GDDR(Photo03)

  • Photo03: 家猫化して1年経過後。この頃はまだ兄ちゃんとそう仲は悪くなかった。

2021年末というか2022年頭の見通しでは、GDDR6に関しては16Gbpsあたりで頭打ちになるだろうとされており、それもあってMicronとNVIDIAは共同でGDDR6Xを開発した訳であるが、1年後の2023年頭はどうなっているか? というと、SamsungはGDDR6 24Gbps品を2022年7月に発表しており、2023年1月現在で言えばまだ24Gbps品はSampleなものの18Gbps品はMass Productionとなっている。SK Hynixは20Gbps品をラインナップ。一応扱いとしてはCS(Customer Sample)になっているが、Radeon RX 7900 XTXには20Gbps品が搭載されているあたり、事実上量産出荷が始まったと考えて間違いない。MicronはGDDR6Xを提供している手前もあって、GDDR6に関しては16Gbps止まりであるが、GDDR6Xは24Gbpsまでラインナップをしている。もっともGeForce RTX 4090でも21Gbps止まりであるが、もし今後GeForce RTX 4090 TiとかSuperとかが出るとすれば、24Gbpsまで速度を上げそうである。

さて現状でどこまで行くか? であるが、Samsungは現在の12(1a)nmに続き11nm(1b)nmを2023年に予定しており、GDDR6+でこれを採用するとしている(Photo04)。このGDDR6+では27Gbpsまで行ける、というのが同社の主張だ(Photo05)。で、その先の候補としてIEDMではPAM3を提案している(Photo06)。PAM3なら信号速度が24GT/secのままでも36Gbpsまで行けるから効率が良いし、GDDR6XのPAM4よりもData Eyeを取りやすいのは間違いない。もっとも2022年6月に開催されたIEEE Symposium on VLSI Technology and Circuitsで同社は"A 40-Gb/s/pin Low-Voltage POD Single-Ended PAM-4 Transceiver with Timing Calibrated Reset-less Slicer and Bidirectional T-Coil for GDDR7 Application"という論文を出しており、こちらはタイトルの通りPAM-4である。PAM-4なら転送速度は信号速度の2倍のレートになるから、36Gbpsを実現するのに18GT/secの信号で間に合う。またPAM-4だと比較的簡単(MicronのGDDR6Xがそうだが、DRAMセル側は2つのセルから1つのシンボルを生成できる)なのに対し、PAM-3だと2回分の転送されたシンボルから3bitを生成するエンコーダ/デコーダ回路をDRAM側に設ける必要があるので、これがコストアップに繋がりかねない。現状のJEDECのWorking Groupでは、PAMを利用した多値化を採用するのはほぼ決まりらしいが、PAM-3なのかPAM-4なのかそれともそれ以外なのか、に関してはまだ討議中だそうで、最終決定には至っていない。ただSamsungの見通しでは、2023年中にこのあたりの方針は決まりそうである(Photo07)。

  • Photo04: これはIEDM 2022のShort Course 2の"Next-Generation DRAM Solution for HPC and AI"というセッションのスライド。講演者はSamsungのDRAM TeamのVP of TechnologyであるKyomin Sohn博士。

  • Photo05: そもそもこのGDDR6+というのが何か? というのが今一つ判らないままなのは昨年と同じ。

  • Photo06: PAM-4の欠点は、このData EyeのHeightを確保するのが結構大変という点である。同じ電位差だったら、Eyeが2つと3つ、どちらが楽かと言えば2つである。

  • Photo07: これはVLSI SymposiumにおけるSamsungの論文で示された予定図。GDDR7とLPDDR6は大体同時期に標準化が行われると見ているようだ。