• ABEMAスポーツエンタメ局長の塚本泰隆氏(左)と、テレビ朝日スポーツ局プロデューサーの長畑洋太氏

テレ朝から人材面・技術面の協力を得る中で、ABEMAがこれまで培ってきたノウハウも積極的に活用していく考えだ。

塚本氏は「昨年から大谷翔平選手のMLBを中継させてもらっていますが、もちろん試合を通して応援するというのがある一方で、大谷選手のホームランシーンを切り出したオンデマンドコンテンツを楽しむ方も多くいらっしゃるんです。今回、ワールドカップ全体を通して楽しんでもらうことを提案する中で、28時(早朝4時)キックオフの試合も多いので、オンデマンドやSNSなどのサービスを掛け合わせることで、ワールドカップに接触してもらえる間口をいかに作るかというのは、ABEMAが培ってきたノウハウが生きると思っています」語り、それはスポーツ中継に限らず、ABEMAが様々なジャンルで得てきた手法に通じるという。

全64試合のうち、NHKや民放の放送がないABEMA独占生中継となるのは23試合。ここは大きな売りとなるが、それと同時に「この23試合は、もし我々の中で何かアクシデントがあれば、日本で見られなくなってしまうという大きな責任があります」(塚本氏)と強く意識している。ここまでの規模の大会を一手に引き受ける事例自体が初めてのため、それに耐えうるサーバーの増強など、万全の配信インフラ体制の準備にも余念がない。

今回のワールドカップについて、視聴数の目標値は具体的に掲げておらず、塚本氏は「本当に良い64試合の中継を届けて、『ABEMAがワールドカップをやって良かった』と思ってもらえることが、最大のミッションです」と使命感を語った。

■次の時代に向けた見せ方のロールモデルを

ワールドカップの本番はこれからだが、今後も機会があれば両者によるタッグで取り組んでいきたい考えを持っており、塚本氏は「世界的なイベントを届けていくということに、もちろんABEMAとしてしっかりと向き合わなければいけないところではありますが、やっぱりテレ朝のみなさんの力は確実にお借りしていかなければできないし、今回長畑さんは、ABEMAの中にもノウハウを残すという思いでやっていただいているので、まずはいろいろ勉強していきたいと思っています。スポーツ中継やライブもの、特に競技時間や開催時間の制限がないコンテンツとインターネット配信の可能性はすごくあると思いますので」と意欲。

長畑氏は「次の機会がまたワールドカップなのかは分からないですが、もうスマホで映像コンテンツを見るということは、みなさんに習慣づいているところがあるので、そこにどうやって見せていくかというノウハウを我々も身に付けないといけない。せっかくこういう関係ができたので、次の時代に向けての見せ方を模索して、1つのロールモデルみたいなものが作れたら、それは最高ですね」と前を見据えた。

さらに、長畑氏は「ABEMAでは、将棋とか麻雀とか、地上波の民放テレビではなかなか扱えないものを競技として捉え、ショーアップしてコンテンツとして成立させていますよね。そういう今後の発掘につなげるようなことを、テレビ朝日もやっていかなければならないと思います」と刺激を受けているようだ。