と声をかけ、生きる希望を取り戻させていく人間再生ドラマ『スタンドUPスタート』(フジテレビ系、毎週水曜22:00~)。企画を担当するのは、人気バラエティ番組『全力!脱力タイムズ』(同23:00~)なども手がけるフジテレビの狩野雄太氏だ。
このテレビ不況の時代、「コア層を狙って固定ファンが多いキャストを入れれば見逃し配信の再生数が回るといった技術的なことはありますが、『全力!脱力タイムズ』は解説員が高齢者でも回っている。つまり、人気コンテンツの要因はコアキャストのキャスティングだけではないのではないか」と見ている狩野氏。『スタンドUPスタート』でこだわっていること、竜星涼の魅力、そしてテレビマンの苦悩など、赤裸々に語ってもらった――。
■『ちむどんどん』要素を入れてみようかなと(笑)
このドラマの企画は、「ちょうど1年前、政府からも新しい働き方や起業などの話が出ていました。“起業”をテーマにしたドラマはそのトレンドに入ると考えましたし、原作を読むとドラマとしての多様性、人間ドラマもしっかり描かれている。また水10枠は“ニューヒーロー”というくくりがあるため、この三星大陽というキャラクターは新しい時代の働く世代に刺さるのではないか」(狩野氏、以下同)という考えから決定。
昨今は、人件費が“コスト”として計算される世の中だが、「人は資産」という大陽の言葉は、そこへの強烈なアンチテーゼとなっている。
「僕自身、原作を読んでハッとしたのは、人はダメの烙印を押されても、見方や切り口、ちょっとしたタイミングや誰かとの出会いで人生が180度大きく変わるということです。要らない人間なんていない。皆、何かしら持っている。今、この国は失敗した人をつるし上げて容赦なくその人の人生を破壊する側面もある。僕は、原作が言う通り何度でも立ち上がれる、そういう国や社会であってほしいと共感しました」
そんな今作の企画が立ち上がった頃、朝ドラ『ちむどんどん』(NHK)がスタート。キャスティングを考えていた狩野氏は、そこでニーニーを演じている竜星涼に目をつけ、「目がキラキラ、ワクワクしているのを見て、大陽役にピッタリだと思ったんです」とオファーした。
原作はコミック。それを生身の人間がやると浮いてしまうこともあるが、「コミックだと成立するようなセリフ、例えば『四十、五十は洟垂れ小僧』など読み物だから成立しているようなセリフを、実写で通用するように演技で表現をしてくれています。その卓越した演技力もさることながら、竜星さんのスタイルが良すぎてどこか浮世離れしていながらも、ビシっとスーツも着こなしていて、『まさに新しい時代のニューヒ―ローだ!』と、スタッフ一同“ちむどんどん”しています」と、ワクワクしながら制作に臨んでいるそうだ。
また、「第1話に『ニーニー容赦なさすぎ』というセリフがありますが、あれは僕が毎日『ちむどんどん』を見ていたので、ちょっと間は空きましたが、『ちむどんどん』要素を入れてみようかなと(笑)。ちょうど林田さん(小手伸也)が泡盛をオーダーしたので、理屈も立っているかなと(笑)」と、“遊び”も取り入れた。
フジテレビは、昔から局をまたいで何かをすることが多く、他局のものだからということは“あまり気にしない”おおらかな社風で、それよりも「面白いほうを取りたいんです」という局。そんな意味でも同ドラマは、フジテレビ精神が受け継がれている。