AMD GPU(Photo04)
AMDも無事12月にRadeon RX 7900 XT/XTXを発表。既に出荷も開始されており、早速入手した人も少なくないだろう。ちょっとギリギリではあったが、何とか2022年中にRDNA 3ベース製品の出荷が無事スタートした事になる。
さて問題はこの次である。Radeon RX 7900 XT/XTXはどちらもNavi 31ベースの製品である。当然この後の製品としてNavi 32/33が予定されていると思われる。以下は「根拠のない」推定であるが
Chiplet数 | Shader Engine | CU数 | Memory Bus | Infinity Cache | ||
---|---|---|---|---|---|---|
Radeon RX 7900 XTX | Navi31 | 7 | 6 | 96 | 384bit | 96MB |
Radeon RX 7900 XT | Navi31 | 6 | 5(6-1) | 80 | 320bit | 80MB |
Radeon RX 7800 XT? | Navi32 | 5 | 4 | 64 | 256bit | 64MB |
Radeon RX 7700 XT? | Navi32 | 4 | 3(4-1) | 48 | 192bit | 48MB |
Radeon RX 7600 XT? | Navi33 | 3 | 2 | 32 | 128bit | 32MB |
といった感じになるのではないかと思われる。GPU Dieとしては、Navi 32が最大4 Shader Engine(64CU)、Navi 33が最大2 Shader Engine(32CU)という計算になる。もっともRDNA 3ではCUあたりの演算能力がRDNA 2比で2倍になっているから、RDNA 2比で言えばそれぞれ128CU、64CU相当になる訳で、Radeon RX 7800はフル構成ならRadeon RX 6950 XTをブッチギリ。Radeon RX 7700ですらRadeon RX 6950 XTを上回る計算である。Radeon RX 7600はRadeon RX 6800と同等以上になる計算で、ラインナップとしては割と順当であろう。勿論これはCUの演算性能だけの比較で、実際はメモリ帯域がボトルネックになるのでここまで性能のLiftupは無いと思うが。ちなみにRadeon RX 6500相当の製品まで用意するかどうかは不明だが、仮にあるとすればNavi 33のままでCU数を減らす格好になるかと思われる。
この辺までは全てGPU DieがTSMC N5、Infinity Cache/GDDR6 I/F DieがTSMC N6のままであろう。というかInfinity Cache/GDDR6 I/F DieはNavi 31~33まで共通で、GPU Dieのみが変わる格好だ。図1~3がそれぞれのDie Layoutの想定図である。時期的に言うのであれば、Navi 32ベースのRadeon RX 7700/7800(XTが付くかどうかは不明)が今年のCOMPUTEX頃、Navi 33ベースのRadeon RX 7600(同じく)は第3四半期末といったあたりではないかと思う。
さて問題はその次である。Photo05は、やはり2022年6月のFinancial Analyst Dayで発表されたコンシューマ向けのロードマップである。時期的に言えば2023年末に次のRDNA 4が出るかどうか? というあたりであるが、もし2023年末までにリリースするのであればプロセスはTSMCのN4ないしN4Pになるのは明白で、N3Eは絶対に間に合わない。ただ、そこまで急いで次のRDNA 4を出す必要があるか? というとこれもちょっと疑問なところで、そもそもRadeon RX 6000シリーズが2020年に出て、7000シリーズが2022年ということであれば、8000シリーズは2024年でも不思議ではない。恐らく2023年末には多少動作周波数を上げ、可能ならメモリの速度もあげたRefresh版が投入されて終わりという辺りではないかと思う。技術的な可能性で言えば、例えば今は別チップになっているInfinity Cacheに3D V-Cacheの技術を適用してInfinity Cacheの容量を増やせば、特に4K以上の解像度における性能がもっと上がる事が見えているので、そういう案もあり得るとは思うのだが、コスト的な問題を考えると実現可能性は薄そうである。
一方データセンター向けであるが、2021年末に発表されたAMD Instinct MI200シリーズは既に出荷を開始。これを搭載したORNL(米オークリッジ国立研究所)のFrontierは2022年6月のTOP500で堂々第一位となり、2022年11月も引き続きその座を維持している。これに続く製品として、こちらはAMD Instinct MI300が投入される事が既に明らかになっている(Photo06)。またこれは詳細も多少公開されており(Photo07)
- 5nmプロセスを採用
- 3D Chiplet構成
- 第4世代Infinity Architectureを採用
- Unified Memory Architectureを採用
- 新しいMath Formatをサポート
といった内容が明らかになっている。5nmはまぁいいとして、3D Chipletは要するにInfinity Cacheは別ダイとなり、これを3D Stackingする事と思われる。恐らくInfinity CacheのダイはN6あたりのまま据え置きという、RDNA 3と同じアーキテクチャで、ただし容量を稼ぐために3D Stackingが採用されたものとみられる。またCDNA 3同士/CDNA 3とホストの接続には新しいInfinity Fabric(Gen4)が採用されるとある。実はこれは次のUnified Memory Access(Photo08)に絡んでくる。要するにこれはAMD Instinctの側に搭載したHBMメモリを、ホストからも透過的にアクセスできるというものだ。実はこれ、CXLのType 2 Accessそのものである。CXLの説明は以前こちらで行っており、Genoaは既にCXL 1.1のType 2 Accessをサポートしている事を明言しており、なのでこのNext Generation Infinity Architectureでは、CXL 1.1との互換性を持つ形になると筆者は予想している。最後の新しいMath FormatはおそらくFP8だろうと想像される。
このAMD Instinct MI300は、AMDが2023年にLLNL(米ローレンスリバモア国立研究所)に納入するEl Capitanに搭載されるのがほぼ確定している。こちらは2EFlopsを実現するシステムで、EPYC 9004+Instinct MI300という構成がベースになると考えられる。なので今年の比較的早い時期に量産が始まることになるだろう。CDNA 4にあたる製品はまだ先、恐らく2025年度までは出てこないのではないかと思われる。