私がほしいものは、あなたにはぜったい出せない

CHIPS法で新たな環境に進み始めた一方で、米国はビッグテック問題については意味のある規制を1つも通過させることができませんでした。Pew Research Centerが春に公開した調査結果によると、ビッグテック規制の強化が必要と答えた有権者が1年で56%から44%に下落し、2018年以降で最低水準になっています。物価高が深刻になるほどにビッグテック規制に対する人々の関心が薄れ、1年前と違って規制強化が票につながらなくなり、中間選挙を前に規制強化の声が一気にトーンダウンしてしまいました。

  • 景気が悪化する中、「規制によってGoogle検索やGoogleマップのようなサービスが有料化される」といったテック大手の支援を受けた反対キャンペーンが効果を発揮

しかし、欧州では3月に「デジタル市場法(DMA)」、4月に「デジタルサービス法(DSA)」について欧州連合(EU)理事会と欧州議会が合意、7月に欧州議会で可決されました。10月には欧州議会でモバイル機器やカメラなどの共通充電規格としてUSB-Cの採用を義務付ける法案が可決され、その後にAppleのエグゼクティブが規制に従ってiPhoneにUSB-Cを採用する考えを示しました。検索、アドテク、アプリストア、クラウドサービスなど、幅広い分野で欧州がビッグテックの動向に強い影響を及ぼし始めています。米国ではビッグテックのロビー活動が効果を発揮しているものの、グローバル企業として米国のビッグテックが欧州の規制に対応せざるを得ないという奇妙な状況になっています。

その米国でも2023年に「セクション230」に関する審理が最高裁判所で始まります。セクション230は、投稿されたコンテンツに対しソーシャルメディア企業の法的責任を免除する法律で、Twitter改革のイーロン・マスク劇場が大きな注目を集めていることからプラットフォーマーの問題の議論が広がり、それが再びビッグテック規制への関心につながるかもしれません。

以上、駆け足で2022年のテック産業を振り返りました。2023年も厳しい年になりそうです。が、後編は「ドットコム・バブル崩壊」の2001年ではなく、同年に初代iPodが登場し、GoogleやAmazonといったベンチャー企業がバブル崩壊を生き抜いた年だったという視点から2023年を展望します。お楽しみに!