漫画家の久保ミツロウ、コラムニストの能町みね子、音楽クリエイターのヒャダインによるフジテレビ『久保みねヒャダ』シリーズが、12月で10周年を迎えた。3人が独自視点のトークと世の中への鋭いツッコミを展開しながら、音楽や妄想ドラマなどクリエイターならではの感性を発揮する企画が魅力で、2017年9月の地上波レギュラー放送終了後も、有料ライブで継続する人気コンテンツだ。
そこで10周年を記念し、久保みねヒャダの3人と、演出・チーフプロデューサーの木月洋介氏による座談会を実施した。3回シリーズの第2回は、10年間の印象的な出来事をプレイバック。慣れない旅ロケでのハプニングのほか、先見の明があった歌作りやゲスト陣などを振り返ってもらった――。
■珠玉の台湾旅、可食部だらけの熱海旅
――レギュラー放送がスタートしてから、思い出に残る出来事は何でしょうか?
久保:私、函館だな。
ヒャダイン:函館、良かったですよね。
能町:いい思い出ですよ、本当に。
木月:函館はすごいですよね。
久保:函館の山で夜景を最前列で見ようと思ったら、知らない男の人に「(撮影用のライトが)まぶしいんですけど」って怒られて…。
木月:そこからテンションだだ下がりっていう(笑)
能町:名シーンです(笑)
ヒャダイン:ハイライトですよね。
久保:これはsnt(シニタ ※)だよね。
(※)…液晶保護フィルムを貼るときにゴミが入り込む死にたさを基準値・1sntとし、様々な絶望感の単位を数値化することを番組で提唱したもの。
能町:もう5万sntです。
木月:こういう奇跡が起きるからすごいですよね。
――プライベートでもなかなか起きない奇跡が、カメラを回してるときに起こるんですよね。
木月:みなさんそうなんですけど、なんでこんな奇跡が起きるんだろうと思いますよ。毎回。
久保:でも「千葉ヒャダ旅」(※)にはかなわないですよ。「台湾旅」を見て、『久保みねヒャダ』をやっていて初めてちょっと自信が陰りましたから。
(※)…千葉雄大とヒャダインの2人旅シリーズ。1月1日(3:15~)の『久保みねヒャダ明けましてこじらせナイト寿スペシャル』スペシャルでは「沖縄旅」の模様を放送予定。
ヒャダイン:台湾はこれからも超えることはないですし、あれはもう珠玉ですよ。
久保:いい収録って、こうやって気落ちすることもあるのかって。ただ、台湾旅で落ち込んだりはしたけれど、一番滞在期間が短かった3人の「熱海旅」が、すごい良かったなと思うんです。
ヒャダイン:あれこそ良かったですよ。可食部だらけで。
能町:奇跡が起きましたよね。
久保:3人でそれぞれの状況を深く観察して掘っていくっていうことの数珠つなぎがあったような。それが噛み合った感じで、何かを呼び寄せたような気がしましたね。
■旅の思い出を歌で締める「泣けてくる」
能町:旅の終わりに替え歌を作るのは、北海道から青森に渡る旅で自主的にやったんですよね。スタッフに言われたんじゃなくて、勝手に「夏の日の1993」で作ったんですよ。車移動がめっちゃ長かったんですけど、そこで作れたからちょうど良かったんです。
久保:最後に歌で締めるっていうのはいいですよね。
木月:旅の思い出が歌になると、ずっとそれが残りますから。この飛内さん(※)が飛び出してくるところの歌詞がいいんですよ。
(※)…久保と能町の2人旅で行った青森県むつ市・とびない旅館主人の飛内源一郎さん。その感性に、久保がクリエイターとしてのシンパシーを感じ、以降様々な場面で番組に登場している。
(3人歌唱)♪平成26 ジェラシーさ oh 君が夢中 僕には飼えない犬だと思った~
ヒャダイン:めちゃめちゃいい歌詞ですよね。
久保:すごくかわいくて健気でいい犬なんだけど、僕には飼えないって(笑)。泣けてくる。
ヒャダイン:大江千里をすごい通ってきた人って感じですね、このフレージング。
久保:たしかに私は大江千里っ子だったなあ。でも、こうやっていろんなとこでうまくその瞬間を拾えたっていうのが、一応自信にはなってたのかもね。
ヒャダイン:番組でものづくりが積極的になっていくのって、こっからですよね。替え歌が作れるというところで、こじらせソングを作るようになって。妄想ドラマとかも作って。