ジョーカーになれなかったとクロアチア戦に唇を噛んだ三笘は、PKに関してもこう言及している。
「(相手のキーパーは)見ていないです。とにかく思い切り蹴ったんですけど。チームを勝たせたいと思っていたんですけど、迷惑をかけてしまった。PKを蹴った責任を感じています」
しかし、一夜明けた6日に臨んだ、森保ジャパンとしての最後の取材対応で三笘に涙はなかった。PK失敗を含めて、クロアチア戦のすべてを受け入れて前へ進む力へ変えようとしていた。
「キッカーに名乗り出たことは後悔していない。そこに対するメンタル、技術が足りなかった。こういう負け方をした以上は、次の大会で借りを返さないといけない。あのシーンが必ず(脳裏を)よぎるので、その悔しさを持ってプレーしないことがかえって無責任になると思う」
止められたPKを忘れるのではなく、絶対に乗り越えなければいけない十字架としてあえて心に刻み込んだ。その上でジョーカーではなくエースとして、4年後の次回W杯に帰ってくる。
悔しさを分かち合った、年齢が近いチームメイトたち仲間たちもすでに決意を新たにしている。
例えばドイツ、スペイン戦でともにゴールを決めた堂安。眩しく、そして頼れる背中を介してチームをけん引してくれたキャプテンのDF吉田麻也(シャルケ)、フィールドプレーヤーでは最年長の36歳、DF長友佑都(FC東京)の両ベテランから魂のバトンを引き継ぐと明かした。
「2人とも(その前の)先輩方の背中を見て、いまのような存在になったと思う。なので、次は2人を見た僕たち東京オリンピック世代が、背負っていかなければいけない。僕自身、エースになりたいとずっと言ってきましたけど、リーダーにもならなければいけないといまは思っています」
攻撃の中心を託されながら、個人的には不本意な結果に終わったMF鎌田大地は、所属するアイントラハト・フランクフルトとの契約が満了する来夏を見据えてこんな青写真を思い描く。
「日本がもっと強豪国になっていくためには、やはりビッグクラブでプレーする選手が数人は必要だと思う。なので、自分がそういう選手になれるよう頑張っていきたい」
堂安と鎌田に共通する思いは選手個人のレベルを極限まで上げ、代表チームに招集されるたびに新たな力を還元し、代表のレベルをも上げていく相乗効果の連鎖だ。そこへ三笘も加わる。
「代表に求められるのは、もっと攻撃的なサッカーだと選手たちも感じている。そのためには選手個々のレベルをアップさせていくしかない。一人ひとりがもっと脅威になれば、そこから崩していけるのがサッカー。1対1をもっと強くしていかなければいけない」
次回W杯を三笘は29歳になった直後に迎える。ボールを持っただけで、外国人のファンからも歓声が上がるようになった今大会。背中越しに感じた期待の大きさを確実に日本のゴールに、そして勝利に結びつけられるエースになるための挑戦は、すでに幕を開けている。